表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/37

26話 二人


 私たちはエキナセアを目指して進んでいる。



 アガレスについて、みんな動揺していたけど『邪神についてる危ない奴』という認識で一応落ち着いた。

 アガレスが何故、私に目を付けたのかは謎だけど。

 もしかして、私が美しいから……?



 そして、フレッドは口数が少ないタイプであることが分かった。

 ゲームでも、プレイヤーが選択肢を選ぶだけで台詞はなかったしな。

 うっかりするとフレッドを会話から置いてけぼりにしてしまう。

 質問したり、意見を聞いたりしたらちゃんと答えるけど。

 こちらが『会話を続けよう』と意識しなければ、あっさり会話が終了してしまう。

 初対面の頃は気付かなかったな。



 あと、残念なことにフレッドが戦闘で活躍しない。

 他のメンバーが豪華だから、仕方がないことだけど。


 若いけれど戦士としてベテランなジェイク。

 幼い頃から魔物退治を意識して鍛えていたキャロル。

 多彩な魔術を扱う天才パメラ。

 そして、上級聖術を扱う私。


 ジェイク、キャロル、パメラは、ゲームで仲間になった時はレベルが低い。

 ゲームとの差については『ゲームと異世界では違う』と納得している。


 フレッドは剣の稽古を受けていたけど、あの日まで実戦はなかった。

 それでも魔物を目にして怯むことがなく、戦士の素質があるとジェイクが褒めていたから、今後の成長に期待できそう。



 私はしつこくならない程度に、フレッドに惚れているとアピールし続けている。

 フレッドは私を意識してくれているようだし、絶対に結婚までこぎつける!




 ある日、戦闘中にフレッドの様子がおかしくなった。

 出現した魔物は数が多いけれど雑魚ばかり。

 キャロルとパメラが遠距離攻撃、フレッドとジェイクが前線に出て近距離攻撃、私はみんなの体力回復を行っていた。

 フレッドが魔物の攻撃を受けて転倒した際も、素早く回復したけれど、フレッドが動かなかった。

 私が前線に出ようとしたけどキャロルに止められ、キャロルが前線に出てフレッドのフォローをした。


 戦闘後、フレッドは落ち込んでいる様子だった。


 町に着き、宿で部屋を取った後、『じっくり診断したいから』という名目で、フレッドと二人きりにしてもらった。

 まだ恋人になっていない若い男女が、宿の部屋で二人きりというのはよくないことだと分かっているけど、これは急接近するチャンスだと思った。


 診断したいというのも本心だから、ベッドに座らせたフレッドを聖術で確認する。

 やっぱり身体に異常はないから、気分の問題かな?

 他者の心を元気にしたり、心を落ち着けさせる聖術というのは一応あるけど、それらは洗脳のカテゴリに入る禁断聖術だから使うべきではない。

 言葉でどうにかするしかないなと考えていたら、フレッドに腕をつかまれた。


 まさかベッドに引きずり込む気?


 まさかだったよ!

 こいつ、私をベッドに引きずり込んで押し倒しやがった。

 気持ち悪い! 若い男女の急接近を舐めてたよ! 私、バカ!

 コイツを殴りたいけど、それでも未来の花婿だ。

 一応、言葉で説得しよう。

 「こういうことは、結婚してからにしてください!」

 「あ……うん」

 フレッドが頷いた瞬間、パメラが現れた。

 「婚約したね!」

 いったい何処に潜んでいたの!? 

 ……そういえば、制限書に『気配を薄くする聖術』が記されていたけど、魔術でもそういうことが出来るの?

 だけどこの部屋に入る時は、私とフレッドの二人だけだったはずだ。

 部屋に入る段階か、あるいはパメラが入室する際、私たちの認識を誤魔化した?

 それなら呪詛の範囲かな……?

 少し考えがそれていたら、その間にパメラは部屋を出て、大声で叫んだ。

 「キャロル! ジェイク! ソフィーとフレッドが婚約したー!」


 こうして、私とフレッドは婚約者になった。

 パメラは私のことを応援してくれていたんだね。ありがとう。


 それにしても、まさかフレッドが肉食系だったとは……

 結婚するまで清い関係でいることを約束したけど、もう室内で二人きりになるのは止めておこう。



 その後の道中は雑魚魔物が出る程度で、順調にエキナセアに到着した。


 教会へ行くと、入口前にリアがいた。

 「リアさん、お久しぶりです」

 リアからの返事はない。

 「アルヴィン様への面会を申し込みたいので、失礼します」

 私の背後でフレッドとリアがすれ違っているはずだけど、ちっとも気にならない。

 だって、私とフレッドは婚約したのだから。

 邪神を倒して結婚すれば、私はヒロインになることができる。




 【アナザーストーリー】


 心の中で、不満や疲労が少しずつ蓄積していることをフレッドは自覚していた。


 美少女のソフィーに惚れられ、手に入れた謎の剣は神剣かもしれないと言われた当初は内心浮かれていた。

 けれどエキナセアへの道中で、心は重くなっていく。


 戦闘ではちっとも役に立てない。

 野営の手伝いをしようとしても手こずる。

 ずっと小さな村にいたせいか、街に入ると動揺してしまう。


 こんな自分を、どうしてソフィーは好いたままでいられるのか分からない。

 実はソフィーは自分に恋しているというのは嘘で、何か企みがあるのではないかと疑心暗鬼になる。

 ソフィーがとても優しくて、邪まさなど欠片もないことは分かっているというのに。


 美少女に対する劣情と、ソフィーはどこまで自分を許容してくれるのかを試したくなり、押し倒してしまった。

 そうしたら何故かパメラがいて、ソフィーとの婚約が決定してしまった。


 これは良いことのはずだ。

 ソフィーと夫婦になればきっと幸福な家庭を築くことが出来る。

 なのに何故、不幸へ片足を踏み込んだかのような気がするのだろう?


 婚約解消を頼むべきか悩んでいる間に、エキナセアに到着してしまった。


 そして、教会で『リア』と呼ばれた少女と目が合い……強く心を惹かれた。




 リアもまた、名も知らない金髪の少年に心を打たれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ