マコトの進む道2
「実の父親に会う……か」
現状を打開できる唯一の方法かもしれない。
しかし、リスクは高い。
暗王と呼ばれるほどの人物が、どのような人なのかわからない。
少なくとも優しくてのほほんとした人ではなさそうだとトモナリは思っている。
まともに話し合いができるのかどうかも分からない。
加えて穏健派や過激派の妨害もありうる。
過激派が隠すように監禁しているところに、暗王の場所を教えに接触したのなら穏健派がやった可能性が高い。
しかし過激派がやった可能性も否定はできない。
どっちであろうと暗王に合わせたい人と合わせたくない人がいるのだろうと考えられる。
片方、あるいは両方から妨害があるかもしれないのだ。
「よかったらなんだけど……ついてきて、くれないかな?」
「俺……が?」
マコトは期待するような目でトモナリのことを見る。
トモナリの方は予想していなかったお願いに驚く。
「やっぱり……急に聞かされた話だし、相手が相手だから緊張しちゃうんだ」
マコトは照れくさそうに頬をかく。
「トモナリ君は堂々としてるし、強いし、それに……僕の憧れなんだ」
トモナリがマコトと出会った時も、憧れてストーカーのようなことをしていたのを見つけたのが始まりだった。
あの時からマコトの気持ちは変わらない。
むしろ友達になって、仲間になって、知れば知るほどにトモナリはすごい人で憧れは強くなる。
「トモナリ君がいてくれれば、僕も……強くいられるから」
たとえ暗王が怖い人だったとしても、トモナリがそばにいてくれるならマコトは逃げずに立ち向かえる。
「ダ、ダメかな?」
「……いや、ダメじゃないさ」
今やマコトもだいぶ強くなり、それなりに自信もついてきた。
それでもまだ頼ってもらえることはトモナリとしても嬉しい。
マコトを一人で行かせるのも心配だ。
ついてきてほしいというのならついていきたい。
「会ってみようか、暗王」
回帰前には顔すらも見たことのない神秘の存在だった暗王に会うことができるかもしれない。
ほんの少しだけ、面白そうだともトモナリは思っていた。
ーーーーー
愛心病院という町中にあるなんの変哲もない総合病院に、トモナリとマコトは訪れていた。
そここそが暗王のいる場所だった。
「緊張する……」
「まあ、お茶でも出してくれる……とは思えないもんな」
暗王や暗王会に警戒されても困る。
そのために今回覚醒者協会には情報を伝えていない。
どうにも覚醒者協会内部の情報もある程度暗王会に把握されているようなので、念のための対策である。
ただ流石にトモナリとマコトだけじゃ危ないし、覚醒者協会もマコトのことは注視している。
単独で動くことはできなかった。
だからまたしてもミヤノに協力してもらった。
覚醒者協会にはマコトを監視しているという状態を保ってくれるように説得してもらい、今もミヤノは変装してトモナリたちの近くにいる。
実はトモナリにすらミヤノがどこにいるのか分かっていないレベルで隠れている。
「奥のエレベーターに乗って……」
体調が悪いから病院にいる。
なんとも普通なことである。
しかし暗王会のトップたる暗王がただ普通に入院しているはずもない。
奥側にある職員専用と書かれたエレベーターにトモナリとマコトは乗り込む。
「ええと下のパネルを開いて……」
開閉や階を指定するボタンの下に、メンテナンスなんかの時に使うのだろうパネルがある。
鍵がかかって普通は開けられないのだけど、閉ボタンと開ボタンを同時に押しながら鍵穴部分を押し込むとパネルが開いた。
そこにあるスイッチの一つを押すとエレベーターが動き出す。
「秘密基地みたいだな」
一見普通の病院なのに、こんな仕掛けがあるのは驚いてしまう。
エレベーターは一気に上がっていく。
なんの変わりもないように、チンと軽い音が鳴って到着して扉が開く。
降りてみるとまっすぐに通路が伸びている。
窓もなく一定間隔で明かりがあるのみで、少しだけホラーゲームのような薄気味の悪さがある。
まっすぐ突き進んだ先に扉があって、その前に体つきのいいスーツの男が立っている。
「……なんのご用ですか?」
体つきのいい男は濃いサングラスをかけていて、どこを見ているのかも分からない。
魔力を感じるので覚醒者なことは間違いない。
雰囲気だけで強さなど判断はできないが、かなり強そうだとトモナリは思った。
「実の父親に会いにきました」
マコトは堂々と言葉を返す。
ただ、よくみると手が震えている。
やはり緊張や恐怖があるのだろう。
「……お待ちしておりました」
「えっ?」
思いの外あっさりと体つきのいい男はドアの前から避ける。
待っていた。
この言葉から察するに暗王はマコトが来ることを予想していた、ということになる。
「失礼ですが……お入りになられるのはマコト様のみ」
体つきのいい男は先をいくマコトと後ろのトモナリの間に腕を差し込んだ。
「ぬぬ……」
不穏な雰囲気にヒカリが険しい顔をする。
「彼も一緒にお願いします」
「それはできかねます」
「行ってこいよ。俺はここにいるからさ」
ピッタリと隣にいてやることはできないが、そばにはいる。
トモナリがじっとマコトの目を見つめてやると、ほんの少しの動揺は見せつつもマコトは頷いた。
「いい、そいつも入れてやれ」
しかしドアの向こうから声が聞こえてきた。
「分かりました。アイゼン様、ヒカリ様もどうぞ中に」
体つきのいい男が腕を引く。
名前を把握されているとトモナリは内心で苦い思いがあるけれど、ひとまずマコトと一緒にはいられるようだったので動揺は顔に出さない。




