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第四十一話 アンサラー

 「うおー!!!」

 アキタ、グランベル、ジョエストの三人は有りったけの力で巨大魔獣を倒しに掛かる。

 ジョエストの仕掛けた穴に引っ掛かり転倒した巨大魔獣は魔獣を生み出すことは無くなったがその身体からは未だにミストが噴き出している。

 「くそぉ、効いてんのか分かんねえな」

 アキタは石棒で巨大魔獣を叩き続けるが、巨体には石の礫程度の様に感じる。肉を抉り裂いてはいるが薄皮を剥いでいる気分だ。

 そんな中、ジョエストの様子に変化が現れる。

 「おらっ、クソが!」

 「た、隊長? らしくない口調すよ?」

 「あぉん? 気ィ散らしてんじゃねえぞ? ぶっ殺すぞ?」

 明らかにジョエストの様子がおかしい。

 「凄まれてもなぁ、ツルツルムチムチだし全然怖くない……」

 「舐めてんのかぁコラぁ!」

 ジョエストの拳がアキタへと向かう。ジョエストは今回聖魔門調査目的での出動だったため、装備など無くほぼ丸腰なのだ。その拳に当たれば爆炸魔法(マグナ・ムリズ)が炸裂する。

 「うぁわ!」

 アキタは咄嗟に避けるもジョエストの手は止まらない。

 「なんだよもう!」

 理由もわからず攻められるアキタは手を出すに出せない。ジョエストに押されて徐々に魔獣から離れて行くが、その間にも巨大魔獣は起き上がろうとしている。

 「ジョエスト!」

 グランベルがジョエストの鳩尾を柄で突く。堪らず背中を丸めるジョエスト。

 「ミストに当てられたんだ。このミストの中で装備が貧弱過ぎる。何故だか知らんがミストには人の悪感情を増幅する力があるんだ」

 「にしても……」

 「縛って退避させよう」

 グランベルが何処からとも無く紐を取り出す。

 「こういう事も有ろうかと持ってたんだ」

 「どういう事なんすか」

 「い、痛いぞ、ファラ……」

 「そ、その名を言うな!」

 グランベルがたじろぐ一瞬の隙に逃れようとするもジョエストは羽交い締めにされる。ある程度魔獣から距離をとってジョエストを縛り上げている間、アキタは起き上がろうとしている巨大魔獣を見上げて呆けていた。魔獣達は門の方へしか意識が向いていないのかアキタたちを意に介していないようだ。

 「俺もデカけりゃなぁ……」

 その横ではグランベルとジョエストが揉み合っている。

 「くそ、なんでこんなにツルツルしてるんだ! 油でも塗っているのか?!」

 「離せー!」

 「あ!」

 ジョエストはグランベルが傍らには刺し立てていたフラガラッハを蹴り飛ばす。

 「ん?」

 アキタは自身の足元に転がってきたフラガラッハを徐に拾い上げる。

 「あ! アキタ、頭をカラにしろ!」

 「え? え、えあえ?」

 アキタがフラガラッハを拾った瞬間、グランベルが叫ぶ。その声で驚くアキタの足元が突然盛り上がり、ぐんぐん空へと伸びてゆく。

 「その剣は、フラガラッハは、またの名を答える者(アンサラー)! 持ち主の想像をエーテルを吸収して実現、具現化する特遺物だ! 何も考えるな! エーテルを吸い付くされるぞ! 早く手を離せ!」

 「そ、そんなこと言っても……」

 アキタは困惑する、しかし、

 「考えた事が実現するなら……。グランベルさん! 少し借ります!」

 「あ、アキタ?!」

 「うおー!!」

 アキタは雄叫びを上げフラガラッハを足元に突き立てる。するとフラガラッハから光が溢れ突き立てた地面が形を変え何かを模っていく。

 「アイツを……、倒せる程強く大きく……」

 アキタは目を瞑り強く想像する。それに応える様に山のように盛り上がったアキタの足元は彼の立つ足場を残して崩れ二つの巨大な柱が現れる。その野太い二本の土塊で出来た柱の上、足場から土が一気に展開しアキタを包み込む様に覆い被さるとモリモリと肉付けされて腕が生え頭が飛び出て粗雑な土人形が出来上がる。土人形はアキタが構えていた様に仁王立ちで前に突き立てた石棒に両掌を載せた姿勢を取ると足元からバリバリと土が剥がれ、中から精巧に彫刻された巨大な騎士鎧が現れる。そして石棒の中からは鋭利な長剣が姿を現し、全てが露わになると土色だった全体が胴を中心に金色へと流れる様に変化する。そして何故か背面にマント上の幕が展開されたその姿はどことなく全身防護型防魔装具(マクシミリアン)を彷彿とさせるものがあった。

 「なんだ……、それは……! アキタ」

 グランベルはソレを仰ぎ見て叫ぶ。

 「グランベルさん! アイツを倒せるヤツをイメージしてみました! 行きます!」

 中のアキタが操っているのか、黄金の巨大騎士は飛び退き魔獣との間合いを取ると共にグランベル達から離れる。その大きさは巨大魔獣と同じ程に巨大だが、鈍重では無く機敏さが溢れている。

 「く、悔しいくらいに格好いいな……」

 その巨大騎士はグランベルの琴線に触れる造形だった。

 「アキタ! これはムラクにとっての最後の戦いだ! コイツにここを抜けられたらもう後は破滅しかない!」

 「分かってます!」

 「よし! アキタ! お前が! 対魔獣の最終防衛ライン! だ! ここから先へは絶対に行かせるな!」

 「最終、防衛ライン……。う、うおー!!!! 燃えるぜ! やってやる! 一騎当千! 見ていてくださいグランベルさん!!!!」

 「ふ、頼んだぞ、アキタ」

 「むぐぅー!」

 「動くな気持ち悪い!」

 グランベルはジョエストを羽交い締めする腕につい力が入ってしまった。

 「きゅ」

 と発してジョエストは動かなくなってしまった。

 「……」

 グランベルはジョエストをそっと地面に寝かす。

 

 そうこうしている間に巨大魔獣も立ち上がりアキタの方を見据える。

 「行くぞ!」

 アキタは、いや巨大騎士は大地を蹴り地響きを轟かせながら魔獣へ突撃する。対する魔獣も巨大騎士を敵と認識したのか腕を大きく振り上げ巨大騎士へ振り降ろす。


 今、巨大な二体による最後の戦いの幕が切って落とされた。

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