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スケルトンの冒険者 異世界生活記 ~人化の術で冒険者やってます~  作者: 肉巻きおにぎり
4章 スケルトンの冒険者(Cランク)
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58 紅蜥蜴の迷宮

本日2話目の話です。



 暗く長い迷宮の通路を、俺達は並ん進んでは、時折別れ道や小部屋を抜けてはまた通路へと歩く。

 そうやって進み続けていると、不意に視界が開けて、長く広い一本の通路へと出た。

 この広い通路では、今まで俺達が進んできた道と異なり、今も多くの冒険者達が行き来している。

 進んでいる冒険者達は、装備している武器は様々なのだが、誰もが一つだけ共通して装備している物がある。

 それは、頭まですっぽと覆えるフード付きの赤い外套。


 アレは、前に俺が立川から貰った、火蜥蜴の外套と同じ物だ。


 この紅蜥蜴の迷宮に挑む冒険者にとって必需品であり、ギルドで聞いた話によると、このライムダールの冒険者相手に、最も売れている品だという。


 火蜥蜴の外套によって、統一された赤い一団は、他の通路や小部屋には見向きもせずに、ひたすら奥にある下層への階段を目指して進んでいく。


 それも当然だ。

 何せ、彼らの目的地は、ここより更に2つ下の階層である4層だからだ。

 彼等の主な獲物は、炎の攻撃を得意とする魔物であり、それらから得られる、火属性の魔石や素材を集める事にある。

 そして、この紅蜥蜴の迷宮に挑む冒険者の8割は、これらの素材を集めるために潜り続けていると言っても過言ではない。


 その理由は単純で、金になるからだ。


 この紅蜥蜴の迷宮とは、その名の通り、火蜥蜴(サラマンダー)などの、炎の攻撃を得意とする魔物が多く出現するダンジョンだ。

 そして、この下の階層、4階層から出現する魔物が、Cランクの火蜥蜴(サラマンダー)火炎鳥(バーナー・バード)だ。この2種類の魔物は、主に炎のブレスや火炎玉(ファイヤー・ボール)等の低級の炎魔法による攻撃を得意としており、火蜥蜴の外套のような、炎に耐性がある装備を持たずに戦うと、非常に厄介な存在となる魔物ばかりだ。

 だが、逆に、それしか特徴が無い魔物とも言えるので、炎系の攻撃さえ対策してしまえば、強さ的には精々Dランク上位レベル位である。

 なので、極端な話だが、火蜥蜴の外套で防御を固めたパーティで、囲んで戦えば、安定して狩る事が可能なのだ。

 しかも、その必需品である火蜥蜴の外套の素材こそが、火蜥蜴(サラマンダー)の皮と鱗、火炎鳥(バーナー・バード)の羽毛が主な物であるため、これらの魔物を狩り続け、素材がギルドに大量に入荷されたとしても、火蜥蜴の外套の需要が高いため、常に品薄である現在、未だに値崩れは起こっていないというから驚きだ。

 更に、火蜥蜴(サラマンダー)火炎鳥(バーナー・バード)からは炎の魔石も得られる。

 この魔石は、ドワーフをはじめとする各国の鍛冶職人達はもちろん、魔術師ギルドの研究者達等からの需要も高いらしく、ライムダールは、キグナス王国の中で最も炎の魔石を流通させている。

 実際、その利益は街にとっても無くてはならない物であるため、紅蜥蜴の迷宮は、この街にとっても切り離せない存在なのだ。


 まぁ、そのような理由のために、この紅蜥蜴の迷宮で魔物を狩れる腕があれば、多少無理をしてでも、人数分の火蜥蜴の外套を手に入れさえすれば、元を取り戻すのは結構容易い。


 Cランクに上がりたての者は、揃って冒険者ギルドや商業ギルドに借金をし、そこで得た資金を使い火蜥蜴の外套を人数分手に入れようとする。

 ただ、迷宮専門店で取り扱っている火蜥蜴の外套の数は、冒険者の数に対してまったく追いついていないため、メンバー全員分を揃えるとなるのは、かなり大変な事だ。


 そもそも、この火蜥蜴の外套というのは、火蜥蜴(サラマンダー)の皮と鱗、火炎鳥(バーナー・バード)の羽毛を、錬金術が作り出した薬品による加工を施してから、はじめて出来る物だ。

 だが、火蜥蜴の外套は炎に対しては非常に強いが、斬撃や打撃などには耐性が皆無と言っていいほどで、炎以外の属性にも非常に弱い。

 当然火蜥蜴(サラマンダー)火炎鳥(バーナー・バード)には、鋭い牙や爪、嘴による攻撃もあり、時には不意の一撃や、ダンジョンに仕掛けられた罠による物など、そうした原因で外套が破れてしまう事も十分にあり得る。

 そして、錬金術で作り出された薬品の効果も有限というのが痛い。

 例え、用心していたとしても、数年もしたら火蜥蜴の外套の加工に使われている薬品の効力が弱まっていき、炎に強いという特性が無くなってしまうのだ。


 なお、俺の場合は、魔法の袋に入れていれば、この薬品の期限切れの問題はあまり気にしなくてもいいんだが、そもそも魔法の袋を所持できる冒険者の数はかなり少ない。


 つまり、順当に迷宮で利益を上げ続けたければ、定期的に新しい火蜥蜴の外套を手に入れておく必要があるため、店に出た火蜥蜴の外套はすぐに売れてしまうのだ。


 ちなみに、こうした定期的な維持費がけっこう馬鹿にならないために、Cランクの間では美味しい稼ぎ場であっても、一つ上のBランクに昇格したとなると、その限りでもなくなる。。

 Bランクになれば、一回の依頼で最低でも金貨十数枚の仕事だって十分あり得るし、別の街が管理している、更なる高難度のダンジョンに挑むことだって可能だからだ。


 なので、この迷宮に挑む者は9割がCランクで、のこり1割は、更に下層に出現する魔物の素材を狙ったBランク冒険者が少数だ。

 だが、BランクとCランクの間の壁はなかなかに高く、このライムダールにいる冒険者の殆どはDとCランクで固まっているのだ。


 そのため、最終的に冒険者が行き着く場所は、この紅蜥蜴の迷宮であり、迷宮に挑む者が絶えない限りは、火蜥蜴の外套は、街の冒険者にとって必需品であり続けるだろう。




 ただ、この迷宮に冒険者が集まりすぎているため、ライムダールではある一つの問題も抱えている。


 それは、一部の者を除き、大抵のCランクの冒険者は、利益が大きいこの迷宮に籠り切りなってしまう為に、Cランクの適正依頼を受ける冒険者の数が減り続けているのだ。

 本来Cランクは、冒険者として見習いを卒業し、やっと様々な種類の依頼を受けれるようになる頃である。

 だが、それらの依頼で得られる報酬よりも、紅蜥蜴の迷宮で得られる素材の額が上回ってしまっているため、冒険者からすると、どうしても魅力が感じられないのだ。


 だが、周囲の街へ荷を運ぶ商人の護衛依頼、近隣の魔物討伐依頼、一部薬草等の採取依頼等、どれも街にとっても必要な依頼は数多く存在し、危険度の関係で迷宮に入れないDランクでは変わりが務まるはずもなく、結果、圧倒的にこれらの依頼を受ける冒険者が不足しているとの事なのだ。


 一応、対策として、商人の護衛は、ギルドが依頼料を増すことによっ、Bランクの冒険者パーティに指名依頼を出したりする事もあるらしいが、その程度で解決できる程、ギルドに舞い込む依頼の数は少なくない。


 しかし、だからと言って紅蜥蜴の迷宮に潜るのをギルドから止めるように言えば、冒険者達は間違いなく反発するし、紅蜥蜴の迷宮は、街の経済の一部を担っている大事な部分であるのだ。


 今も、魔石は飛ぶように各地に売れて行き、今やこのライムダールを支える上で切り離せない物となっているのだ。

 故に、ライムダールでは、需要が高い火の魔石を安定して得るためにも、こうした依頼が滞るのも必要な事だと割り切られているらしい。


 ギルドとしても、この現状はどうにか解決したい問題ではあるのだが、迷宮に挑む冒険者達に、なんとか他の依頼も引き受けてくれないかと、時たま受付嬢達による説得が行われているらしいが、今のところ効果は出て無いらしい。


 そして、今回俺達が引き受けた、このインプの討伐依頼も、そうした理由があったために、未解決の状態が続いていたの物だという。

 この依頼を受ける事にした経緯は、ウォルターさんが、Cランクの昇格と同時に、例の身分保障の件を俺達のパーティ全員に許可を出してもらい、その変わり、どうにかこれらの放置されている依頼を解決するのを手伝って貰えないかと頼まれたことが原因なのだ。


 別に俺達としては、特に問題も無かったし、こうした依頼を解決するだけで、ギルドに恩を売れるのは悪くない。

 それに、依頼の話を聞かせてくれと話したときに、ようやく真面に仕事を引き受けてくれる冒険者が来たと、ルミナが嬉しくて泣きついてきたので、話を聞いた後に断れなかったのもあるが……。


 今回の依頼であるインプは、確認されている数はたった2匹であるにも関わらず、討伐報酬はなんと金貨2枚だ。

 インプの討伐でこの価格は、かなりの破格の条件だ。


 しかも、被害者の遺留品が見つかる可能性があり、もし見つけたら、もそれらも俺達が持ち帰ってもいい事になっていた。


 だが、こんな普通なら取り合いになりそうな好条件の依頼にも拘わらず、このインプの討伐依頼を受ける者は、俺達を除いて今まで誰もいなかったという。


 その理由は、ダンジョン内の隠れているインプを探し出す時間があれば、その時間を使って下層に降り、火蜥蜴を狩る方が楽であり収入も大きいからだと言う。

 そして、インプの仕掛けた罠によって、万が一商売道具である火蜥蜴の外套が傷つきでもしたら、大損だからとも。


 ここまでの条件でも断られていたのだから、ギルドとしても本当に困っていたのだろう。

 まぁ、俺達には、人が訪れない階層での討伐依頼という事で、都合がいい事だらけなんだけどな。


 ◆


「はぁ、どいつもこいつも、今日も火蜥蜴(サラマンダー)狩りに忙しそうだな」

「それを目的にこの街に冒険者になりに来る人が多いからね。この迷宮が存在する限りは、この流れは変わらないと思うわ」

「確かに稼げるんだろうが、それはもう冒険者っていうと疑問が残るよな……」

「そだね。そういえば、前に聞いたことがあるけど、一つのダンジョンに籠って活動する冒険者が多いのは、ダンジョンを近くに持つ街の共通の悩みなんだってさ」

「他にもこういった問題がある場所があるのか……。ギルドやその街は何か言ったりしないのか?」

「それが、そうでもないの。実際にそうした人が籠る迷宮には、街やギルドにとっても非常に大きな利益を生む物だから、強く言えないんだって」

「ああ。強く言いすぎて、実際にダンジョンから取れるであろう素材が減ったら意味がないからか。ギルドも金は必要だろうし、悩みの種ではあるが、これといった解決策はまず無いだろうな。冒険者も楽に儲けられるならそれに越した事は無いだろが、こうした仕事が溜まっていくってのは、やっぱりなんとかしないといけないと思うがな」


 そんな会話をしつつ歩く俺達を、時折すれ違う冒険者達は、物珍しそうな視線をして見つめてくる。

 いや、正確には違うな。

 俺達というよりも視線の向かう先は間違いなく、シルビアだ。


 今更だが、現在シルビアは、フードを被っていないのだ。


 いつものフード付きの外套は装備しておらず、代わりに首には、銀色に輝くメダルが一つかけられている。

 これは、ギルドからの身分証明の証である、鳥と剣の紋章が刻まれた物だ。

 これを身に着けているだけで、余程大きな力を持った貴族や、商人でもなければ、今のシルビアに手は出せないという。

 もし、何らかの犯罪行為に巻き込まれて、その関与が発覚したら、王家とギルドの契約によってその貴族の爵位剥奪や、犯罪奴隷落ちなんかもありえるという事で、思ったよりもかなりの効力があるみたいだ。

 他にも、それ以外の効果としては、街や国を移動するときの関税を免除してもらえたり、ギルドと提携している商会などで割引価格で買い物ができたりだろうか。

 どれも、非常に助かるものである。

 もうしばらく冒険者としての経験を積んだら、他の国にも行ってみたりするのもいいかもしれない。



 まぁ、要するに、このメダルがある限り、エルフであるシルビアは、こうして堂々と人の目を気にしなくても歩けるという事だ。

 今までは、厄介な輩に目を付けられるために、フードを深々と被って極力一人で行動する事もなく、過ごし続けてきたのだ。

 それが、どれだけの事かは、想像に難しくない。


 なので、こうして人の目を気にせずに色々な場所に行けるようになったのは、彼女にとって何よりも嬉しい事なのだろう。


 実際、初めてこのメダルを貰った時なんか凄かった。

 終始ニコニコと、笑顔のシルビアに手を引かれ、ライムダールの街中を散々連れまわされた。


 キグナス王国でもエルフの数は少なく、大半が貴族に買われた奴隷か、一時的に流れで立ち寄った冒険者かのどちらかを王都では偶に見る可能性があるらしいが、キグナス王国でも辺境に位置するこのライムダールでは、街中で、エルフを見る機会なんかそうそう無い。

 なので、住民達からしたら、シルビアの姿はとても目立ったようだ。


 シルビアは、すれ違う人に毎回、注目される事に対して「やっぱり耳くらいは帽子でも被って隠すべきかな?」

 なんて言っていたが、最も目立つ理由は、エルフの特徴的な耳よりも、シルビアのその整った容姿による影響だと思う。


 実際、シルビアは美少女だと断言できる。


 金に煌めく長い髪と、その深い蒼の瞳は、特に性別を問わず他者を惹きつける魅力があると思う。

 まぁ、おかげさまでシルビアの隣を歩く俺に対しては、常に嫉妬のためか殺意すら籠った視線を頻繁に感じたりもする。

 ちなみに今、現在もかなり感じてたりする。


 これは、気にしても仕方ないので、全て無視した。


 俺達は、他の冒険者のパーティとは逆に進みつつ、通路の端にある階段を昇る。

 購入していたこの迷宮の地図を時折確認しては、入り口へ向かって歩き続ける。

 幾度の道を曲がり、進み続けてようやく上へと上がる階段の前まで来た。

 この階段を昇れば、ようやくこの紅蜥蜴の迷宮の入り口へと出た。



 紅蜥蜴の迷宮は、ライムダールの北東に位置する小高い山の中腹あたりに存在し、洞窟の中にある。

 驚くべきことに、この洞窟はそもそもは昔の炭鉱跡だという。

 当時、この鉱山にて発掘中の炭鉱夫達が、土に埋まっていた、この遺跡の一部を発見した事がすべての始まりだという。

 紅蜥蜴の迷宮が発見されたのは、もう10年近く前らしい。


 松明が、一定感覚で壁に配置され、更に崩落等が起きないように、しっかりと土魔法を使って補強された洞窟内を進み、ゆっくりと外へと出る。


 暗い洞窟の中から外に出ることで、日の光によって一瞬眼が眩む。

 だが、それもすぐに慣れた。


 広がる視界には、洞窟の外の景色。

 洞窟の周りを、何人もの魔術師による土魔法によって、切り開かれ整備されたこの場所には、今も多くの人の行きかう姿が見える。


 この迷宮の近くには、冒険者達の為に、ギルドの建てた数件の山小屋のような酒場付きの宿。

 そして冒険者達をターゲットにした多くの行商人達の出店の数々。

 更には、ライムダールとの移動を補助するための、専用の乗り合い馬車等も用意されている。

 ちょっとした街の市場よりもここは賑やかなのではないだろうか?


「相変わらず、外も凄い賑わいだな。あそこなんか、また新しい出店増えてるぞ?」

「本当、人の集まる場所に商人有りね」

「あっ! 2人共見て見て! もうすぐ馬車が出るっぽいよ! 早くしないと乗り過ごしちゃう!」

「おっと。そりゃまずい。乗り過ごしたら次はいつ戻ってくるか……。しゃーない。走るぞ2人共! 急げマシロ!」

「シャッ!」


 そう言って走り出した俺と、ふわりと宙に舞い、空中を泳ぐようについてくるマシロを、シルビア達が慌てて追いかける。


「あっ! ちょ、待ってっば! ってか速っ!?」

「ちょ、私魔術師なのよ? 走るのは勘弁してほしいんだけど!」


 その後、皆して走ったことで、何とか飛び込むようにして乗り合い馬車に乗れた俺達は、ガタゴトと酷く揺れる山道を馬車によって運ばれて、数時間後にようやくライムダールへと帰り着いたのだった。

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