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第二章 美沙(一)
「──て、──ちゃん。ねえ、起きて……」
揺り起こされた。
「んあ……?」
陽祐は、しかめ面で目を開ける。
美沙が不安げな顔で自分を見下ろしていた。
「変なの。ママもパパも、どこにもいないの」
美沙は女子高のセーラー服姿だった。
カーテンの隙間から差し込む日の明るさで、いまが朝だとわかる。
じきに自分の目覚ましも鳴る頃だったろうが、なんだか損をさせられたように陽祐は思う。
「いないって……オフクロなら台所で朝メシと弁当作ってるだろうし、オヤジはまだ寝てるだろ?」
眠い眼をこすりながら陽祐が言うと、泣きそうな顔で美沙は叫んだ。
「だからキッチンにもいないし、ベッドも空なの! 家じゅう捜したけど、いないんだってば!」
「…………」
陽祐は眉をしかめた。起きぬけに両親が失踪したなどと言われても頭がついていかない。
ベッドから起き上がろうとして、
「……わりーけど」
「えっ……?」
「ちょっと外に出ていてくれ。着替えるから」
タオルケットの下はトランクス姿だった。最近はパジャマを着ないで寝ているのだ。
おまけに男の朝の生理現象が起きていた。
* * *
陽祐は手早くTシャツとジーンズに着替えた。
部屋の外で待っていた美沙と二人でもう一度、家じゅうを捜してみることにする。
「いつもはママ、美沙より先に起きてごはん作ってくれてるのに、キッチンは昨日の夜、片づけたままで」
階段を降りながら美沙が説明する。
「寝坊かなと思って起こしに行ったら、ママもパパもベッドが空だし、ほかのどこにもいないの……」
「置き手紙とか、なかったか? 誰か親戚が死にかけて病院に駆けつけるとか?」
「何もなかった。二人とも携帯も置きっぱなしで」
両親の寝室は一階にあった。念のため途中にある居間とダイニングも覗いたが、誰もいない。
寝室も、やはり無人だった。
家具はダブルベッドと、その脇にサイドテーブル。クロゼットは作りつけ。
ほかに鏡台があり、両親の携帯がその上に置かれていた。
母親の携帯の着信履歴を見たが、昨日の昼間、登録名『聡子ちゃん』という相手からかかってきたきりだ。
おそらく母親の友人だろう。発信履歴は、おとといまで遡る。
メールも発着信を過去数件ずつチェックしたが、OB会参加者やご近所のテニス仲間とのやりとりだった。
不審なところはないように思える。
父親の携帯はロックがかかっていた。試しに父親の誕生日を暗証番号に入れてみたが、違っていた。
サイドテーブルの引き出しを開けると、父親の財布とキーホルダーが入っていた。
四つある鍵は、自宅と車と、あとは会社の机やロッカーのものだろうか。
そういや、車はあるのか? キーなら居間にスペアがある。
カーテンを開けて、窓の外の車庫を見た。車は車庫にあった。
クロゼットも開けてみたが、両親の服が下がっているだけだった。




