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【第八章完結】ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした  作者: 犬型大
第八章

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マコトの進む道3

「いこう、トモナリ君」


 邪魔はなくなった。

 病室のドアが一人でに開き、トモナリとマコトは中に入る。


「よく来たね」


「あなたが……僕の…………生みの親、ですか?」


 ホテルのような広い病室に置かれたベッドにさらりとした長髪の男性が腰掛けている。

 さらにその横に猿の仮面をつけたやたらと背の高い男性が控えていた。


「そうだ。俺が顔を見に行ったことはあるけれど……こうしてちゃんと話したのは初めてだね」


 似ているな、とトモナリは思った。

 母親にあった時には母親似なのだろうと思ったが、父親である暗王もマコトに似ている。


 マコトよりも女顔で儚げな雰囲気があった。

 かなり予想外。


 もっといかつい人をイメージしていたのだけど、想像と真逆な雰囲気のある人だった。

 仮にそこらを歩いていたとしても、暗王だと疑う人は一人もいないだろう。


 ただ、まとっている雰囲気は常人のものではない。

 鋭く磨がれた刃のような冷たい雰囲気がある。


「こうして会えて嬉しいよ。彼女と君には……苦労をかけたね」


「いえ、大変なことなんて……母さんは分からないですけど」


 マコトには育ての父親がいる。

 小さい頃に父親になったので、マコトは自分が実の息子でないということすら知らなかった。


 贅沢な暮らしはしてこなかったが、特に生活に困るようなこともなかった。

 マコトとしては両親揃っているし苦労したというほどのことはないのだ。


「それで、今日はなんの用かな?」


「まず……なんて呼んだらいいですか?」


「今更父親面するつもりはないよ。我孫子アビコと呼んでくれればいい」


「分かりました、アビコさん」


 アビコの口調は穏やかだ。

 けれども押さえつけるような強い魔力を感じる。


 暗王ならば当然覚醒者だろう。

 これまでの暗王会の暗躍ぶりを考えるにレベルは100に近い強者に違いない。


「僕は少し前に暗王会に誘拐されました。それは……アビコさんの命令ですか?」


「いや、違うよ」


 アビコはマコトの言葉に目を細める。


「……アビコさんの跡を継いで、暗王会のトップに立てと言われました。じゃないと僕の両親に手を出すと」


 マコトはチラリと隣にいるトモナリのことを見る。

 隣にトモナリがいてくれるなら勇気が出てくる。


「暗王会の中の争いに、僕の両親は関係ありません。やめてください。それを……言いに来ました」


「そうか……迷惑をかけたようだね。エン」


「はっ」


 アビコがベッド横に立つ男に声をかける。


「処理を。勝手なことをしたやつは全員処分で構わない」


「承知しました」


 エン、と呼ばれた猿の仮面の男はアビコに頭を下げると部屋を出ていく。


「処理には少し時間がかかる。だけどもう君の親にも、君にも手を出すことはないはずだ」


「……あ、ありがとうございます」


 あまりにもあっさりとした解決にマコトは呆然としてしまう。

 こんなに勇気を振り絞ったのはなんだったのかと思ってしまう。


「……無理に誘うつもりはないけれど、うちに来るつもりはないか?」


 長い沈黙の末に、アビコは無表情のままに口を開いた。


「えっ?」


「君の能力は優れていると聞いている。うちに来れば俺が君のことを支援しよう。傀儡なんかではなく、本当に暗王会のトップにしてやれる」


 それはスカウトだった。


「金も何もかも思うがままにできる。霊薬なんかも惜しげもなく手に入れてやろう」


「……でも、人殺しもするん、ですよね?」


 暗王会が危険な組織ということはマコトも知っている。

 たとえ実の父親の誘いだとしても、そんなところに行くつもりはなかった。


「確かに暗殺を請け負うこともある。しかし暗殺の相手は暗殺されるに相応しい悪人だけだ」


 なるほど、とトモナリは思った。

 暗殺があまり多くない理由も、過激派が暗殺の仕事を拡大しようとしている理由もこれで分かった。


 暗殺に一定のルールがあるのではないかと考えていた。

 悪人じゃなきゃ暗殺しないというルールがあるなら、暗殺という仕事にセーブがかかっていることも納得できる。


「お前が望むなら……暗殺もしないということにもできる」


「どうしてそうまでして僕を……」


「お前のことはずっと心残りだった」


 アビコは遠くを見るような目をした。


「俺は彼女のことを愛していた。いや、今でも愛している。君のこともちゃんと息子として愛するつもりだった」


 マコトに頼まれてついてきたトモナリだったけれど、この話を自分が聞いてもいいものかと思ってしまう。

 ただ話を遮って出ていくなんてことも雰囲気的にはできない。


「だが当時……暗王会の前身となるギルドでゴタゴタがあった。俺一人の力ではどうしようもないぐらいの出来事で、彼女も君も危険に巻き込まれる可能性があった」


「だから……僕たちの前から姿を消したんですか?」


「その通りだ」


 アビコは静かに頷いた。


「全てが終わり、落ち着いた時にはもう……君たちの生活も前に向かって進んでいた。こんな俺など……入る隙間もなかった」


 どんな事情があったにせよ、身重の女性を一人にして離れたことに変わりはない。

 マコトが生まれ、他の男性と結婚までした女性の前に姿を現すことはできなかった。

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