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幕間4の5

実はこの作品の更新を停止する前に保存していた続きです。何故投稿しなかったのか理由は思い出せないですが、、、。


正直まだ既存の投稿の手直しもままならないのに投稿して良いものか悩みましたが、思い入れのある作品ですので、ちゃんと手直しして新たにウィルとギルの物語を作って行けたらいいなという意思表示も込めて投稿したします。


楽しんで頂けたなら幸いです。

どのくらい時間がたったのだろう、縦穴に落ちたギルは己の頬に当たる水滴の感覚で意識を取り戻した。


ぼうっとする頭を無理やり起こし、周囲へと目を凝らす。


松明も消え、穴の中に落ちたというのに辺りは不思議と明るい。どうやら壁に張り付いた苔が発光しているようだ。


時折穏やかな明滅を繰り返し、どこまで広がっているかわからない洞窟内を優しく照らし出していた。


また一雫、ギルの額に水滴がぶつかった。天井から落ちるそれは時間をかけて雫を作り上げてはやがて重みに耐えきれず地面へと落ちている。


途方もない時間の賜物たまものだろう、そのしすの通りである部分には丸みを帯びた鍾乳石が姿を連ねていた。


連ねているというのは、それが一箇所ではないからだ。

徐々にはっきりしていくギルの視界には、幻想的に光る天井と壁面、そして荘厳さと暖かさをもった鍾乳石が映り込んでいた。




立ち上がろうとしたギルは、ふと自分の身体に重みを感じた。目をやるとあどけなく目を閉じたキュールが腰の上に乗っかり、安らかな吐息を立てていた。


ギルが落下の時にとっさに身体へと引き寄せたのだが、どうやら無事だったらしい。


自然と安堵の息を漏らしたギルは穏やかな表情で未だ目を覚ます様子のないキュールの頭を優しく撫でた。

さらさらと指の隙間から彼の髪がこぼれる。


ん、という心地よさそうな声でキュールは身じろぎする。ギルは再び頭を撫でると、彼のの肩を揺すった。


「キュール、大丈夫か? おい、キュール。起きろ」


二度ほど呼びかけたところで、キュールのまぶたが徐々に上がっていった。ギルと目が合うが、まだ焦点の合っていない様子から、どうやらはっきりとは目覚めていないらしい。


もう一度呼びかけるか、ギルがそう思ったところでキュールは寝坊した人さながらの様子で突然ばっと、身を起こした。


周囲をせわしなく二度、三度ほど見回し、そして正面にいるギルと目が合った。


「目が覚めたか、キュール」

「ギル様!」


口の端を吊り上げたギルをみてキュールは瞳を輝かせた。


「無事だったんですね!というか、あれ? 僕は確か勢い余って縦穴に落ちたような……そう!落ちたんですよ!!てことはここがその先?」


記憶を辿っていたキュールは思い出した、という様子で手を鳴らした。もう一度、周囲に目をやる。


「そうだ。そして俺はお前を追って飛び込み、ここにいるってわけだな」


「なるほど。それにしてもここは……まさかこんな風になっているなんて……」

「それよりも、キュール」


思考の海に飛び込もうとするキュールをギルはさえぎった。


「なんでしょう、ギル様」


名前を呼ばれたキュールは、どうした?といった表情で首を傾げた。その姿は見るものにとってはたまらなく可愛らしく映る姿だった。


「そろそろ、俺の上からどいてくれないか。辺りを調べたいんだ」


「っ!!」


ギルの言葉を聞いた途端、キュールの顔は一瞬で茹で上がったたこのように紅くなった。

やや俯きがちにゆっくりとギルの身体から降りると、今度は目にも止まらぬ速さで壁面へと走りだした。


しばらく壁と会話しているような姿勢だったが、今度は言葉にならない声をあげて己の頭を掻きむしっている。


すると今度は、再びがくりと肩を落とし、苔が額につくのも気にせず、壁面にもたれかかった。


「お、おい。キュール?」


急変し続ける友人の様子に戸惑いを隠せないギルはじっと動かないその背中に恐る恐る近づいた。


返事はない。


「おい、キュー……」


ギルの伸ばされた手がその肩に触れようとしたその時、キュールは勢いよく身を翻し、ギルの方を向いた。


その瞳は暗く、まるで物語に登場する幽鬼さながらだった。


「ギル様、ギル様は、ずるいです」


普段見せない友人のその迫力に、神経の太いギルも思わず気圧されてしまう。


「な……ずるい?俺が、か?」


ようやっとのことで絞り出した己の声が想像以上にしわがれている、とギルは感じた。

同時に、喉が渇いた、とも。


「いえ、ギル様がずるいのではなくて、いやずるいんですが、でも、その、ああもう!! とにかくギル様はずるいんです!!」


「す、すまん」


一息に話したキュールは肩を大きく上下させて興奮を露わにしていた。

相変わらず、その頬は紅く染まっている。


しかし、気をとりなおそうと、キュールは大きく深呼吸した。

実際いつまでもこのやり取りを続けるわけにはいかない、と今になってようやく気付いたのだ。


地図も使えない場所で、出口もわからない。

今が一体何時なのかも、わかっていないのだ。時間を無駄にはしていられなかった。


「んん!と、とにかく、このままこうしていても仕方がありませんから、先へ進みましょう!」


わざとらしく咳払いをしたキュールは、さっさと歩き出してしまった。


何が何だかわからないギルだったが、とりあえず気にしなくていいと思ったのだろう。

キュールの後を追い、洞窟内を進んでいくのだった。

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