表と裏の正体 その玖
我が名はサイクロプス。カミクズと呼ばれる存在だ。
我が頭は人間でいう『目玉』に酷似していて、胴体は『血管』によく似ている。
基本的には血管のような腕を伸ばし、絡めたり貫いたりして、外敵と戦ってきた。
だがある時、人間の集まる体育館とやらに行ったら、同族の臭いがする変な人間との戦いになってしまった。
最終的には、黒い獣の頭部のような姿になったそいつに、ガブリと全身を喰われて我が生涯は幕を閉じた……はずだったのに。
「なんだ、この現象は……?」
正直を言うと、我も少し混乱しているようだ。だから有りのままを説明しよう。
突然眼が覚めたと思ったら、よくわからない場所に居た。
地面は土、目の前には建物。その壁には、以前見たことがある焼却炉とかいうものが設置されている。背後を向くと木々が生い茂っている。これが森というものなのだろう。
そして我の付近には、二人の人間と一体の同族が居た。片方の人間は、髪で片目を隠している女。もう片方は、髪を後ろで結ってる女。
そして同族は、球体のような頭と手足を持つ、炎に包まれた人型に近い姿をしていた。
……どういう状況かまるで解析不能だ。
それに加え、何故か今の我の姿は……見える場所のみで判断した結果、どう考えても人間だった。意味がわからない。
「……まさか火球を直撃してすぐ立ち上がるなんて……」
【嘘だろ……おい……】
「ところで上倉君、急に突き飛ばすとはいい度胸じゃないか。お陰で汚れてしまったけど、キミはこれをどうにかしてくれるのかい?」
何かどいつもこいつも勝手な事を抜かしている。
だいたいにして頭が高い。
我はそんなに偉い立場というわけではないが、少し舐めすぎではないだろうか。
「ねえ、上倉君。上倉零次君! ……ほお、無視とはいい度胸だ」
片目が隠れた女はまだ勝手なことを抜かしている。
我は貴様みたいなのと話す主義はないのだよ。だいたい我の名前はそんな『カミクラ』などではない。それを無視などと……
「も一発、火球当てたら黙るかもね。行くよ、イフリート!」
【おうよ!】
炎の同族の手から、小さな火の玉が出現した。
それを振り被り、今にも投げるような態勢を取っている。こっちはこっちで勝手だ。
もしやとは思うが、我に当てるつもりだろうか?
おそらく状況から考えてそうだろう。
まったく、どいつもこいつも……
「チッ……」
ふざけすぎだ……!
「舐め……るな!」
【「んっ?」】
「あまり我を見くびるな、ブッ殺すぞXXXX野郎が……!」
我は手を前に出す。腕を自在に伸ばし、攻撃するためだ。
見たところ奴の遠距離攻撃は時間がかかりそうである。
ならば、我のような絡め手が得意な相手は天敵のはず。
撃つ前に動きを封じ込められるからな。
「フッ……」
つい可笑しくなって笑みが漏れる。
「何、その自信……? なんなの、どっから来てるのその自信はっ!?」
「残念だったな。詳細は知らんが、おおかた我に危害を加えるつもりだったのだろう? ならば貴様の目的はここで潰えた。我が力によってな! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
叫ぶと同時に、腕を伸ばす。……つもりだった。
「あれ、腕が……伸びない……だと!? 何故だ!?」
【「「は?」」】
焦り、急いで自分の腕を確認する。
だが異常はなかった。
異常のない、単なる人間の腕だった。
少なくとも、元の血管のようなカミクズの腕と違って、伸び縮みは出来なさそうだ。
「あー、なるほど」
「なんかよくわかんないけどチャンス!」
納得と同時に炎の同族の方を向くと、凄まじい勢いの火球が迫ってきていた。
ああ、投げられてしまったのか。
当然避ける暇もなく直撃。我の意識は闇に溶けていった。




