空の上、大ピンチ1
「お土産も買ったし……日本に帰るか」
少し時間もあったのでみんなの分のお土産も買った。
軽く連絡した感じでは世界樹の精霊はもう限界みたいで泣き喚いてトモナリを探しているようだった。
しょうがないからギルドハウスにあるトモナリの部屋から下着を拝借して、世界樹の精霊に与えたところ大人しくなったという。
勝手に入るな、そして下着を持っていくなと言いたいところだけど、世界樹の精霊がどこか行ってしまったり育成に悪影響を及ぼす可能性も否めない。
もはや下着は世界樹の精霊が木の上に持っていってしまったらしいし、仕方ない処置だったとトモナリは諦めるしかなかった。
帰ったとしても下着を返してもらえるか微妙なところである。
「さてチェックイン……おっと」
搭乗口を探すトモナリは近くにいた男性と肩がぶつかってしまった。
チケットを確認しながらだったので注意不足だった。
「‘すいません……’」
「‘チッ! クソガキが!’」
険しい顔をした中年の男は、トモナリのことを見ると盛大に舌打ちした。
トモナリは謝ったが、相手は謝ることもなく仲間らしき人たちとゾロゾロどこかにいってしまう。
「なんなのだ、あれ!」
「態度わりーな……」
「殺してゴミ箱に捨てて参りましょうか?」
ぶつかったのは悪いが、相手だってぶつかったので同じだ。
一方的にトモナリが悪いとでも言うような態度にヒカリたちはムッとしている。
こんな時に意外と過激なのはディーニだったりする。
今も立ち去った男の方を睨みつけるように見ている。
「いや、飛行機の時間も近いし、面倒は避けよう」
トモナリも少しは不快な思いもある。
ただ飛行機のチェックインは早めに済ませておきたい。
引き止めてぶつかっただろと文句を言うのも大人気ない行為である。
「それにファーストクラス扱いだからいいラウンジ使えるらしいしな」
特に急いでいるというわけではなく、今回帰りの飛行機もまたファーストクラスのチケットをもらった。
ファーストクラスになるといいラウンジも使わせてもらえる。
せっかくならそんなところも満喫しようと思っていた。
「こういう時はこっちが大人になればいいのさ」
「大人なのだ〜」
「次はあれだな、ぶつかった瞬間に腹パン決めてやればいいな」
「次があったら決して許しはしません」
みんなが怒ってくれるのも大切に思ってくれているから。
トモナリはディーニの冷徹な意見に思わず笑ってしまうのだった。
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「美味しいステーキだったのだ!」
高級ラウンジには食事を提供してくれるところもあった。
せっかくならとヒカリはたらふくステーキを食べていたのだった。
ファーストクラスの搭乗口は悠々としていて、ストレスも少ない。
こんなに至れり尽くせりなのは回帰前に経験したことがない。
「僕は〜ここでいいのだ〜」
ヒカリの扱いは非常に困ったものだろうが、今回もファーストクラスに一席ヒカリの分を用意してもらっている。
ただヒカリは座席に座るトモナリの膝の上にいる。
世界樹の精霊も甘えん坊だが、ヒカリも大概甘えん坊である。
トモナリも別に不愉快ではないし、一応大丈夫か聞いてみたところ許可は出たのでそのままにしていた。
「‘飲み物はいかがですか?’」
「‘ジュースを何かお願いします’」
ラウンジのみならず機内でもファーストクラスの扱いはいい。
今時機内でもスマホが使えたりするので、多少ニュースなんか確認している間に飛行機も出発の時間になった。
問題もなく飛行機は飛んでいく。
「こんなもんが空飛ぶって信じらんないよな」
サントリとディーニの世界では飛行機なんてものはなかった。
海を越えたきゃ船、陸を行けば徒歩か馬車とかそんな世界だった。
感動したというよりは不思議であるとサントリは窓の外を見ながら思っていた。
どうやったら金属の塊が飛ぶのか謎だった。
「ふむふむ、その気持ち、分かるのだ」
ヒカリが腕を組んで頷いている。
以前はヒカリも飛行機が変なものだと思っていた。
今でも仕組みなんかは知らないが、そういうものだと受け入れている。
この世界での生活はサントリよりもヒカリの方が先輩なのである。
微笑ましい先輩面だとトモナリはヒカリの頭を撫でる。
「ここからおよそ半日……結構遠いもんだよな」
いかにファーストクラスの優雅な旅であっても、基本的には動かずじっとしていなきゃいけない。
回帰してからというもの、トモナリは忙しなく動き続けてきた。
暇さえあれば体を動かしたり鍛えてきたので、何もしないで長時間いると少しだけソワソワしてしまったりするようになっている。
口ではみんなに休むことも大事なんていうものの、何もせずに休むことが一番できていないのはトモナリなのかもしれない。
帰ったら世界樹の様子を確認して、今後現れるだろうゲートの情報もできる限り思い出して、なんて考えるとまた落ち着かない。
「機内食も楽しみなのだ」
ヒカリはちびちびとジュースを飲みながら何か面白そうなものはないかとザッピングをしている。




