24話 金髪の少年
ついにここまで来ることが出来た!
ゲームでは、この森で主人公が襲われて、神剣を授かるんだよね!
それでもまだ神剣の力が解放されていないから魔物相手に劣勢で、危機一髪のところでリアが参戦してどうにかなった。
今この場にリアはいないけど、私と頼れる仲間たちがいる。
主人公を絶対助ける!
多分、今日が物語開始の日で合っているはず。
単なる勘だけど、よく当たるから信じている。
ああ、楽しみだな。
「ソフィー?」
ジェイクに話しかけられた。
「さっきからそわそわしてるみてーだけど、どうしたんだ?」
うわっ、バレてる。
……ヘタに嘘を吐かないで、だけど肝心なことは隠して、それなりに本当のことを言っておこう。
そのほうが、この先起こる出来事を予知していたみたいで、私の評価が上がりそうだから。
「先ほどから『何か』を感じるのです」
「何か?」
キャロルが相槌を打つ。
「上手く言葉にすることは出来ないのですが、何か、とてつもないことが起こるような気がして……」
「そうなの……なら、気をつけて進まないと」
パメラが頷きながら言う。
みんなが私の話しを信じてくれたようで良かった。
更に森を進んでいくと、魔物の咆哮が聞こえた。
主人公が魔物に襲われてるの!?
私はそちらのほうへ駆け出す。
「ソフィー!?」
「待って!」
「危ないよ!」
仲間たちの声を聞いている余裕はない。早く行かないと。
森の中の開けた場所で、金髪の少年が魔物と対峙していた。
彼は血に塗れながらも剣を構え、魔物から目を離さない。
その光景を目に収めながら、私は彼に向かって進んだ。
魔物が鋭い爪を彼に向けた瞬間、結界聖術で彼を包む。
私は彼のもとに飛び込んで治癒聖術をかけた。
その瞬間、彼と目が合う。
彼が持つ緑色の目に、心が吸い込まれるような錯覚がした。
彼こそが、私にとって最も必要な存在。
私が大好きなゲームの主人公。
邪神討伐の勇者。
ヒロインの花婿。
彼と結婚することで、私はヒロインになることが出来る。
――それは違う。私は地獄に落とされる。
……?
弓音と爆音、肉を斬り潰す音。
それらによって我を取り戻す。
仲間たちによって魔物は撃破された。
――奇妙な不安感は霧散して、もう思い出すことは出来ない。
私はまだ、彼から視線をそらしていない。
彼の視線も私に向けられたまま。
「私の名はソフィーです」
「……僕の名前はフレッド」
やっと名乗りあうことが出来た。
……よし!
何だか頭がぼんやりしちゃったけど、多分感動し過ぎたせいだろうな。
だって、やっと物語が始まったんだよ!
ついにフレッドと出会えたんだよ!
感動しても仕方ない!
「ソフィー? 一体どうしたの?」
キャロルに聞かれた。
さっそく『一目惚れしちゃった』アピールしておこうかな?
私は照れたような振りをする。
「その、何故か、フレッドさんに特別なものを感じてしまって……」
「えぇっ!? それって、一目惚れってやつか!?」
ジェイク! ナイスアシスト!
「ソフィー……恋したの?」
パメラの言葉を受け、フレッドの目を再び見つめて宣言する。
「……はい。私は、フレッドさんに恋をしました」
仲間たちは大騒ぎし、フレッドは顔が赤くなっている。
告白するのが早すぎる気がしないでもないけど、これで良いはず。
今らならまだ、パメラもキャロルも、フレッドとの恋愛フラグが立っていないから。
この二人からはリアと違って警戒心を感じないけど、万が一ということがある。
私が先に惚れた宣言しておくことは、二人がフレッドに恋することへの牽制になるだろう。
修羅場にはなりたくない。
「フレッドさん。突然のことですが、私の想いは確かです。どうか、真剣に考えてはいただけないでしょうか?」
フレッドはコクリと頷いた。
その反応に満足していると――
「……っ!」
私の視線が勝手にそれて、何もない場所へ向いた。
すぐにフレッドへ視線を戻したけれど、何だったんだろう?
【アナザーストーリー】
フレッドは森に薬草を摘みに来た。
この辺りには滅多に魔物が出ないものの、念のため木刀を所持していた。
けれど、急に現れた魔物によって木刀はあっという間に折れてしまう。
焦っていると、目の前に剣が現れた。
咄嗟にそれを掴むと不思議な感覚がして、どうにか魔物を相手に凌ぐことが出来たけれど、負傷によって体力が尽きていくことを感じる。
魔物が腕を振り上げ、もう駄目なのかと思ったとき、魔物の腕が空中で跳ね返された。
そして目の前に銀髪青眼の美少女が現る。
あまりの美しさに、危険な状況であることを一瞬だけ忘れてしまった。
銀髪の美少女――ソフィーによって傷は癒され、彼女に続いて現れた者たちにより魔物は倒された。
そして恋の告白をされて、フレッドの頭は弾けそうだった。
まるで夢を見ているかのように現実感がない。
足元が揺らぐようで、何だか怖くなる。
――恥らうソフィーの微笑みに、一抹の不安を感じた。
ソフィーと名乗った少女を、魔人の男は見つめていた。
慎重に気配を隠していたはずだが、ソフィーがこちらに視線を向けた。
瞬時に転移したため、ソフィーがはっきりと視認することはなかっただろう。
神剣の出現を察知してここに転移して来た。
己が勇者を討つのは、神剣が完全に覚醒した後だ。
今ここで手を出すつもりはない。
神剣と勇者を確認することが目当てだったはずだ。
けれど何故かソフィーのことが気になる。
まるで心が波打つ様だと男は感じた。




