空の上、大ピンチ3
「どうする……」
今目立つわけにはいかない。
しかし目の前で人が殺されそうになっているのに、無視もできない。
「‘うう……くっ……’」
くってかかった男の顔が青くなっていく。
他に助けるような様子の人はおらず、トモナリはサントリとディーニに視線を送る。
今なら相手は男一人。
うまく制圧できれば仲間にバレない可能性が高い。
その後どうするのだという疑問はひとまず置いといて人命優先である。
「‘おい、何遊んでる?’」
トモナリたちが動こうとした時だった。
男の仲間がファーストクラスの方にやってきてしまった。
「‘ふん、大人しくしておけ’」
ハイジャックの男はため息をつくと、食ってかかった男を座席に投げ捨てる。
食ってかかった男は激しく咳き込んでいる。
咳き込んでいるなら少なくとも死んではいない。
トモナリはほっと胸を撫で下ろす。
ハイジャックの男たちはボソボソと何かを話している。
後から来た男の方が残って、最初の男はまた操縦室に向かっていった。
飛行機が大きく傾いたことで、進路が変わったことはトモナリにもはっきり分かった。
周りに何もない空の上じゃどこに向かっているのか判然としない。
ただUターンレベルで飛行機の方向が変わったように感じられた。
「あーあ、飛行機ってのも厄介だよな……」
トモナリはため息をついてしまう。
戦おうにも飛行機の上で本気を出すわけにはいかない。
壁に穴でも空いてしまえば飛行機は不安定になるだろう。
下手すると簡単に墜落してしまう。
最悪の場合、トモナリは飛べるからいいかもしれない。
だが、乗客を助けようと戦った結果、飛行機が墜落なんてことになったら笑い話にはならない。
以前バスを何とか崖の落下から助けたことがあるけれど、あの時もギリギリだった。
飛行機が墜落したらトモナリにできるのは逃げることだけである。
機内も戦うには狭いし、戦うのに全く適した場所ではない。
「どうする?」
監視の男が離れたのを確認してサントリがトモナリに話しかける。
「今は動けない」
サントリが暴れたら飛行機は大爆発だろう。
「少なくとも今のところ俺たちを殺すつもりはないようだから……状況を見守るしかないな」
飛行機が方向を変えた。
つまりはどこかに向かおうとしている。
「動きを起こすなら外だ。どこかに着陸してから周りの様子を見て臨機応変に動くしかない」
飛行機は永遠に飛んでいられるわけじゃない。
国際線で長距離を飛ぶので飛行できる時間は長いが、燃料の限界はあるのでそのうちどこかに止まらねばならない。
ガソリンスタンドでもあるまいし、目的地以外どこかに立ち寄ることもないだろう。
「んで……ヒカリは何してんだ?」
「ふっふぅ〜秘密兵器となるべく隠れてるのだ!」
ヒカリはトモナリのところにあるブランケットの中にいた。
どうにもヒカリのことは注目されていない。
バレているのか、バレていないのかは知らないが、もしかしたら切り札にはなるかもしれない。
隠れているのは正解かもしれない。
「……また世界樹の精霊が大泣きしそうだな」
帰るのが遅れそう。
いつまでトモナリの下着で世界樹の精霊のご機嫌を取れるのかも分からない。
トモナリは小さくため息を漏らす。
いざとなったらサントリとディーニを連れて自分たちだけでも逃げる。
その覚悟はしなきゃいけないなと思っていた。




