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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
1章 スケルトンとゴブリン
9/60

8 遺跡を抜けて

8話の追加分が長かったために、2話に分割。

主人公がこの場所にいた謎とゴブリン達についての考察を入れてみました。


 ホブゴブリンとの戦闘を終えた俺は、奴が守っていた通路を進む。

 通路を進むとまたしてもゴブリンに出くわした。

 またか……。本当にゴブリンばっかりだなここは……。

 面倒だなと思いつつも、俺はククリを構えてゴブリンと対峙しようとしたのだが……。

 何故かそのゴブリンは俺の姿を見た瞬間、慌てて一目散に逃げて行った。


 ……どういうことだ?

 今まで出会ったゴブリン達は、俺の姿を見ると襲ってきたのだが……。

 

 まぁ、襲ってこないかならば楽でいいか。

 そう思い、気にせず通路を進むことにする。


 だが、その後も通路で出会うゴブリン達は、俺の姿を見ると我先にと逃げる出すだけで襲ってくることは無かった。


 こうも恐れられると少し罪悪感のような物を感じてしまう。

 今まではゴブリン達も襲ってくるから俺も闘っていたのだが、こうも恐れて逃げる相手をいちいち追いかけてまで狩る気は無い。

 時間の無駄だしな。

 逃げているゴブリン達を眺めていると、ふとある事に気付いた。

 それは、この逃げているゴブリン達が今まで戦ったゴブリン達よりも比較的小さい者が多く、武器を持っていないという事だ。

 それで気付いた。

 多分、このゴブリン達は戦う事が出来ない子供や雌なのだ。


 そこで一つ。

 俺の中である疑問が浮かぶ。

 もしかして、ホブゴブリンがあの部屋から動かなかったのは、これが理由なのではないかと。


 今まで俺が戦った中で、あいつだけ強さが別格だった。

 このゴブリン達の長的な立場だったのは間違いないだろう。

 群れの長ならば、優先するのはなんだ?

 それは、当然種を絶やさないように雌と子供の安全確保だ。


 だが、それならば一つ疑問がある。

 なぜ遺跡の奥ではなく、入り口に近い場所に雌や子供を集めていたかだ。

 もしこの遺跡が彼らにとっての安全な場所ならば、子供や雌は外敵の少ない遺跡の奥へと隠すだろうしボスであるホブゴブリンも奥に陣取るのではないだろうか。


 なのにそうしなかった。

 理由は何か。

 それは、このゴブリン達もまだこの遺跡の内部を全て把握する事が出来てなかったからではないだろうか?


 俺が目覚めた部屋から、ホブゴブリンが居たあの場所までに出会ったゴブリンは、全て武器を持っているゴブリンだった。

 つまり、少なくとも戦う事が出来る者だ。 

 それも単体、もしくは数匹単位の小隊を組んだ武装したゴブリン達だ。

 それぞれが遺跡の内部に散らばっていたが、雌や子供は全て入り口に近いこの通路に集められている。

 そしてそれを守るようにしていたホブゴブリン……。


 これは、ホブゴブリンが雌や子供を守り、他の雄たちが、この遺跡の地形を調べていたって事じゃないか?

 

 うん。この考えは当たってるかもしれない。


 だが、仮に当たっていたならば、このゴブリン達が遺跡にやって来たのは、割と最近という話になるな。

 新しい住処としてふさわしいか調査していた所で俺と遭遇したって所か。


 ……いや。待てよ。

 もしそうなると、俺のこの体や周囲に存在していた死体達は……ゴブリンの仕業では無かったという事にならないか……? 

 そもそもちょっとLvが上がったスケルトンにも倒せるような相手だ。

 

 もし俺の考えがあってるなら、あの死体はたぶん皆冒険者だ。

 武器や回復薬のような物を持っていたし、魔法使いが使うような杖のような物もあった。

 最低でも魔物と戦う事を想定した装備を身に着けた人間って事になるよな。

 とうぜん、スケルトンやゴブリンよりも強いと思うんだ。


 俺も進化する前のノーマルスケルトンだったから分かる。

 仮に生前の自分が戦ったとしたら、走って逃げ切ったり、最悪戦う事も出来そうなくらいに、スケルトンの体の動きは悪かった。

 そして、ゴブリン自体も動きと攻撃力はそこそこだったが、武装した人間相手に戦って勝てるとはとても思えない強さだったからな。

 つまり等しくゴブリンやスケルトンは雑魚って事だ。

 

 あれ。自分で言っててなんか悲しくなってきた……。

 まぁいい。話を戻そう。


 それで問題なのは、この遺跡ではゴブリン以外の魔物なんて全く見なかったって事だ。

 数はそこそこ多かったが俺以外の魔物はゴブリンとホブゴブリンのみ。そして後は鼠や虫のような魔物とも呼べない小さな生き物だけだった。



 ならば、あの惨状はそもそも一体何者の仕業だったのか?


 魔物の仕業だったとしたら、そもそも死体に肉が残ってるのがおかしいよな。

 ゴブリン達からしたら貴重な食料なわけだし。

 比較的新しい死体もあった。

 腐敗の具合が違ったのは、誰かが集めたからか……?

 ならば、人為的な行為って事か?


 おいおい。

 ……なんだか色々とキナ臭くなってきたぞ。

 だが、もし何らかの人物の仕業だとしたら……。

 

 そいつが俺をこんな姿にしたって事になるのか?

 一体何故?

 何が目的だ?

 いや、仮に、俺のこの現状が、何者かによって人為的に仕組まれた物だとしたら、そいつには何の得がある?


 ダメだ。

 考え出したらキリが無い……。

 それに、これはまだ仮説の段階だ。

 これ以上は考えても、今は結論は出ないだろう。

 だが、いつかこの謎も解ける日が来るかもしれないな。


 とりあえず今考えるべきことは、この遺跡を抜けだす事だ。



 長く伸びる通路を俺は進み続ける。道中であったゴブリン達は、俺を避けるように脇にある細い脇道へと散らばって行く。

 逃げるゴブリン達を無視して、俺は更に真っ直ぐに進む。


 この通路の先に僅かに見えている、光に向かって。


 ふと……。

 小さな風の流れるような音が聞こえてきた。


 進むにつれて徐々に草木が風に擦れるような音もする。

 そして通路の先。

 そこから光が漏れている光がより強く感じる。

 間違いない。

 出口だ。



 長かった。

 本当に。


 ようやく俺は、この彷徨い歩いていた遺跡から出られる時が来たのだ。




 ――ここは……。

 森の中……だろうか?

 あっちこっちに草木が生い茂っているのが見える。


 周りを見回しても木々が広がるばかりでかなり薄暗い。

 木々の間から僅かに漏れている陽の光が、辺りを照らしている。


 俺はそっと振り返り、今まで彷徨っていた場所を見る。


 入り口の両脇には、崩れかけているが石造りの門があった。

 扉は開きっぱなしで、片側は完全に崩れている。。

 扉が嵌っている石柱には、ヒビが入り植物の蔦が疎らに巻き付いている。


 見た感じかなり古い遺跡だ。

 いや。ひょっとしたら、ダンジョンと呼ばれる物だったのかもしれないな……。


 まぁ、考えるのは後でも出来る事だな。


 それよりも、今は何時くらいだろうか?

 木々の隙間から僅かに見えた太陽。

 その位置的に、正午くらい……かもしれない。


 まぁ今が何月の何日かはさっぱり分からないんだが。

 そもそもあの遺跡擬きで、俺はどれくらい彷徨ってたのか分からない。



 ああ。それにしても、久しぶりに浴びる日光はいいな。

 やっぱ人間偶には陽の光を浴びないとな。

 なんだが無性に懐かしさを覚えるよ。


 あれ。そういえば俺……。

 今は一応アンデットなんだが、日光浴びても平気なのか?


 今更ながらそんな事を思ったが、特に陽光を浴びても体に変化は無い。

 どやうら問題ないみたいだ。

 とりあえず一安心だな。


 せっかく外に出られたのに、陽の光を浴びた瞬間に昇天なんてマジで笑えないからな……。



 さて、無事に遺跡から出られた。それは大変喜ばしい事だ。

 だが、問題はこれからだ。


 今までは、とりあえず外には出る事だけを考えて進んでたからな。

 ここから先の事は完全にノープランなのだ。


 どうすっかな……。 


 そうだな。手始めにこの森を抜けてみるか。

 

 おっと。

 進む前にステータスを確認しとくか。

 多分、この森にも魔物はいるだろうし、自分の状態の把握は必要だろう。



[種族] スカルウォーカー

[状態]  通常

[ランク]  D

[Lv]   7/20

[HP]   94/94

[MP]   4/55

[攻撃]   50

[防御]   56

[魔法攻撃] 30

[魔法防御] 29

[素早さ]  70

[所持スキル] 

 剣術Lv1 短剣術Lv1 忍び足 生命探知 

 夜目 投擲Lv1 毒無効 ステータス閲覧

[付与スキル]

 エンチャント風 



 おー。結構能力上がってるな。

 今のこのステータスならば、森の中の探索もある程度はいけるかな。


 スキルに忍び足があるから隠密行動はお手の物だし、索敵に使える生命探知もある。

 もしも、危険そうな奴がいたら、すぐ逃げれるように準備だけはしておけばなんとかなるだろう。


 あとは注意しないといけない事は、人間に姿を見られないようにする事だろうな……。


 なにせ、今の俺はスカルウォーカーだ。

 もし人間に見つかった場合、間違いなく逃げるか襲ってくるかのどちらかだと思う。

 だってアンデッドだしなぁ……。


 もし喋る事が可能な体だったら、会話によって敵じゃないって事を証明できたかもしれないが、当然それも無理だし……。

 そもそも、仮に喋れたとしても、突然目の光てるスケルトンが話しかけて来たらどう思う?

 俺だったら普通に怖いわ。

 小さなお子さんが見たら絶対泣くぞ。トラウマ待ったなしだ。


 結局喋れようが喋れまいが、どう頑張っても今の俺の姿では、人間との良質な関係を築くのが絶望的だと言う事だよ。


 俺だって心は人間のつもりなんだがな……。

 変に人間だった時の知識や記憶があるせいで、完全な魔物と違って人間と戦うっていう選択肢は今の所無いな。

 まぁ、仮に悪意を持って襲われた時なんかは、当然反撃すると思うが……。

 不殺を貫いてそれで自分が死んだら笑えないしな。

 極力やりたくないってだけだ。

 しかし、最初は魔物と戦うかもってだけで不安だった俺がこんな考えになるとはな……。

 我ながら逞しくなったもんだよ……。


 まぁ、あんまり騒ぎになると余計目をつけられそうだし、実際は可能な限り戦うよりも逃走を優先した方が無難だろうな。

 なので、もし人間に見つかった時は、先ずは全力で逃げる事にしよう。

 幸いここは薄暗い森の中だ。

 身も隠しやすそうだし、俺の素早さなら人間の追跡を振り切る事も可能だろう。

 忍び足や生命探知もあるからね。


 よし。

 人間に出会った時の方針も無事に決まった事だし、そろそろ行くか。

 まずは……そうだな。

 太陽の位置からみて東に進んでみるとするか。

これにて1章終了となります。

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