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34話 それぞれの想い

 あれから私は三日間も意識を失っていたらしい。

 目覚めると側にいたキャロルとパメラが泣いて喜んでくれた。


 アガレスとの戦いに間に合わなかったことを謝られたけど、神剣は無事に完全覚醒したそうだから、そのことを私も喜んでおく。

 みんなが引き返して時には、私が最後の浄化を終える寸前だったそうだ。

 「すごくキレイだった!」

 「ええ。神々しかったわ」

 その後、すぐに私が倒れて中々目を覚まさないからみんな不安だったという。

 「心配をおかけして、申し訳ありません」

 「謝らないで。ソフィーは立派だったわ」

 「そうだよ!」

 そして、今いる場所がデルフデアの王城であることと、実はギルがこの国の王子であることを知らされる。

 ギルの正体については一応驚く振りをした。


 体調はすっかり良くなっていたから、身支度を整えて他の仲間たちにも会うことにする。


 男性陣も私の目覚めを喜んでくれた。

 「おはよう、聖女様!」

 ジェイクがカラッとした笑顔でそう言った。

 「『聖女様』ですか?」

 私のことを言っているようだけど。

 「ああ。だってお前、あんなに凄かったんだぜ。俺、初めて神の力ってやつを感じたんだ。城壁(かべ)の上の兵士たちも盛り上がってよ、『聖女様』だって大歓声だった」

 私が聖女……?

 それ、かなり良い!

 すごく嬉しいけど、落ち着いて、謙虚でいないと。

 「私が聖女など、おこがましいです」

 「遠慮することはない。君の功績はとても素晴らしいものだ」

 ギルが声を出す。

 「改めて名乗ろう。オレの本当の名はギルバード。デルフデア王国の王子だ」

 ギルはとても真剣な表情をしている。

 「君のおかげで王都は護られた。王族として、心から礼を言う。ありがとう」

 「……はい」



 王都に危機が迫った原因は、もちろんアガレスだけど、実は私もまったく関係ないわけではなさそうなんだよね。


 ゲームでアガレスが襲撃してくるのは、王都を出て大分離れた場所だった。

 『真の力を得た勇者と、誰にも邪魔されず一騎打ちがしたい』と言っていた。

 だけど戦闘では一対一にならず、アガレス対勇者一行になる。

 そのことについてアガレスは文句を言わないけど、プレイヤーとしては突っ込みどころだったな。

 そして、こちらは多数で挑むのにアガレスはかなり強くて、アガレス対フレッドになっていたら、フレッドは確実に負けたはずだ。

 単身で勝つことが出来た私はすごい。


 何だか考えがそれたけど、ゲーム通りなら、大地が汚染される場所は王都から離れているから、王都自体に危機は無かった。

 多分、交通の便がそうとう悪くはなっただろうけど。

 この世界のアガレスは私を殺すために、何故か王都の直ぐ側で襲撃してきた。

 だから、私がまったく関係ないわけではない。


 けどね、悪いのはアガレスだから。

 私は命を狙われた被害者だし、ちゃんと浄化もしたし。

 そもそも、アガレスが一方的に私に惚れたせいだから、やっぱり私は悪くない。


 アガレス、ちゃんと塵になっているといいな。 



 「それにしても、すげーよな。なんたって聖女と勇者が婚約者なんだ。これでフレッドが王様になりゃ、伝説通りだな」

 ジェイクが冗談めかして言う。

 それを聞いたギルは、何だか暗そうな表情をした。



 その後、聖区から伝達が届いたと知らせが入った。

 内容は大神官長が勇者一行を聖区に招きたいとのことだった。

 私たちは翌朝、出発することになった。

 ギルは、このまま最後の戦い(じゃしんせん)まで着いて行くと宣言した。



 夜。ギルから二人だけで話しがしたとい言われた。

 大事な話しがあるのだと。


 ふと、孤児院にいたころ、テオにプロポーズされた日のことを思い出した。


 「この戦いが終わったら、オレは王位を継ぐことになった」

 ゲーム二作目で、そうなったことが語られていたな。

 「おめでとうございます。きっと素晴らしい国王へとなられるでしょう」

 お世辞ではなく、本当にそうなることを私は知っている。

 「ソフィー」

 ギルは表情を引き締める。

 「オレは君を愛している。どうかオレと結婚して、妃になってほしい」


 ……ああ。まさか、ギルがテオと似ていると思うことになるなんて。

 今のギルはどことなく、あの日のテオと重なる。


 そうでなくても、私の返事は決まっているけれど。


 「私が愛しているのはフレッドさんです。私はフレッドさんの妻になります」


 王妃の座に魅力を感じないわけではない。

 だけど、それ以上に勇者の花嫁(ヒロイン)という栄冠は輝かしい。


 「……きっと君は断るだろうと分かっていた」

 ギルが微笑む。

 「けれど、どうしても伝えたかった。これからも、邪神討伐を目指す同士として仲良くしてほしい」

 「はい。ギルさんのことを、大切な仲間だと思っています」




 【アナザーストーリー】



 ソフィーとギルがその場を立ち去った後もフレッドは一人佇んでいた。

 二人が話しているところに偶然通りかかり、思わず立ち聞きしてしまったのだ。


 ソフィーがギルになびいてくれれば良かったのにと思ってしまう。

 彼女はあんなにもひたむきに、己を愛してくれているというのに。


 今までソフィーに婚約破棄を申し入れることが出来なかったのは、フレッドの優柔不断によるものだ。

 美しく、清廉で、自分を心から慕ってくれるソフィーを無下にすることが出来なかった。


 どうして、あんなにも素晴らしいソフィーとの未来に不安を感じるのか?


 思い浮かぶのは、リアという桃髪の少女の姿だった。

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