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04話 決意表明

 テオの治療が終わるのを見届けて、私はアリアさんに言った。

 「私も神官になりたいです!」


 素晴らしい光景を見て瞳を輝かせている様な感じになるよう意識する。

 私は演技が上手いみたいだし、多分大丈夫!


 「ソフィー?」

 テオが不思議そうに私の名を呼ぶ。

 よし。まずはテオの相手だ。

 「テオが怪我をしたのに、私は治すことができなかった。テオの傷、痛そうだったのに……」

 少しだけ辛そうな表情をする。

 「だけどアリアさんは治すことができた」

 アリアさんにも視線を向けて微笑む。

 「それはとてもステキなことだと思うの」

 アリアさんとテオが私の話しを真剣に聞いているのが分かる。


 幼いながらも決意を固めたように――決めろ、私!


 「私も怪我をした人を助けたい。痛くて困っている人がいなくなるように、私も神官になって頑張りたい」


 アリアさんの表情から、心が動いた手応えを感じる。

 このまま駄目押しだ!


 「アリアさん。どうか私に、神官になるための勉強を教えてください。私は、立派な神官になりたいです!」


 アリアさんが感嘆の吐息を洩らした。

 「……素晴らしいわ、ソフィー」

 やった! アリアさんが感動してる。

 「あなたが神官になれるよう応援するわ。もちろん、勉強も教えるから」

 大成功! 私すごい!

 「ジョゼフ様やほかの神官にも、このことを伝えるわ」

 ジョゼフ様? 誰だったかな……?

 「子供たちを育てることが私の役割だから、ソフィーだけを見ていることはできないの。他の人たちにも協力してもらいましょう」

 思い出した。ジョゼフ様はここの教会で一番偉い大神官。

 おじいさんだけど、背筋がしゃんとして、体格もいいせいか老いを感じさせない人だ。


 とにかく、アリアさんのサポートを得られることになった。

 ジョゼフ様や他の神官たちにも期待が出来そうだし順調だ。


 それにしても、こんなに上手く演技できるなんて私すごい!


 満足感に浸っていたら、テオが口を開いた。

 「オレはセンシになる!」

 戦士になる?

 「ユーシャみたいにつよいセンシになるんだ!」

 テオも自分の夢を宣言した。テオらしい夢だな。

 何だか微笑ましい気持ちになったけど、アリアさんの表情が曇る。

 「……それは、魔物と戦うということよね」

 そうか。戦士がやることは魔物退治だから、アリアさんが不安になるのも無理はない。

 「……人々を魔物から守ることも素晴らしい役割だから」

 どうやらアリアさんは自分を納得させようとしているらしい。

 「強くなってちょうだいね、テオ」

 「うん! オレはつよくなる!」

 テオは自信に満ちた笑顔を浮かべる。


 「アリアさんも、ソフィーも、みんなオレがまもるんだ!」


 その姿と言葉によって、私はテオのことを初めて『可愛い』と思った。




 翌日から、私は神官になるための勉強を教えてもらえることになった。


 まずは字の読み書きから。

 本来は5歳から教わるものらしいけど、私の熱意によって早めてもらえた。

 異世界の文字だし難しいかなと心配だったけど、それは杞憂に終わる。


 この世界の文字は日本語だった。


 「まずは平仮名からね」と差し出された紙には、丸っこい独特の書体で平仮名が書かれていた。

 そういえば、ゲームの中でも宿屋の看板にこんな書体で「やどや」と書いてあったっけ。

 この書体の丸っこさは、前世で使っていた一般的な書体とずいぶん違う印象で、ファンタジーな世界に合っていた。

 

 今まで気にしてなかったけど、私たちが会話で使っている言葉も日本語だ。

 ゲームでもキャラクターは日本語で話していたし、ゲームと同じ異世界だから当たり前のことなのかな?


 「これは『あ』と読むの。その次は『い』」

 うん。読める。

 46文字の読み方をあっさりマスターした私にアリアさんは驚いていた。

 「すごいわ!」

 前世の記憶があるからね。


 読むのは簡単だったけど、書くのは中々難しい。

 見本を真似て同じように書こうとするけど歪になってしまう。

 ちょっと落ち込んだけど、アリアさんが励ましてくれた。

 「まだ練習を始めたばかりだもの。仕方ないわ」



 それから数日間、私は頑張った。


 人付き合いも大切だし、好かれていたいから、テオや他の子たちとの遊びに手を抜かなかった。

 もちろん『良い子』であることを忘れないよう振舞って、テオ以外の子たちとも随分話すようになった。


 空いた時間に文字の書き方を練習し、指が痛くなったけど、その甲斐あって5日後には平仮名と片仮名をマスターした。


 「こんなに早くできるようになるなんて! それに、大人が書いたみたいに上手な字よ!」


 アリアさんの驚いた顔を見て、私はとても嬉しかった。



 漢字については少しずつ覚えることになった。

 「漢字はこんな風なのよ」と本のページを見せてもらったけど、漢字も独特の書体だった。

 読むことはできるけど、上手く書けるようになるまで時間がかかりそう……



 孤児院内に聖典があるのを見つけて、せっかくだから読むことにした。

 全体的にやたらと回りくどい文章で書かれている。

 世界が出来たばかりの頃についての話や、勇者伝説も含まれていて、その辺りは面白かったな。


 その後は『神による人間への教え』として、道徳的な内容や心の持ちよう等が書かれていたけど、その一部が私の心に引っかかった。

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