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スパルティア〜未来から来た鬼教官に世界の命運を背負わされました〜  作者: けやきっこ


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7/9

神楽

十数階ほどのビルの屋上に、呆然と立ち尽くす少女が一人。

強い風が吹いている。

なぜここにいるのか、どうやってここまで来たのか、少女自身も定かでない——————


………————————


「もう…動かせない…?」

「残念だが…」

「そんな…アタシ、なんのために…」


——————………




「急げ!聡太」

「ハア…ハアッ……」


夜の町をヒーヒー言いながら走っている聡太。

スパルティアは聡汰のパーカーのフードにすっぽりと収まる形で、うなじのあたりから指示を出している。


「…だいぶ離されたな」


スパルティアは手元のレーダーを確認している。

どうやら先ほどの少女の居場所が表示されているらしい。


「仕方ないだろ、警察がいたんだ」

「そんなもの、どうとでも…」(スッ…)

「だめに決まってるだろ!公務執行妨害で捕まるわ!」


なにやら得体のしれない物騒なブツを取り出したスパルティアを、聡太は慌てて諌める。


「そんなヘマはしない。いいか聡太、このミッションには世界の命運がかかっているのだ」

「……はあ?」


スパルティアは再びレーダーを確認する。


「……マズイな。」

「ハァ…何が……ハァ…」

「貸せ」

「!?」


〈ビリビリビリビリビリビリ〉


スパルティアは突如、聡汰に電流を流し、身体の神経回路(支配権)を乗っ取る。


「お、おぉぉぉぉおおおおおッ!?」


スパルティアの駿馬と化した聡汰は、夜の町を疾走する。



少女は鉄柵の上に立っていた。

非常に不安定な場所にかかわらず、屹立している。


「………」


少女がいよいよ最後の一歩を踏み出そうとしたとき————


「ちょっと待ったああああああ」

「!?」


昇竜のごとく、眼下から現れる聡汰。

その勢いで少女を抱えつつ、安全圏へ着地する。


「何してるんですか!?」

「………」


ブンッ———!!


「うわっ!?」


風を切るような一撃が聡太の鼻をかすめる。

スパルティアの”操縦”がなければ、危うく鼻がもげていたところである。


少女はふらりと、また柵の方へ向かっていく。

まるで見えない何かに引き寄せられるかのように、その目には意思が宿っていない。


「ま、待って!」


聡汰は今度は少女を羽交い締めにする形で引き留めようと試みる。


ギギ————………


「くッ…だ、駄目だ」


聡汰の身体のリミットは外されている。

にもかかわらず、二人の膂力には大きな隔たりがあった。


「………」


機体そうたが力負けしそうにるのを見て、すぐさまスパルティアは聡汰との接続を解除した。

本来、聡汰の自力では0コンマ数秒の制止もかなわなかった相手である。結果は当然————


「あッ……!」〈ズルっ〉



ズドーーーーーーーーン



聡汰の手から放たれた少女は弾丸のごとき勢いで柵に激突する。

常人であれば、骨の1本や2本折れてしまいそうな勢いである。



「〜〜〜ッ」

「だ、大丈夫ですか!?」


聡汰は慌てて少女に駆け寄る。


「ってて…あれ、キミは…?」


少女の目には、わずかに生気が戻っていた。


「夜…?ここは…?」


少女はぼんやりと周囲を見渡している。


「……お、覚えてないんですか?(まさか今の衝撃で…?)」

「え…?」

「いや、あの、今そこから…」


少女は、柵の前に不自然に整えられたローファーを目にする。

次いで、なぜか冷えを感じる自らの足を確認する。


「はは……夢じゃ、なかったんだ」

「え?」


少女は立ち上がり、手すりに掴まって眼下の街を見下ろす。


「あ、あの…もう少し離れたほうが…」


聡太は少女がまた早まったことをするのではないかと気が気でない。

いつでも捕獲動作に移行できるよう、低い姿勢で構えている。


「飛び降りたんだ…崖の上から…」

「!」

「リアルだった…夢とは思えないくらい…」


その時のイメージが鮮明に思い起こされるのか、少女の顔には暗い影が落ちている。


「あ、あの…」

「キミが助けてくれたの?」


少女は話題を変える。


「ありがとう、少年。まったく、だめだなアタシも。夢遊病のがあるとは思わなかったよ、ハハハ…」

「いや、夢遊病とかのレベルじゃ…」


「つけこまれたな」

「⁉︎」


いつの間にかスパルティアが、少女の横の柵に座っていた。


「……え————?」

「ば…お前…」


「お前…次は死ぬぞ」


スパルティアは少女を見もせずに、そう言った。


「はは…アタシ、まだ寝ぼけてんのかな。いま、この人形が…しゃべったような…?」

「…起こしてやろう」(ビビッ)

「バッ…危な…」


スパルティアが電気ショックの予備動作に入ったことを察知した聡汰は、とっさに間に入る。


〈ビリビリビリビリビリビリ〉


聡汰の断末魔が夜の町に響き渡った。



八代やしろ 神楽かぐら、ふたば西高校に通う高校2年生。」


スパルティアが自前のメモ帳を読み上げている。


「2歳の頃から空手を始め、小学3年生にして黒帯を取得。前年度の日本選手権でも優勝を果たし、将来の活躍が————」


対象は、その脇で聡汰を介抱している少女である。


「期待されていた」

「…………」


神楽は本来、明るい性格である。

また、そうした気質が、如実に顔の造形や表情に現れるタイプでもある。

そんな彼女の表情も、今は陰りを帯びていた。


(だからあんなに強かったんだ…)


聡汰は先刻の公園での出来事を思い出す。


「キミ…何者なの?」


神楽はそう言って立ち上がると、突如空手の型を披露する。

それは素人目にもわかるほどに流麗で、美しいものがあった。

しかし、その”舞い”の途中————


「ぐっ……!!」


何か鋭い痛みが走ったらしく、神楽は地面に膝をついてうずくまる。

脚を大きく振り上げようとする途中のことだった。


「大丈夫ですか!?」

股関節唇こかんせつしん損傷とかいうやつでさ…もう脚が上がらないんだ」


「神様もひどいよね…アタシには、これしかないってのにさ…」

「八代さん…」


神楽は自嘲気味に笑っているが、それが聡汰には痛かった。

何とか元気づけられないか思案するも、都合の良い魔法の言葉も見当たらない。


「だからつけこまれたんだ」

「え?」

「神楽、お前は殺されるところだったんだ」

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