エピローグ
教皇歴768年。
今年も相変わらず、穏やかに過ぎていた。俺は庭先のバラを剪定しながらのんびりと暮らしている。
俺の嫁さん達は、静かにお茶を飲んで、各地の子供ら、そしてその数千人にも及ぶ子孫らの動向について情報を取りながら話し合いをしている。
各国の国体は数百年前にすべて吸収し終えており、教皇である俺のもとにすべてが集約されている。
俺を支えるのこりの12使徒は各地に散らばっていて、その下に各枢機卿やイル教の各組織がそれぞれの地域を統括している。
もし12使徒の手に負えない荒事が起きれば、俺の片腕であるラ・トーガが出向き、簡潔に処理をするし、取り返しがつかなければ創造神サンスースの片腕である妖精王マクダウェルがその場の時間を巻き戻したり、進めたりしながら処理をし終える。
俺の師匠にして、世界最高の魔道技術の開発者であるプラローロは、相も変わらず最高の開発者であり続けており、すでにこの世界の魔道科学技術は前世の科学技術を超えている。
なにせ魔導は内燃機関を必要としないので、安全性、永続性に優れている。効率化していけば、エネルギー消費も低くなる。
この世界はインフラはほぼ完成している。なにせ俺の評価で魔力エネルギーを固定化しているので、世界各地に公共の転移魔法陣が置かれ、星の反対側からでも数秒で移動ができるためだ。
教皇歴が始まったのが、俺が教皇になった翌年である。俺の左手に戻ったラトーガの力によって、妖精王マクダウェルが自己の存在理由、創造神サンスースの片腕であったことを思い出し、顕現の儀で俺に恭順の意を示したのが、決め手であった。
世界の人類すべてが、俺に恭順の意を示すまでに一月かからなかった。面従腹背の謀略王もいたが、所詮人間。数十年たてば本人も死に、婿養子に入っていたジャロロの子が王位をもって終了である。穏やかに政権を奪取した。700年以上たった今でもジャロロの息子はそこの王である。
俺が命を固定しているのは俺の家族と12使徒である。家族に関しては3親等まではほぼ強制的に固定されている。ちなみにもっとも多いのは俺の兄弟である。クルスを筆頭に162名の弟妹がおり、年齢差も数百歳ある。母さんのおなかが膨れてきたので、また生まれるのだろう。それもまぁいい。
いつまで盛んなんですか?と大岡越前みたいなことを聞いてみたら、母さんは笑いながら灰を菜箸でつついていた。えーっと灰にならない人が灰になるまで、というのはシャレにならないけれど、子育ては楽しいらしいので良しとしよう。
そう言えば父さんたちは商売に数百年前に飽きたらしい。絶対権威の子どもの父というだけで、商売相手は尻込みし、常に満額回答の世界に飽きてきたとか言っていた。すまん、と思う。それ以来、ずーっと農業に精を出している。永遠の人生なので、楽しみを少しずつ見つけていってもらいたい。
プラローロ師匠やら俺の嫁さんたちをはじめとする12使徒の彼らは義務はないけれど、暇つぶしと言わんばかりに世界の調停者を買ってくれている。
宗教間の対立などというものはこの世界に存在しない。俺が神であり、動かしようのない事実だからだ。〇〇主義者とかいう前にそこに神がいるでしょう、で終わり。イデオロギーの対立も存在しない。明確に神の意志が存在するからである。国家間の対立もない。だって俺の子らが元首だから。経済格差もほとんど感じられないレベル。
どの子どもの権利は強固に守られるし、教育制度も完成した。魔物も進化しているし、魔物ですら俺に恭順の意を示している。
安定した政治と食料生産、魔導科学技術の発展、それにともなう医療技術の完成により人口は大幅に増えた。大きなビルディングの立ち並ぶ大都市もいくつも形成された。
そういえば冒険者稼業は数百年前に廃れた。より組織的に素材供給システムが確立されるようになったからだ。「家内制手工業からの脱却」的な産業革命が起こっただけだが。
宇宙空間へのアプローチも進んでおり、隣の星へのテラフォーミングも始まっている。適した星がないという問題は存在しない。なにせ世界はレティと分離している機能としての創造神サンスースの思いのままであり、そのサンスース・システムの執行権利者は俺である。
まぁ、やりたい放題である。
テラフォーミングを行うのは理由があった。人間には俺たち一族に管理された落ち着いた世界であるこの星が窮屈で仕方ないと感じる者もいる。俺に対する不敬はべつにどうでもいいが、気の毒なのでそのフロンティア魂的なものを解消させてやらなければならない。
テラフォーミング先は完全に現地に住む人間の自治を任せており、俺はそれに干渉しない。いくつか戦争やら対立やらがあるようだが、ほぼこの母星と同じ環境を用意したので頑張ってほしいと思う。
もちろん苦しかったら戻ってくるのも悪くない。向こうで犯罪を犯してない限りは受け入れることにしている。
力の差が歴然としているので、星間戦争などということは起きない。起きた瞬間に向こうの星が消える。それくらいの力の差が存在するのだ。
まぁ、そんな世界。ユートピアかディストピアかは各自の判断に任せるべきことだ。俺はこの世界を維持するし、心の平穏まで含めてケアしていくだけである。
「いい世界になったねぇ」
「ああ、俺たちが望んだ世界だ」
「何度も死んだけれど、こうして二人そろってだらだらと生きていける世界があるというのはいいもんね」
「ああ。そうだな」
「三千世界のカラスは殺しつくしたけれど、何の後悔もないね」
「ないな」
「このまま少しずつ世界を広げて、また新しく神様をつくって、ゆっくりと神話になっていきたいもんだわ」
「違いないねぇ」
「ま、一緒にがんばっていきましょ、お兄ちゃん」
「ああ、ゆっくりな」
~完~
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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現人神の息子、知らない世界で町づくりをする。~スキルはアイテムボックスしかもっていませんが、なんとかします~
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