その11 いや、ほんと、おいしいです こんなのもはやサカナじゃないです
◆◆◆ その11
涼子はそう答えると、中トロを割りばしでつまんで、醤油に少しだけつけて、口へ運ぶ。この作法であっているだろうかと余計なことを考えていたが、涼子の一口目をにこにこしながら見守っている大将に安心して味わうことにした。
「うん、おいしい。」
涼子は思わず、感嘆の声をあげる。実際、こんなおいしいお寿司初めて食べたように感じた。ちゃんとした職人が握るお寿司はこんなにもおいしいことを涼子は実感した。
「そうだろ、そうだろ、うちの寿司は日本一うまいんだよ。」
「ホントホント、大将の鮨はいつ食べてもおいしいよね。」
同じように中トロをほおばっている静奈も口をもぐもぐしながら答えた。涼子は次々と握られる寿司を滑らかに口に運び、おいしいを連発した。
「はい、次は大トロね。」
大将は涼子の目の前につやつやと輝く大トロを置く。
「あ、すみません、いただきます。」
今度は大トロを口に運んだ涼子だったが、その瞬間に驚きの表情を浮かべた。
「んっ、何これ!。」
「うん、やっぱり美味しいでしょう。」
静奈はうれしそうな顔をしている。
「いや、ほんと、おいしいです。こんなのもはやサカナじゃないです。」
涼子は感動のあまり、言葉遣いがおかしくなっていた。
「ははは、大げさだね。まあでも、大将の作る大トロには国産牛肉もかなわないかもねえ。」
「またまた、ほめすぎだよ、静奈ちゃん。」
「じゃあ、次はカンパチにしようかしら。」
静奈はそういうと、大将に自分の分を注文する。
「あの、私、自分でお支払いしますから・・。」
涼子はあわてて財布を取り出した。
「いいよ、いいよ、ここは私が出すから気にしないで。」
「いえ、そういうわけにはいきません。」
「もう、相変わらず真面目なんだから、涼子ちゃんはさ。」
「だって、仲良くなったばっかなのにおごってもらうなんて悪いもの。」




