表と裏の入学式 その壱
この俺、上倉零次は多重人格者だ。
といっても俺の場合、一般的な多重人格とは少し違う。
通常、人格の切り替わりは突然起こることのはずだ。しかし俺の別人格は違う。切り替わるのにいちいち『条件』が必要なのだ。
せっかくだから説明しよう。
例えば条件その1。俺が意識を失った時、別の人格が体を乗っ取って出てくる。この条件は気を失ってる時はもちろんのこと、眠ってる時にまで作用するという厄介極まりない代物だ。
そして条件その2。これは……なんて説明すればいいんだろうな。これについてはうまく簡潔に説明出来る気がしないので、後でちゃんと説明することにする。
最後に条件その3。主人格である俺が許可すると人格が切り替わる。そういう権利を俺は持っているのだ。ただしこの条件は俺以外の人格は知らない。主人格の俺のみぞ知る諸事情ってやつだ。
とまあこんな感じでこの俺、上倉零次という人間は普通じゃあない。多重人格者としてあまりにも異質なこの制約。これらの条件を満たさない限り、別人格は全く出てこない。これには主人格である俺でさえも抗うことができない、かなり厄介な代物だ。
ちなみに何故俺が主人格かというと、そこには簡単には言い表せないほど深い理由がある。これは必然なのだ。俺は主人格になるべくしてなったのだ。
それでも、ただ一つだけ言いたいことがある。
主人格が俺で良かった。主人格が一番まともな俺だからこそ、上倉零次の人生は成り立っているのだ。
もし別のヤツが主人格だったとしたら、こうはなってなかっただろう。連中はあらゆる意味で危ない。だから表に出ることが少ない今の形こそが、正しい形なのだと思う。
―――奴らを決して外へ出してはならない。
それは俺が別人格に切り替わるたび、心の底から思うことだから。




