23話 旅立ち
ヒース暦1014年。
ついに物語が開始する年になった。
さすがに緊張するな……
どうやって、リアが主人公の村へ行く時、ついて行こうか考えていたら、すごくあっさり解決した。
アルヴィンに呼び出され、こう言われたのだ。
「ライラック・ビレッジの教会へ遣いに行ってはもらえないか?」
えっ!?
ライラックって主人公のいる村だよ!
これってリアが頼まれるはずの事だよね?
「……どういうことでしょうか?」
「このところ、君が焦燥や緊張感を抱いているように見えてな」
バレてる!?
「君はとても優秀だ。見習いとしての正規の修行で学ぶことはもはや無いと言える」
そうなんだよね。制限書庫でずっと自習していたいぐらいだよ。
「そんなわけで、気分転換の旅行のつもりで行ってみてはどうかね?」
「……わかりました。アルヴィン様の心遣いが嬉しくてなりません」
本当にありがとう、アルヴィン!
心から嬉しくてたまらない!
だってリアが一緒じゃないんだよ!
私がヒロインになるための最大の壁だったリアが、物語の舞台に上がることするらないなんて!
私、運が良すぎる!
見習い仲間たちにお使いの旅に出ることを報告し、旅支度を整える。
教会の敷地を出ればパメラが現れるから、ライラックへ行くことを告げる。
……わりと期待していることがあるんだけど、どうなるかな?
「わたしも一緒に行く」
やったぁ! これで冒険の旅に出た後、パメラと再会する手間がはぶける。
キャロルとジェイクは、物語通りまた会えるかなと思っていたけれど、私の運はどこまでも良かった。
「ソフィー!」
都市を出るため進んでいると、大声で私の名を呼びながら、橙髪の少女が走って来た。
「キャロルさん?」
「そうだよ、ソフィー!」
直接会ったのは10歳の時だった。
あれから4年の歳月でキャロルは成長していた。
パメラも成長しているんだけど、しょっちゅう会っていたせいかあまり意識していなかった。
私自身については、日々美しさに磨きがかかっているなと思っていたけど。
「ソフィー」
今度は男性の声が聞こえた。
聞き覚えの有るこの声の持ち主は……
「ジェイクさん?」
ジェイクはあまり変わったように見えないな。
それにしても、何でキャロルとジェイクがここにいるの?
四人で落ち着いて話をすることにした。
パメラ、キャロル、ジェイクが自己紹介する。
パメラとキャロルは私を介してお互いの存在を知っていたけど、ジェイクは二人と初対面。
それでも和やかな雰囲気で話しは進む。
キャロルがここにいる理由は、私に会うためだった。
前々からエキナセアに行きたいと両親に話していて、ついに認められたのだという。
事前に私に知らせなかったのは、突然会ってビックリさせたかったらしい。
ジェイクのほうも、私に会うことが一応目的だった。
キャロルほど明確に達成したかったわけではなく、エキナセア近郊を通りがかった際、私のことを思い出し、もしかしたら会えるかもしれないという軽い気持ちだったそうだ。
キャロルが私を呼ぶ声を聞いて、もしかしたらと思い駆けつけたら会うことが出来たのだと
私は、これからパメラと一緒にライラックへ向かう予定だと話した。
「キャロルさんとすれ違うことがなくて良かったです」
「うん!」
元気いっぱいの返事にすがすがしさを感じる。
「あのね、あたしも一緒に行きたい!」
よし! キャロルと再会した時から、この展開を期待していたんだよね。
だけど一応、確認しないと。
「よろしいのですか? ご両親が心配なさるのでは?」
「大丈夫だよ! 武者修行もするって言っておいたから、帰りが遅くなっても平気!」
「そういうことなら、よろしくお願いします」
さて、ジェイクはどうなる……?
「俺も一緒に行っていいか? ライラックは行ったことがないからな」
ものすごく都合か良く進んでいる!
「はい。ジェイクさんも、よろしくお願いです」
私って本当に運が良いな。
「とても楽しい旅になる予感がします」
「そうだね。わたしも楽しみだよ」
パメラの機嫌も良さそうだし、良いこと尽くめだな。
道中は和気藹々としたものだった。
宿に泊まった際、お願いして厨房を使わせてもらった。
キャロル母からレシピを教わって練習した肉じゃがの味を、キャロルに確認してもらいたかった。
「美味しい! すっごく美味しいよ、ソフィー!」
「ああ! すごく美味いな」
「ソフィーは料理上手ね」
キャロルだけでなく、ジェイクとパメラにも好評だった。
馬車が通らない道を徒歩で進むこともあった。
途中で魔物が出たけれど、ジェイクが戦斧で素早く撃破した。
その後、先ほどよりも強そうな魔物が二体同時に出たけど、キャロルの弓とパメラの魔術で弱らせ、ジェイクが接近してトドメを刺した。
私が戦線に出る間はなかったけれど、みんなが消費した体力を聖術で回復させた。
この旅で初めての野営では、旅慣れしているジェイクと、野外活動で経験のある私が準備した。
その次からは、キャロルとパメラも難なく準備に加わってスムーズに進んだ。
ちょっとイヤなこともあった。
キャロルと二人で町を歩いている時、ナンパされた。
かつて遭遇した変態を思い出して気分が悪くなっていると、キャロルが追い払ってくれた。
この時に気付いたけど、エキナセアではたまにパメラが威圧感を発することがあって、そういう時は近くにいる男性が素早く立ち去っていった。
あれについて深く考えてなかったけど、ナンパを撃退してくれていたのか。
……自分でもナンパ対策をしないとな。
モテるのは嬉しいけど、ナンパされるのは苦手だ。
そしてついに、ライラックへ続く森までたどり着いた。




