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秘密基地は大迷宮〈ダンジョン〉に  作者: カイエ
一章「秘密基地をダンジョンに」
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16/64

#15

「そう言えば……」


 事の異常さにようやく気づいたケンゴとコータがポカンとしている。


「いや、ぼくは気づいてたから」


 とぼくが言うと、


「なんで言わねーんだよ!」


 とケンゴに叱られた。

 だってキミ、馬鹿じゃん。


「どのくらい奥に行くと使えなくなるの?」


 アリサが腕組みしながら訊いてくる。

 無駄に迫力あるなぁ……。


「えっと……スマホとゲーム機はわりとすぐかな。入って百メートルくらい進むと、もう電源が入らない」

「百メートル?! そんなに奥まで続いてるの、これ!?」

「それどころじゃないよ、1時間以上歩いても全然歩き尽くせないくらい広い」

「すごいじゃない!」


 アリサが目を丸くしてる。


「……それ本当?」


 カナちゃんが疑わしそうに言う。


「そんなに広い遺跡……? 洞窟? わかんないけど……そんなのがあるなら、もっと噂になったり有名になってもおかしくないと思うけど……」

「だからぼくらの秘密基地は凄いんだ!」


 何も考えてないケンゴが胸を張る。

 うん、いつもどおり馬鹿だ。


「で、奥に入るとゲームの電源が入らないのね?」

「うん。懐中電灯はけっこう奥まで使えるんだけど……」

「ちょっと待って、懐中電灯が切れるのは電池が切れるとかじゃなくて?」

「うん、こちらに戻ってきたらちゃんと付くからね」

「ゲームやスマホと、懐中電灯が切れる深さが違うのか……何なの、ここ」


 アリサが気味が悪そうに奥を覗き込む。


「だからダンジョンだって言ってんだろ」


 ケンゴが口を尖らせて言う。


「ゲーム機やスマホと、懐中電灯の違いって何かな」

「複雑さ?」

「確かに、懐中電灯は光るだけだもんね」

「検証してみよっか」

「けんしょー? けんしょーって何だ」

「調べるって意味だよ、ケンゴ」


 結局この日はダンジョンの説明だけで、奥に潜ることはなかったけれど、それがなくても十分この秘密基地は凄い。

 アリサとカナちゃんはとても満足そうに「また来る」と約束して帰っていった。


 門限が僕達より速い女子二人が帰ると、ケンゴが「あ」と間抜けな声を出した。


「……そういやさ、ダイチのこと言うの忘れてた」


 え? ぼくのこと?


「あー、そう言えばダンジョンの話をするなら、説明しといたほうが良かったかも」

「待って待って、ぼくが何?」

「ほら、ダイチが大人バージョンになったときのこと」

「あれは知らなかったらびっくりするだろ」


 あ、そういうこと。


「いや、口調とかなんか変わっちゃうことがあるけどさ、別にそんなに変わらないだろうし、言わなくても……」

「『ふむ……このダンジョンの制作者は、なかなか良いセンスをしている』(シャキーン)」

「『おまえたちもダンジョンに慣れてきたな。そろそろトラップやモンスターについて学んでも良い頃かもしれん』(ズギャーン)」


 ……やめて。


「わかったから! でもどう説明すんのさ」

「明日には一緒に潜る約束したから、その時でいんじゃない?」

「まぁ、それしかないかぁ」


 そういうことに決まり、男子も流れ解散となった。



 * * *



 翌日。

 少し遅れてやってきたカナちゃんとアリサは、ビックリする格好だった。


「何? おまえらどこかの探検隊?」


 カナちゃんはいかにも「冒険家です」みたいな格好で、帽子、ポケットが沢山ついたベージュの上着、同じ色のベルトとショートパンツ、ハイソックスに登山靴という格好だった。


「ガールスカウトの制服なの」と説明してくれたけど、いつものふんわりした服しかしらないから、ビックリしたよ!

 かわいい!


 それにアリサも気合が入っていた。

 なんとヘルメットにゴーグルをつけてやってきたのだ。

 服装も厚手のシャツにジーパン、登山靴。

 完全な冒険ルックだ。


 対して、学校から直接来ているぼくたちはいつもの服でしかない。


「そんな気合入れてこなくても大丈夫なのに……」


 コータが呆れたように言うので、ぼくはあわててその口を塞ぐ。


「超似合ってるよ!」


 ぼくがそう言うと、二人はニコリと笑ってピシッとポーズを決めた。

 超かわいい!


「「ありがと」」


 どういたしまして~!

 ぼくが癒やされていると、口をふさがれていたコータがぼくから逃れてジト目で睨んできた。


「全く……ダイチは普段あんなに冷静なのに、一庫さんが絡むとどうしてそんなにおかしくなっちゃうの」


 そんなもん、カナちゃんが可愛いからに決まってるじゃんか。

 もちろん口には出さないけどね。


 と。


「はい、そこの二人」


 アリサがぼくとコータを指さした。


「はい、なんでしょう」


 思わず直立する。


「その『水無月さん』とか『一庫さん』とか、やめてよね」

「あたしたち、秘密基地仲間でしょ?」


 二人とも、ジト目でぼくたちを睨む。

 今日はやたらとジト目に遭遇するなぁ……。


「では、何とお呼びすればよろしいでしょうか」


 ぼくが言うと、呆れたように


「普通に呼び捨てでいいよ、ケンゴは前からそうでしょ」

「……えーっと、では、カナちゃん、アリサ、とお呼びすればよろしいでしょうか」


 ぼくが言うと、アリサのジト目がつり上がって、


「二つ言いたいんだけど? まずその敬語が気持ち悪いから! あと、なんでカナはちゃん付けで、アタシは呼び捨てなのよ!」


 それは敬意の現れです。カナちゃんはむしろ「カナ様」とお呼びしたいくらいです。

 とは言えず。


「じゃあアリサ、カナ……でいい? ……うわっ、なんか恥ずかしい!」

「恥ずかしがらないでよ……こっちまで恥ずかしくなるじゃない……」

「じゃああたしも二人のこと、ダイチくん、コータくんって呼ぶね」


 おおぅ(クリティカルヒット)。


 なんだか、呼び方だけでぐっと距離が縮まった気がするよ!



 * * *



 いつもの道を通って、洞窟前へ。

 ぼくらが祠に手を合わせているのを見て、二人も見様見真似で手を合わせる。

 いや、ぼくらも適当だから。婆ちゃんに言われてやってるだけだしね。


「じゃあ、いつもどおり会員証を見せろ」


 ケンゴの号令でみんながお守りを出す。


「よし、入場を許可する!」


 やっぱりこの儀式がないと秘密基地っぽくないよね。

 

 しめ縄をくぐるとアリサがリュックサックをゴソゴソ漁り始める。


「何してんだ?」

「待って。……あった、これだ」


 アリサが取り出したのは、ラジオみたいな道具だった。


「ラジオならあるぜ?」

「ラジオじゃないよ、ガイガーカウンター」

「何? それ……」


 アリサは、その装置のスイッチを入れた。


「一応、念のために調べておこうと思ってね」


 アリサの手の中で、装置が小さくノイズを発している。


「何やってんだ?」

「放射能の検査」

「放射能!?」

「うん、パパが大地震のときに買ったらしいんだけど……ほら、洞窟の奥に行くと、ゲームとかの電源が入らないって言ってたでしょ」

「う、うん……」

「もしかして、放射能かもって思ってね……」

「ま、マジかよ……」

「ぼくら、わりとしょっちゅう奥まで行ってるんだけど……」


 ぼくたちは青い顔をしてアリサを見つめる。

 アリサは、しばらく装置を睨んでいたが、フッと息を吐いて、


「心配なさそう。むしろ低いくらい」

「よかったー!」


 ホッとしたよ!


「じゃあ、電源が切れるのはどうしてなのかな……」

「わからんけど、大丈夫だよ。ダイチがいるから!」

「ん? ちょっと意味わかんない。ダイチがいるからなんなの?」


 う、アリサがぼくを呼び捨てにするのが、自然すぎる。

 ぼくが女子の名前を呼ぶときはあんなに不自然なのに……女子恐るべし。


「ダンジョンに入ったらわかるけど、ダイチさ、ダンジョンだとすげぇ頼りになるんだよ」

「そう! 真っ暗な中道に迷ってても、あっという間にここまで連れ帰ってくれるんだぜ」

「あんたたち一体何やってんの……」


 アリサが「洞窟で遭難した」と聞いて呆れた顔をする。

 そして疑わしそうにぼくの顔を覗き込んで、


「それにしても、へぇ……ダイチがねぇ……意外」


 うるさいな、ぼくだって意外だよ。

 と、カナちゃんがスススと寄ってきて、


「ダイチくん、あたしのこと守ってね?」


 ニッコリと笑ってくれた。

 おまかせ下さい!!

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