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【第八章完結】ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした  作者: 犬型大
第九章

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世界樹プロジェクト2

「そんな時に守ってくれる人たちが必要です」


 ただ育てるだけなら木崎植物研究所に任せればいい。

 しかし木崎植物研究所の戦力はそんなに強くない。


 どれほどのモンスターが押し寄せるのか、そこまで詳細なことは分かっていない。

 決して楽観視はせず、木崎植物研究所の戦力では厳しいかもしれないとキザキ、シゲモリと話し合っていた。


「つまりモンスター対策に俺たちに協力してほしいってことだな?」


「そうです」


「だが俺たちはここを長く離れるつもりはないぞ?」


 トモナリの頼みなら、とは思うものの、五十嵐ギルドは他のギルドと少し形態が違う。

 五十嵐ギルドの目的はモンスター占領区の奪還だ。


 ゲートやモンスターのせいで放棄され、モンスターが闊歩することになった土地を取り戻すことを、五十嵐ギルドが活動の第一に掲げている。

 協力を請われてゲートを攻略しに行くこともあるが、あくまでも一時的な出張である。


 いつ来るかも分からないモンスターを警戒して世界樹のそばに在中することは現実的でない。


「それは分かってます。実はもう一つ理由があって五十嵐ギルドにお願いに来たんです」


 トモナリもそれは理解している。

 五十嵐ギルドが世界樹という利益があるからと、ここまで戦って解放してきた土地を投げ捨てるとは思っていない。


「もう一つの理由だと?」


「実は……世界樹をこの近くに植えられないかと思ってるんです」


「………………なんだと?」


 全く予想もしていなかった言葉にイガラシは思わず目を見開いた。

 イヌサワも驚いて、ヒカリが食べるお菓子に伸ばしかけていた手が止まる。


「基本的にはどこでもいいんです。だからすごく悩みました」


 世界樹のタネを手に入れる時に土を世界樹にふさわしいものにしてくれる肥料も手に入れている。

 なので言ってしまえばどこでも植えようと思えば植えられるのだ。


 肥料がなくともふさわしいところに植えた方がいいのは間違いないだろうが、それよりも考えるべきことが多い。

 モンスターが襲い来るということは近隣にも被害が及ぶ。


 そうなると、どこかの町中や近くに町があるところに世界樹を植えるリスクがある。

 他にも、世界樹の範囲内は保護されるということがある。


 敵対的なモンスターは侵入ができなくなり、守られるのだ。

 それはいいことなのだが、問題は保護された後の話である。


 脅威が差し迫っている時には人々は協力するだろう。

 しかし安全になれば今度は人の間で争いが始まってしまう。


 例えば、安全になった土地の所有者はそれで利益を得ようとするはずだ。

 お金を得て人を招き入れるかもしれないし、あるいは自分の好みのみで人を選別するかもしれない。


 不満が高まれば正当な権利を持った人に対して攻撃を加えて支配しようとする人も現れる。

 保護された平和の中で争いが生まれてしまう。


 権利関係なんて複雑なものを考えたくはないが、ある程度考慮しなきゃならない事情がある。


「この辺りの土地は五十嵐ギルドの所有ですもんね」


 モンスター占領区解放におけるモチベーションのために、解放した土地は解放したギルドや覚醒者の所有が認められている。

 そのためにすでにこの辺り一帯は五十嵐ギルドの所有となっていた。


 五十嵐ギルドが持っている土地に世界樹を植えれば複雑な利権関係もそれなりに制御ができる。

 広大な土地を買ってしまおうなんてことも考えたが、なかなか大変で簡単にはいかなかった。


「世界樹の守護ギルドになってみるつもりはありませんか?」


 もちろん五十嵐ギルドにも利益はある。

 世界樹が成長して、保護が正常に働けばモンスターの侵入を警戒する必要がなくなる。


 元々いたモンスターを追い出したり、ゲートの発生を防ぐことはできないが、世界樹の影響下にあるモンスターは弱体化する。

 今後一帯の奪還、維持もより楽になるのであった。


「世界樹の守護ギルドか」


「なかなか面白い響きだね」


「今後より戦いが激しくなれば、世界樹の保護区域は人々を守る聖域にもなります」


 五十嵐ギルドの土地は五十嵐が持っている上に畑にも転用できる場所があったり、人が放棄して復興すれば使えそうな町の跡地もある。

 これほど適当な場所は他にないのではないかと思った。


「将来的には世界樹が育てば枝は武器なんかになりますし、葉っぱや実は薬なんかになります。ちゃんと利益も出ますし、分配もしましょう」


 保護区域になるというだけではない。

 ちゃんと世界樹を利用した経済活動も想定している。


「どうですか、イガラシさん?」


 出せる情報、メリットデメリットも含めて全部出した。

 ダメだった時は別の手を考えなきゃいけない。


「僕はいいと思いますけどね」


「なっ!?」


 ニヤリと笑ったイヌサワはヒカリが食べようとしていたお菓子をさっと掠め取る。


「一時的な負担はありそうだけど、最終的にはここら辺を取り戻す力になってくれる。それに……世界樹なんて面白そうだ」


「……興味がないわけではない」


 イガラシは腕を組んで険しい顔をしている。


「少し返事を待ってもらってもいいか? 他のみんなの意見も聞きたい」


「もちろんです」


「お決めになられる間に、この辺りの土壌の調査をしてもいいでしょうか?」


「土を調べるくらいならいくらでも」


 もう半分ぐらい引き受けてもらえる想定で、シゲモリは動き出す。

 デメリットはいろいろあれど、それを遥かに上回るメリットがある。


 色良い返事も聞けそうだ。

 トモナリは眉間にシワを寄せて悩むイガラシを見て、そう思ったのだった。


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