世界樹プロジェクト3
「みんな久しぶり。元気そうだね」
「あっ、どうも先輩」
「ん、元気」
「お久しぶりです」
即決で返事はできないものの、イガラシも返事に長く時間をかけるつもりはなかった。
数日中に答えを出すというのでトモナリたちは五十嵐ギルドに留まることにした。
イガラシとイヌサワにはすでに会っているが、もう一人挨拶すべき人が五十嵐ギルドにはいる。
それはフウカである。
フウカはトモナリたちが一年生の時に三年生だった人で、課外活動部の先輩でもあった。
三年生の研修としてフウカのサポートについたのがトモナリでもあるし、関係は決して浅くない。
アカデミーで直接関係があった先輩として挨拶するのは当然だ。
「やっぱ二人って似てるよな」
フウカも相変わらずそう。
そんなフウカとサーシャを見て、ユウトは目を細める。
言葉少なく物静かで、表情の変化に乏しい。
タンクタイプだということやちょっと眠そうな目をしているなんてところも似ている。
フウカは辛いものが好きだけど、サーシャは苦手なんて差はあるけれども、そんなこと見た目じゃ分からない。
「うきょっ!?」
「青いヒカリちゃんかわいい」
「ぬははっ! 作戦成功なのだ」
サーシャに比べてフウカの方がヒカリに対して強いところもある。
ただ今回はヒカリが出せというのでミヒャルを出していたら、フウカはヒカリの代わりにミヒャルを抱きしめていた。
「先輩も相変わらず元気そうで何よりです」
「もうレベル70を超えたよ」
「えっ……早いですね」
フウカの年齢にしてレベル70はかなり高い方だ。
モンスターの討伐を集中させてようやくそのぐらいになれるだろう。
「フン、すごいでしょ」
フウカは誇らしげな顔をする。
少しばかり表情も豊かになったのかもしれない。
「それで今回は何の用?」
「多分そのうち話がありますよ」
イガラシはギルド全体の意見を聞くつもりだ。
それならみんなを呼んで話をするはずである。
先に説明をしてもいいが、どうせ後で聞くのだから今個別にすることもない。
「ふーん」
フウカは特に興味もなさそうに答えた。
「おい、ヤナギ、召集だ。集まれ」
「はい」
ちょうどタイミング良くフウカが呼ばれていった。
「にしても世界樹なぁ……」
「卒業してまずやるのが世界樹だもん、驚いちゃうよね」
コツコツとゲート攻略していく。
そんなことを言っていたのに、そんなことよりもまず世界樹を育てると言って大型ギルドに連絡を取ったりと奔走している。
設立したてのギルドでやることじゃない。
「トモナリ君……ギルドマスターならあり得るかな」
「いつも通りトモナリでいいよ」
一応トモナリはギルドを作った人としてみんなの上司にはなる。
ただ堅苦しい呼び方なんか強要するつもりもない。
「しかも計画はほとんど組み立て済みだしね」
「なっ! 俺たちがやることもないよな」
「今はなくともそのうち世界樹のために戦ってもらうぞ」
「それぐらいやらなきゃしょうがないか」
仲間たちには世界樹のことは伝えてある。
最初は驚いていたが、利益にもなるし人を守ることにも繋がると説明するとみんな賛成してくれた。
どうするのかも計画していたのでむしろやることが欲しいぐらいに思っている。
「てか……あの青いの連れてかれたけどいいのか?」
「ん? まあ大丈夫だと思うよ」
ミヒャルはそのままフウカに抱かれて行ってしまった。
ただ別にサントリが心配するようなことが起こりはしない。
チヤホヤされて満足して帰ってくることもあるかもしれないと思っている。
「五十嵐ギルドは協力してくれると思うか?」
「さあな……反応は悪くなかったけど……」
「あまりにも大きい話だしね。難しい判断だと思うよ」
メリットはしっかりしていて大きい。
対してデメリットは大きいのか小さいのかも不透明である。
協力するリスクを正確に算定できないことが大きなデメリットであると言ってもいい。
確実性を重視する人ならトモナリの提案を嫌がってもしょうがない。
「引き受けてくれると嬉しいな」
トモナリとしては勝算があるから声をかけた。
イガラシもイヌサワも保守的というよりも、比較的前を向いた人たちだ。
世界樹についても前向きに考えてくれるはずだと思っている。
ただギルド全体で意見をまとめた時にどうなのかは分からない。
全体的にもチャレンジ精神旺盛な感じだとは信じている。
「ちなみにここダメだったらどうするんだ?」
「場所問題はちょっとあるけど……オウルグループか、天照ギルドかな」
「……サラッと大物の名前言うな」
色々な問題まとめて解決してくれそうなところで、強い戦力も持っているところといえばオウルグループである。
カエデというツテもあるし、以前会長にも会った。
利益的なことを考えると乗ってくれる可能性も高い。
ただオウルグループはその分トモナリとの利益の分配などシビアになりそう。
最終的にオウルグループに良いところを持っていかれる、ということにもなってしまいそうで五十嵐ギルドの方を第一候補にした。
「アイゼン君はいるかな?」
「イガラシさん」
五十嵐ギルドの人たちが呼ばれての話し合いが始まって、思いの外時間が経った。
そろそろ待つのも飽きてきたと思っていたらイガラシがのそりとやってきた。
「話……まとまりましたか?」
「ああ、みんなの意見は最終的に一つになった」
「……それで、どうなりましたか?」
流石のトモナリの緊張した面持ちをしていた。
「…………世界樹の話、引き受けよう。この五十嵐ギルドが責任を持って、世界樹の保護に動く」
「……ありがとうございます!」
引き受けてもらえるとは信じていた。
それでもやっぱり引き受けてもらえるとホッとする。
「みんなもお前には甘い……俺もだがな」
イガラシはニッと笑う。
トモナリの計画は、走り出したのであった。




