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03話 ヒロインになろう

 昨日は気分が高ぶりすぎて大変だったけど、一晩過ぎたら落ち着いた。


 興奮状態で閃いた『ヒロインになる』という目標は、平静さを取り戻した今でも魅力的だと思うからきちんと考えることにする。



 ゲーム1作目においてヒロイン格の女性キャラは3人いる。

 見習い神官、魔術師、狩人。

 実は見習い神官の正体は王女で、ゲーム2作目で1主人公と夫婦になっている。


 マルチエンディングで他の女性キャラとの結婚エンドもあるけど、私は『王女と結婚エンド』が一番好きだ。

 あの結末(エンド)が最も素晴らしいと感じたから。


 神に選ばれ勇者となり、邪神を倒し、王女であり聖女であるあの子と結婚して国王になる。

 それは粲然たる伝説の再現。

 王城のバルコニーに現れた主人公を見て民衆が歓声を上げるイベントムービーは圧巻の一言に尽きる。


 邪神を倒したことで主人公は栄冠を得るけれど、王女と結婚することにより、それ以上の輝きがもたらされた。


 2作目が出ることを発表された時はとても嬉しかった。

 その上、2作目の主人公が『勇者である国王と、聖女である王妃の間に生まれた王子』で、『王女との結婚エンド』が正史になったと分かったときは嬉しさ倍増だった。

 

 そんな訳で、1作目の正式なヒロインは王女だと思っている。

 だけど今は私がヒロインになりたい。

 

 どうすればヒロインになれるのか……?

 単純な考えだけど、主人公の嫁になることかな。

 つまり『勇者の嫁』になる……それってイケてるじゃん!

 いいよ! すごくいいよ! 決めた! 私は勇者と結婚する!


 ゲームでは王女を勇者の嫁にすることが一番好きだったけど、ここは私が生まれ変わった世界。

 私は好きなように生きていいはずだから、勇者の嫁になっても構わないよね。


 そうなると2主人公は生まれないけど、ここはそういう世界だということで気にしない。

 2作目で起る問題については私がどうにかすればいい。

 2作目が始まるのはずっと先のことだから、解決するために必要な時間はたっぷりある、


 どうやって主人公に近づくか。

 どうすれば主人公の心を射止めることができるのか。

 考えることは沢山あるし、多分大変なことのはず。


 けれど、どんな困難が待ち受けようとも『ヒロインになる』という目標は絶対に揺るがないという自信がある。


 だってこの世界に生まれ変わることができたから。


 大好きなこの世界の『特別な存在』になりたい。


 そして『きっと上手くいく』という楽観的な考えもある。

 今の私はすごく可愛いし、前世の記憶があるから上手く立ち回れる気がするんだよね。



 もっと色々考えようとしていたけど、私を呼ぶ声が聞こえた。

 「ソフィー!」

 テオが私を探していたらしい。

 「どうしたの、テオ?」

 「これやるよ」

 そう言ってテオが左手で差し出したのは小さな木の実だ。

 「みんなにはナイショだ」

 違和感を抱いて、すぐにその理由に気付いた。

 「テオ、右手はどうしたの?」

 テオは右利きで、私の腕を引くときも、プレゼントをくれるときも、いつだって右手を使っていたのに。


 ……そうだ、思い出した。

 私が転生していることに気付く前――ろくに言葉を話さず、無気力だった頃からずっとテオは私にかまっていた。


 「見せて」

 私はテオの右手を確認する。手のひらに傷が出来ていた。

 「アリアさんのところに行こう。治してもらわないと」

 「でも……」

 テオはためらっている。


 もしかして、この木の実はテオが木登りして手に入れたの?


 教会の側にある木に実がつくと大人が収穫して孤児院に分けてくれる。

 この孤児院は教会のすぐ隣にあり、簡単に教会へ行くことが出来る。

 幼児が木登りしていたら止められそうだけど、たまたま人がいなかったのかもしれない。


 勝手に木の実を取ったことが後ろめたくて、アリアさんのもとへ行きたくないんじゃないかなと想像する。


 私は木の実をポケットに入れて、テオの左手を握る。

 「怪我をしたままなのはよくないよ。一緒にアリアさんのところに行こう」

 私はテオの手を引いた。



 アリアさんがテオに治癒聖術をかける。

 テオの右手が淡い光に包まれ、傷が薄くなっていく。


 それを見ていて閃いた。


 そうだ、見習い神官を目指そう!



 身分を隠して見習い神官をしていた王女は、色々あって主人公と出会い、一緒に旅をすることになる。

 王女は治癒聖術による回復要員としての役割が強いけど、旅に出た当初は回復量が少なく頼りにならない。

 序盤では主人公と一緒に物理攻撃をさせるほうがいい。

 メインイベントを進めることで、より強い治癒聖術を習得するから、そこからが本領発揮だ。


 だけど、そうなるまでの間に私が回復要員として活躍すれば、主人公からの好感度が上がるんじゃないかな?

 これって、すごく良いアイデアだと思う。

 


 聖術を覚えるには見習い神官になるのが一番良い。

 神官になるには聖術をきちんと使えなければならないから、見習い神官は聖術の手解きをみっちり受けることができる。

 それが辛くて逃げ出す者が多いというけど、私は決して諦めない。


 聖術を覚えて、旅の仲間になって、ヒロインになろう!

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