世界樹プロジェクト1
「お久しぶりです」
「君ももう一端の覚醒者か。時が経つのは早いものだ。俺もドンドンおじさんになって……もうすぐおじいちゃんだ」
「まだそんなお年じゃないでしょう」
トモナリはイガラシと握手を交わす。
歳を取ったというものの、イガラシは一年の時に出会ったまま分からない。
年齢の割に若々しく、おじさんであることは間違いないが、おじいちゃんとはとても呼べない。
「それが君のチームか?」
「ええ、頼もしい仲間たちです。あと何人か加わる予定もありますし、お留守番もいますが」
「僕もいるのだ」
イガラシがトモナリの後ろに視線を向ける。
そこにユウトたちギルドのメンバーもいる。
サントリもいるが、ディーニはギルドハウスを守るためにお留守番している。
トモナリの肩に乗っているヒカリは手の代わりに尻尾をフリフリしていた。
「うちに来てくれればと思っていたけど、すでに良いメンバーを揃えてるんだね」
「イヌサワさんもウチに来ますか?」
「ああ、それは魅力的な誘いだね。むさ苦しいおじさんのところよりもいいかもしれない」
「なんだとこの?」
イガラシの隣にいるイヌサワも相変わらずの調子のようだった。
トモナリはギルドのメンバーを連れて五十嵐ギルドのところを訪れていた。
五十嵐ギルドは相変わらずコツコツと活動を続けていて、モンスターから取り戻した土地も広がっている。
他のメンバーも変わりがないようで安心した。
「あっと、こちらの方は俺のギルドじゃなくて、木崎植物研究所というところの……」
「副所長のシゲモリと申します。五十嵐ギルドについては噂に聞き及んでいます」
「そうですか」
ギルドのメンバー、イガラシとイヌサワの他に木崎植物研究所の副所長でドルイドのシゲモリもその場に来ていた。
シゲモリが手を差し出すとイガラシはそれに応じる。
「植物研究所……失礼ながら勉強不足で」
「知らない人の方が多いと思います。そうお気になさらずに」
木崎植物研究所と言われて、すぐに何をしていると答えられる人の方が少ない。
正直なイガラシにシゲモリは笑みを浮かべる。
「植物研究所の方がなぜ……?」
疑問ではあった。
トモナリの仲間にしてはやけに高齢の人がいると思っていたのだ。
部外者、しかも研究所というところにさらに疑問は深まってしまう。
「それが今回ここに来た理由なんです」
「わざわざ直接会って話したいという内容か」
トモナリはイガラシに連絡した。
内容はメールや電話では不安なので、直接会って話したいというものだった。
イガラシはトモナリの話ならばと快諾してくれて、こうして五十嵐ギルドにやってきている。
「ここならば他に邪魔も入ることはない」
五十嵐ギルドがギルドハウスとして使っているビルの会議室はしっかりとしている。
周りには五十嵐ギルドの関係者しかいないので、話を盗み聞きされる心配もない。
「それで何を話したい? お前が持ってくる話だから普通のことじゃないのだろう?」
普通のことじゃないともう心づもりはしてある。
だから驚かないぞという余裕をイガラシは見せている。
「実は……協力してもらえないと思いまして」
「協力? 俺たちに頼むぐらいだ、簡単なことではないのだろう?」
「俺は世界樹をこの世界に根付かせようと思ってるんです」
「………………なに?」
「世界樹って、時々装備とかで聞くあの世界樹?」
世界樹という言葉にイガラシはすぐに理解できず、イヌサワは少し驚いたような顔をしていた。
「俺は今世界樹のタネを持ってるんです」
「なっ……ああ、くそ、俺の負けだ」
「でしょう?」
「……何の話ですか?」
イガラシが驚いて、そして悔しそうな顔をする。
イヌサワはイガラシの顔を見てニヤリと笑う。
「トモナリ君がきて、する話は絶対驚くものだと僕は思ったんだけど、イガラシさんは心構えがあれば驚かないっていうからちょっとした賭けをね」
イガラシの余裕そうに見えた態度は絶対驚かないぞという現れでもあった。
しかしイガラシは世界樹のタネをトモナリが持っているということに、普通に驚いてしまった。
「話の腰を折ってすまない。続きを」
「ええ、はい」
いささか軽いとは思うけれど、軽く話せるようにしてくれることは有り難さもある。
「改めて言いますが、俺は今世界樹のタネを持ってるんです。それをこの日本に根付かせるつもりです」
「それはいいのだが、俺たちに何の関係が?」
植物研究所との関わりはうっすらと理解できた。
世界樹がどんなものなのか、イガラシも正確には知らないけれども、樹というのだから木であることは想像できる。
植物に関わりがあるから植物研究所につながるのだと考えれば不自然なこともない。
しかし五十嵐ギルドの協力に話は繋がってこない。
どこをどう見ても植物を育てているギルドじゃないからだ。
「世界樹のタネですからね、ただ地面に植えて水あげてればいいというものじゃないんです」
トモナリは回帰しているので世界樹を育てることのリスクを知っていた。
「世界樹を育てたら、世界樹を目的にモンスターが寄ってくるかもしれません」
かもしれない、ではなく本当に寄ってくる。
これがトモナリの中で世界樹を育てる上での一番のネックになっていることだった。




