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俺を殺すというのなら~前半~21話

 ――評価:クローリスト心理 復讐と殺意――


 俺はそのままプララを伴い、休憩所に入りテーブルに座る。中の休憩室には俺たちの他に人はいない。ただし、奥に人の気配がする。


「どうしたんですか。様子がおかしいですよ?」

「そのまま談笑してる風のままで。師匠の指輪を俺の方に向けて、イチャついているように俺の口のそばに」


 プララが言われた事を素早く理解し、指示通りに師匠に繋がっている指輪を俺の口元に持ってくる。


「魔道車にクローリストがいる――」

「え?」

「気づかなかった――あいつは最初から乗り込んでいたんだ」

「まさか――」

「いや、間違いない。サッとだが、評価もした。明確に打ち出された復讐に殺意。それも強く、とても強く――俺に対する相打ちをも辞さない覚悟をもって」


 俺たちは2人で嘆息する。


「もう忘れてました、その名前すら――」

「ああ、意外だった」


 あまりにも平和だったのでボケていた。俺もあいつの存在を全く忘れていた。


 闇魔と言われるように、シュシュトリの影に隠れていたのか、それともなんらかの光学迷彩系の魔法を使ったのか――。


 細かいところはわからない。


 しかし、あの時、シュシュトリが乗った時になんだか沈み込みが多いと思ったのはそれだ。


「先輩たちは、今、催眠状態で眠らされているんだろうが、詳しい理由は見れなかった。唯一のアドバンテージは、クローリストが『憎きライトはまだ気づいていない』と思っていることだからな。こちらの打つ手は最小限にしたい。」

「私がやりますか?」

「いや、バックアップを頼んでいいか?なんだかクローリストだけでは無い気がする。こうして警戒してみれば、町の匂いがやはりおかしいんだ」


 俺は素早くプララの手を取ると、指輪にキスをして見せる。傍から見たらふざけているか、イチャついているようにしか見えない。


 そして素早く呟く。

「師匠、リャララ様に連絡して、サスティラから1つ目の宿場町に急ぎ治安兵の派遣の要請を。たぶん囲まれている」


 その上で、あまり考えたくない仮説を言う。


「町の人の息遣いが感じられない。ここの領主にも連絡を」


 指輪が一瞬、赤く光る。伝わったのか――だが、あくまでもそれは保険だ。


 モノホシに手をかける。確認。


「今日は、一切容赦なし。最優先1つ目は俺たちの命。2つ目に先輩の命。3つ目の命は町の人――いれば」

「町の人を装った場合は――」

「俺が評価する」


 ガタ、と音が鳴った。休憩所の奥の方から音がする。俺とプララは目で合図する。


「ああ、だれかいらっしゃいましたか?」


 できるだけ穏やかに。


「あ、は、はい、み、水は飲まれ、ますか?」


 お盆に水を入れたコップをもって、奥から顔を見せたのは、俺よりも少し小さい兎人族の男の子だ。


 評価:兎人――宿場町の町長の子供、心理状態:怯え――評価:怯え――妹を人質――水にひまし油が入っている。


「いや、いらないよ。もう出ていくしね――」

「そ、そうですか」


 俺は立ち上がった。プララも立ち上がる。


「あ、あの――」


 男の子は水をおいてこちらに駆けてくる。手にナイフ――リシン系の毒物が塗ってある。


「来るな!!」


 俺は最大限の評価:威圧を乗せて叫んだ。


 だが、男の子は立ち止まらない。そのまま突っ込んでくる。


 腰を落として抜刀しつつ、みねうちでナイフだけを正確に跳ね上げる――。


「あぅっ」


 男の子はそのまま俺たちの1m手前で倒れ込む。背中には浅く切られた傷がついている。


 俺は静かに辺りを警戒する。プララは男の子に駆け寄って抱き起す――


「ごめんな、さい」

「誰に――こんなことを――」


 プララがあまりの傷に問うた。


 素早く治癒の水魔法をかける。傷口を洗い流し、入り込んだバイ菌を取り除く程度の魔法だが、効き目はある。


「ごめんな、さ――いっっっ!!!!」

「いたっ!!」


 プララが突然、声を上げる。


 俺は瞬間的に自分の見落としを後悔する。


 プララが抱きかかえた少年に太ももを刺されていたのだ。


 プララを刺したナイフに塗られているのも先程のナイフに塗られていたものと同じリシン――致死性の高い毒だ。


「プララ!!毒だ!」


 俺は兎人の少年を蹴り飛ばすと、プララに駆け寄る。


 評価:傷口――致死量の毒――


 は?


 なんだこれは!!!


 プララが、死ぬ?


 死ぬのか、こんなところで?


 いや、いやいやいやいやいやいや、ちがう、そんなことは絶対に許さん!!


 俺は頭を巡らせる。


 そうだ、こんな時にパニックになっている場合じゃない――どうしたらいい!?


 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!!!


「魔法を、解毒魔法を!!」

「――かけて、ますが――」


 プララは素早く魔法をかけていたが――集中が阻害されていて発動しない。


 だめだ、だめだ―――なんかないか、俺のこのスキルで!!!!


 ああ!できる、できるかもしれんっっっ


 ――だが、わからん――でも、やるしかないっ


「失敗したらすまん!!愛してるぞ!!!プララ」

「構いません!!私も信じてますし、愛してます!!」


 俺は彼女を抱きしめて、傷口に手をやり――叫んだ。


「評価を――固定!!!」


 元来、評価を固定するとは、そのものの評価を決めてしまうことをいう。俺が思いついた評価の固定の応用的な扱いとして、俺は、プララのすべての健康状態に対する評価を固定したのだ。傷口以外の。


 ――評価スキルの無茶。無茶なロジックだが、無理じゃない。


 俺の評価スキルは、神が与えたスキルだ。


「あ――」


 プララが声を上げた。俺はプララの健康状態が固定されたことにホッとし、そのまま耳打ちをする。


「傷口の解毒と治癒を完了させても壁を背にそのまま倒れていて。辺りを最大限警戒しててね――」

「分かりました――最後に私も参加させてもらいますから――」

「分かった。だけど、取っておくつもりはないよ」


 許さない。


 許すつもりもない。誰であろうと、どのような事情があろうと――。


「おい、ガキ――そこから動くなよ。動いたら殺す。お前はすでに加害者だが、妹に免じて許してやる」

「す、すびばぜん――」


 兎人の少年の喉の奥がひっと鳴る。


「助けられたら妹も助けてやる――」


 俺がゆっくりとプララの体を壁に横たえると外の気配を伺う――。


 いつの間にか、休憩所が取り囲まれている。


「あはははははっはははははっは!!!!!恋人とのお別れはすんだか!!」


 クローリストの声である。


「まさか、お前が刺されたってことはないだろう!!!そもそも、そのガキに刺すように命じたのはクソ生意気な女の方だからな!!」


 俺は休憩所の奥に通じる扉に評価をかけた。そう、評価:固定。その扉は閉まっていると評価し――固定する。これでもう開かない。


 一度使えたのだから使える。俺のスキルはそういうスキルだ。


 俺は周りの窓すべてに評価で誰もここに入らないように評価を固定する。ついでに建物に関しても状態を固定する。火をかけられても燃えないように。何をされても壊れないように。


 許さない。


 二度とあんな風な油断はしない。


 大事なものを奪われそうになった。だが、奪われたわけではない。良かった。良かった。心から思う。この反省は生かす。


「出てこい!!!ライト=サリス!!」


 俺はゆっくりと立ち上がり、刀を抜いた。


 そして唯一の入り口となった建物のドアから外に出る。後ろ手で締める。


「俺に、なにか用か――」

「やあ、人族の英雄にして、享年10歳となるライト=サリス」


 クローリストは喜色満面だ。クローリストの隣には――だれだ?見知らぬ隻腕の男が立っている。評価:隻腕の男――ザイド・ブルーム……?


 暗殺者――!!おう、あいつか。俺が問答無用で腕を切り飛ばした男だ。


「わかった。お前たちは分かった。クローリストと暗殺者のザイドだ。で、この50人にも近いのはどこのどちら様かな?」

「我がスト家の眷属の暗殺集団ブルームだ――」


 俺はなるほど、と頷いた。評価:暗殺集団ブルーム、闇魔族のスト家お抱えの殺人集団。権力闘争などで、姿は現さずにプレッシャーをかける存在。暗殺技術のランクでいうとAの超一流を1人、Bランクは十数人も抱えている。


 だが、ここにきているのはD-Cレベルばかり。


「言葉もない、か」

「無いわ。お前みたいな馬鹿に必要とする言葉などない――」

「あははははははははははは、いうじゃないか。プララ、だったか。お前の恋人の禁忌の鬼子を殺されたというのに余裕だな」


 なるほどなあ。いい経験になった。繰り返したい。良かった。犠牲なく、学ぶことができて。


「先輩たちは生きているか?」

「殺す必要が今のところないからな。とりあえず死んではおらん――」

「そりゃよかった」


 俺はそのまま、視界に見える魔道車全体の評価を固定する。これでよし。これで犠牲はゼロだ。


「だが、あとで殺しておいてやるわ。凌辱と絶望の果てにな」


 へえ。


「ああ、お前の恋人もな、あれくらいの子どもの女の死体が好きなやつがいるから、そいつにやろうと思うがいいか?」


 やだね。


「俺が憎いか?俺を殺したいか?」


 別に憎くはないが、ムカつくな。殺したいかというよりは殺す。めんどくせえ。


「黙っているということは、もう観念したのか?」


 してねえよ。


「じゃあ、殺してやろう!!!!」


 と、クローリストがいうと、ザイドとそのほか数名――Dランクの大人の暗殺者だ――が、俺の方に向かって突っ込んでくる。


 3m。


 俺の一足一刀の間合いはそれくらい。


 その間合いに入った瞬間。彼らの胴体が上半身と下半身で別れズルり、と落ちた。


「なっっっ」


 クローリストが驚きの声を上げる。


「お前たちは誤解がある様なので言っておこうか」


 俺は納刀を完了し、右足を前に出し、抜刀体制に入る。


 俺の記憶では忍者は強くない。紛れて、隠れて、行動する。それがシノビだ。暗殺者も同じようなものだ、と俺は理解している。


「俺は剣士だぞ――」

「それがどうかしたか!!次は5人一組だ!!!かかれ!!」


 飛び込んでくる4人をまた一刀のもとに切り伏せる――そして、その隙間から飛び出してくるナイフを使い手ごと切り捨てる。


 ナイフは縦方向にぱっくりと裂けた。


 次は絶妙に飛び掛かってくる速さを前後させた5人が突っ込んでくるが、足さばきで距離を調節すると2回抜刀と納刀を繰り返すことで、5人とも上半身を下半身から切り離す。


「おい、もう1/5が死んだが、大丈夫か?」

「う、うるさい!!次は10人だ!!!」


 10人がおれを取り囲む。そしてじりじりと迫ってくる。ただし間合いは5mよりも入ってこない。


「まて!!!」


 俺は評価を乗せて叫んだ。


「足を止めろ!今からお前に必殺技を御覧に入れよう」


 いきなり仲間が切り伏せられて混乱もあったのだろう。指揮官が無能な突撃を繰り返させる不安もあったのだろう。


 暗殺者たち10人は俺の言葉に支配されたように足を止める。そのまま――評価:固定。足を止める。


「秘儀、天翔ける竜の閃き――だったか?」


 一足で間合いを詰めて、10人分の首を一気に跳ね上げる。名前は適当。前世で読んだ漫画の必殺技の名前がそんなのだった気がする。


 足が止まっているのだから、据え置き切りと変わらないのだ。


「なっ!!!」


 これで半分。さらにナイフを取り出して、足を止めた雑魚の頭を3人分打ち抜く――。


「ば、バカな!」

「いや、だから、闇に隠れて殺すのが闇魔族なんだろ?日の当たるところに出てくるなよ」


――皆殺し決定しているんだから、さっさとかかって来いよ。


 殺して晒して闇を全部暴いてやるよ。

いままで「面白かったらブクマヨロ」とかyoutubeで「登録してね」というのを聞いて、そんなの励みになるのかなあ、と思っていたのですが、確かにブクマをしていただけると、とても励みになります。


一人の方のブックマークに興奮してガッツポーズしてしまいました。


いや、ブックマークしていただいた方にもそうでない方にも、ここまで読んでいただいて、とにもかくにも、ありがとうございます。

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