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25話 漆黒の魔人

 私たちはフレッドに自己紹介し、フレッドもライラックの村人であることを話してくれた。

 ライラックの教会へ届け物をすることが目的であることを話し、どうか文通してほしいと頼んだ。

 手紙を通して自分のことを知ってほしいと。

 「ソフィーは字がキレイなんだよ」

 キャロルがそう言ってくれた。

 フレッドが文通することに同意して、私は照れながらも嬉しがる振りをした。


 フレッド好き好きアピールとして頼んだけど、文通することにはならい。

 だってこれから冒険の旅が始まるのだから。



 フレッドに案内されて教会を訪れる。

 神官と話していると、老女が現れてフレッドに詰め寄った。

 「フレッド! この剣は……!」

 彼女はこの村に住む占い師。

 ゲームで表示された名称も、そのものずばり『村の占い師』だった。

 「その剣に何かあるのですか?」

 何のことなのか知っているけど、その素振りを表に出さず、フレッドに剣を見せてもらう。

 「これは、聖なる紋章ですね」

 剣の柄に嵌っている石に、薄っすらと聖なる紋章が浮かんでいる。

 「ホントだ。お守りと同じ」

 キャロルが柄の石と、私が首から提げているお守りを見比べて言った。

 「この剣、どういうもの何だ?」

 ジェイクの質問に、フレッドはためらいがちに答える。

 「さっき、魔物に襲われた時、突然現れたんだ」

 「まるで勇者伝説ね」

 パメラの言葉は大当たりだ。

 「フレッド! お前は旅立たなければならない!」

 占い師がフレッドの肩をつかむ。


 「運命に逆らってはならない!」


 あぁ。そんな話しをジョセフ様から聞いたことがあったな。

 『運命とは、避けることの出来ない都合が悪いもの』だと私は思ったんだっけ?


 「旅立つって、どこに?」

 フレッドが戸惑っている。

 「エキナセア・シティの教会に来られませんか?」

 ゲームでは神官が助言していたけど、これくらいなら私が言ってもいいだろう。


 「聖なる紋章が宿された剣……先ほどパメラさんがおっしゃったように、私も勇者伝説を連想しました」


 「エキナセアの大神官様は見聞の広いおかたです。何か存じているかもしれません」


 「それに、図書館には多くの書物があります。そこから分かることがあるやもしれませんから」


 「それって、これが神剣だってことか?」

 ジェイクの指摘を今は濁しておく。

 「断言することは出来ませんが……可能性はあるかと」


 そういうわけで、フレッドを含めた五人でエキナセアへ向かうことになった。

 パメラとキャロルとは仲良しだから、このまま着いて来てくれると思っていた。

 ジェイクについては、もしかしたら『ライラックに着いたらお別れ』と言い出すのではと思っていたけど、このまま同行するということで安心した。

 ジェイクとも仲良くなっていると感じていたけど、同性と比べれば距離感があるから。

 ゲームだと、この時点ではフレッドとリアの二人旅。

 五人でスタートとは何だか豪華だ。



 来た時とは違い、森の雰囲気が不穏なものになっている。

 「魔物が出そうな予感がするな」

 ジェイクの言葉は当たっている。

 邪神覚醒の兆しによって神剣は現れた。

 そして魔物の動きが活発になる。


 ゲームでは、まだ魔物との戦闘に慣れていないフレッドとリアでも突破出来るほどだから、フレッド以外は場慣れしている私たちには楽勝だった。


 ちなみに、フレッドは村に住む元兵士に稽古をつけてもらっていたけど、実際に魔物と戦うのは初対面のあれ(チュートリアル)が初めてだった。



 あっさりと森を抜け、今日はこの先にある村で一泊しようと話していた。

 その時、場違いなモノが現れる。


 ソレは漆黒のプレートアーマーで巨体を覆い、クローズヘルムで顔を隠している。鎧兜の意匠からは頑強さが伝わり、それを纏うモノが放つ威圧感を増幅しているようだ。


 こいつは『魔人アガレス』だ!

 邪神復活を目論む四天王のうち、最強の男。

 ゲーム的には邪神より倒すのが厄介で、何度もロードする羽目になった強敵。

 それが何でここにいるの?

 出番はもっと後のほうでしょ!

 そういえば、もっと前からフレッドを見張っていた的な台詞があった気がするけど……でも何で出てくるの?

 出るならせめて四天王最弱から来てよ!

 アレは本当に雑魚だから!


 やばい! 今戦ったら死ぬ!

 完全に油断していたから、心構えが全然できていない。

 それにこいつは、倒したと思っていても実は生き延びていやヤツだ。

 二作目まで潜伏して、またもや強敵として立ちはだかる。

 それを阻止するために、倒した後で全力でトドメを指すつもりだったのに、今の段階じゃそれは無理!


 どうすればいい……!?


 「銀髪の娘よ」

 私のことだよね!?

 「……なんでしょうか?」

 返事をしたけど、どうなる?

 「我は魔人アガレス。邪神を奉じる者だ」

 自己紹介?

 「……私はソフィー。神を奉じる見習い神官です」

 とりあえず、私も自己紹介しておく。

 「そうか」

 そう言って、アガレスは姿を消した。


 「今の奴、何なんだ!?」

 「邪神の手下?」

 「ソフィー、大丈夫?」

 ジェイク、キャロル、パメラがいっせいに口を開く。

 フレッドは何も言わないけど、今は構っている心の余裕が無い。

 「邪神が目覚めつつあるようです……」

 それしか言うことが出来なかった。




 【アナザーストーリー】



 アガレスが勇者と直に会うのはまだ先の予定だった。

 それでもソフィーと向き合いたいという衝動に従った。


 『ソフィー』という名は既に知っていたけれど、本人の口から聞きたかった。


 己に対して怯えながらも、強い眼差しを逸らさずに向けてきたソフィーに、自分が感じたものは何なのか……今はまだ断言することはできない。


 邪神の(しもべ)として特別視すべきは勇者。

 けれど個人(アガレス)としては、ソフィーが特別に思えてならなかった。

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