第十一話
倉庫に戻って、倉庫の床に座り、長時間の歩きで疲労した足を休ませる。
少女も、足が疲労したようで、座って足を休ませていたのだが、ホットパンツを履いており、ホットパンツの丈は短く、足がよく見えたため、疲労を回復させるよりは、僕に対して、その美脚を披露していると言ったほうがよさそうだった。
被害を増やさないためにできることは、何だろうと考えれば考えるほど、答えがわからない。
肩の痛みは、まだ治ってなく、今日、再び銃を撃つことがなくて良かった。
少女は、僕のほうに歩み寄ってきた。
「ねえ、お兄ちゃん」
「なんだ?」
何故か少女は顔を少し赤くした。
「やっぱ、なんでもない」
なんでもないらしい。
「そういえば、さゆちゃん。」
「なあに?」
「まえは、デリンジャーとかいう銃を使っていたけれど、これからもそれを使うの?」
「違うよ。これからはブローニング・ベイビーっていう銃を使うよ」
少女はそう言って、銃を僕に見せてくれた。
デザートイーグルと比べると、小さめの銃に思えた。
「それは、威力は強いのか?」
「そんなに強くないと思う。反動も弱くて、私でも撃てるぐらい」
「ふーん。僕は銃に詳しくないし、銃も上手に使えないからなあ」
「デザートイーグルで、相手の顔を正確に撃ち抜く人が何言っているのかな」
「それは、そんなに難しいことなの?」
「初めてであれは凄いよ」
「そうか。でも、そのせいであんなグロテスクなものを見るはめになった」
あの光景を僕は二度も見たくない。
「私だって、見たくもない。銃を撃つのなんて好きじゃない」
少女は中学生なので、銃を撃つのが好きではないのは当然だ。
それを我慢して戦っていることを、僕は理解してあげなくてはならない。
夜の静けさは、倉庫の中ではあまり関係ない。
昼でも、人のいない倉庫は、僕と少女の声しかしない。
二人で寝る時には、小さめのベッドに二人で入る。
入った瞬間、汗の不快感がして、昨日から着替えをしていなかったことに気付く。
僕の服は、少女に散々笑われた、I’M COCK(邪心という意味になった)とプリントされたシャツを僕はずっと着ていたのであったが、今になるまで気付かなかった。
「そういえば、服着替えてなかったね」
「本当だ! 私いけない。女の子なのに」
「まあ、着替えるのを忘れるのも無理もないぐらいに人の血を見てしまっているからね」
「あれ、お兄ちゃん。I’M COCKって書かれたシャツ着て、人を撃っていたんだね」
「うん、そういうことになる」
少女は、そのことが、おかしくてたまらなかったようだ。
「着替えは、お兄ちゃんのあるかなあ」
少女は、ベッドに寝転がっている状態で、顔だけをだして周りを見回した。
「ないなあ。明日取りに帰る?」
「取りに帰れるなら、帰りたいね」
でも、往復で行くとなると結構な時間を使ってしまうことは、僕は知っていた。
「それなら、明日取りに行こうか」
「そうだね。そうしよう」
明日の朝は、一旦家に帰ることになった。
別に帰ってはいけないという縛りはないけれど。
自転車を家に取りに行くかどうかは迷ったが、置き場所に困るし、銃で撃たれても困るので、自転車は取りに行かないということにした。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
少女の体と、僕の体は、狭いベッドで優しく触れ合っていた。
暗いながらに見える少女の顔は、やはり可愛い。
この少女が、銃で人を殺したことがあると言っても誰も信じないだろう。
僕は考えるのをやめて眠りについた。




