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イノセント・アライブ ~命の選択と荒ぶる息吹~  作者: 沙φ亜竜
第3章 ゆったりまったり幸せ気分
22/42

-☆-

「はい、息吹ちゃん、あ~ん」

「あ~ん!」


 わたしはお母さんが指でつまんで目の前に差し出したそれに、勢いよくかぶりつく。


 ぱくっ。

 かぶりついた瞬間、


 パリッ!


 と心地よい響きが奏でられる。

 破片が周囲に散らばってしまいそうではあるけど。

 そんな細かいことを気にするのは、無粋ってものだ。


 口の中に引き入れたそれを、わたしはまだ小さかったはずの歯で細かく噛み砕く。

 そのたびに、パリパリパリッと音が鳴る。


「ポテチって、パリパリおとがして、とってもおいしい~!」

「うふふ、よかったわね~」


 わたしが満面の笑みを浮かべると、お母さんも同じように笑顔になる。


「それじゃ、わたしも……」


 パリッ。

 お母さんもひとつポテチをつまむと、小さく口を開けて上品くわえる。


「あん、おかあさん、わたしのぶんが、へっちゃう~」

「うふふ、ごめんなさい。でも、少しくらい、いいじゃないの。ね? お母さんにも、ちょうだい?」

「う~……。うん、わかった。でも、ちょっとだけだよ?」

「うふふ、ありがとう」


 他愛ない、おやつどきの会話。


「でも、こんなものを食べさせてもいいのかい? 吐息だって、お屋敷では絶対に食べさせてもらえなかっただろう?」


 笑顔が咲き乱れるわたしとお母さんに、真面目な顔で水を差すような言葉を放ったのは、お父さんだった。

 休日だったから、お父さんも一緒におやつの時間を楽しんでいたのだ。


「そりゃあ、ぼくたちのことは正式に認められていないけど、でもキミはあのお屋敷のひとり娘で……」


 少し寂しそうな表情を隠すようにうつむきながら、お父さんはそう続けた。


爽時(そうじ)さん……。そんなことをおっしゃらないで。わたしはあなたの妻ですわ」


 お母さんは温かい笑顔で、お父さんを包み込む。


「こういう普通の生活ができて、わたしはとても幸せなんですよ」


 とっても、いい雰囲気だな。

 幼いわたしにも、その温かな空気はしっかりと感じられた。


「おとうさんとおかあさん、らぶらぶ~。ちゅーは、しないの~?」


 ふたりの様子を眺めていたわたしの言葉に、お父さんもようやく笑顔をこぼす。


「まぁ、この子ったら、おませさんね」


 お母さんの笑顔も、よりいっそう大きな花を咲かせる。

 温かな家庭の温かな笑い声は、いつまでもいつまでも消えることはないと、そう信じて疑わなかった。


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