誘拐された暗王候補2
「もう一週間か……」
もう学校が始まって一週間が経った。
マコトが失踪して、いまだになんの情報もない。
楽観的な考えはほとんどなくなり、みんなマコトの安否が不安になってきた。
「流石にこうなったら何かの事件に巻き込まれたんだろうな……」
一週間もすれば、遅れていた子たちもほとんどアカデミーに到着している。
交通機関が遅れていたというだけで帰ってこないのは、どうしてもおかしいのである。
今時スマホだってある。
連絡すらないのだから、事件に巻き込まれたという他にない。
ただトモナリにできることはない。
友達がピンチかもしれないのに何もできないというのは非常にモヤモヤする。
「先輩、ちょっといいですか?」
「ハルカ、どうかしたか?」
トモナリは課外活動部の部室にいた。
自分のことでも忙しいが、後輩たちの面倒だって見なきゃいけない。
課外活動部は交流戦にも出るのでやはり実力をつけてやる必要があり、トモナリはみんなの指導も積極的に行なっている。
会議室でアカデミーの授業における覚醒者としての評価なんかを眺めながら次の部長を誰にしようか、なんて考えていると控えめにドアがノックされてハルカが入ってきた。
「少しお時間いいですか?」
「ああ、大丈夫だよ。何かあった?」
ハルカの顔色が悪いなとトモナリは思った。
「あの……また、あれを見て」
「なるほどな。座って」
あれ、とは未来予知のことである。
なかなか未来予知のスキルは制御が難しい。
見たい時に見たいものの未来を覗けるというわけにはいかず、なんらかのタイミングでふと未来が見えることが多いようだった。
回帰前のハルカならある程度コントロールできていたのだが、今はまだ偶発的に未来を見ることしかできない。
今のところ、夢で未来を見ることが多い傾向にあった。
そして、未来予知を見るとハルカはトモナリに報告していた。
未来は変えられる。
良い未来を見たのならそのままにしておくこともあるし、あるいは悪い未来を見たのなら未来予知からヒントを得て変えようと努力することもあるのだ。
最近は良さそうな予知ならハルカもサラッと報告するだけだったのだが、こうして深刻そうな顔をして直接話にくるということは悪いものかもしれないとトモナリは思った。
「何を見たんだ?」
「……多分なんですけど」
「多分でもなんでも大丈夫だ。これまでもそうしてきたろ?」
ハルカの未来予知は何をどう見せるのかも決まっていない。
多くの場合未来予知が見せてくれるのは何かの問題だ。
ただ問題であっても事後だったり、途中だったり、はたまた問題が起こる前の原因だったりと何を伝えたいのか謎なこともある。
見せてくれる内容もしっかり分かることもあれば、全く分からないこともある。
後にニュースになってアレだったのかとなったこともあるぐらいだ。
今更多分だからと前置きしなくとも、そんなことがあることぐらいは理解している。
「これでも食べるのだ」
「ありがとうございます、ヒカリ先輩」
席に座ったハルカにヒカリがお菓子を差し出す。
「それで……何を見た?」
「あれは……ミナミ先輩でした」
「マコトが未来予知に?」
これは軽く聞いてはいけなさそうな話だとトモナリは顔を険しくする。
「どこか……部屋の中。窓もなくてどこか分からないんですけど、ミナミ先輩がいて、顔は殴られたような感じ。ミナミ先輩は俯いたようにうつろな顔してて……」
「どこかに閉じ込められてるってことか?」
「そんな雰囲気です」
窓もない部屋に殴られたマコトが一人。
あまり良い想像ができない。
「しばらく見ていたら、人が入ってきて……早く諦めろとかこっちにつけとか、そんなことを言ってました」
「こっちにつけ……? マコトを引き入れようとしてる? どんな人だった?」
「二人入ってきて、一人は男性で口元を黒い布で覆っていました。もう一人は女性で目元にホクロが。話しているのはほどんど男性の方でした」
「男女のペア……」
もちろんだけどトモナリに思い当たるような節はない。
「何か場所のヒントはないか? もしかしたら……ハルカが頼みの綱かもしれない」
学長であるマサヨシにも聞いてみたが、何も分かっていることはないと返事があった。
ここで嘘をつく必要はないから、おそらく本当に何も分からないのだ。
マコトに関して、ハルカの未来予知に現れたのは何かのメッセージの可能性がある。
助けを求めている。
何かほんの少しでもいいからヒントが欲しいとトモナリは思った。
「場所のヒント……」
ハルカは目を閉じて未来予知で見た光景を思い出そうとする。
ベッドしかないような狭い部屋で、マコトはベッドに腰掛けている。
ドアが一つあるのみで窓はなく、外のヒントはない。
「……どこかの室内の部屋、ですかね」
男女が入ってきた時、ドアの外が見えた。
廊下がある。
外ではない。
マンションの一室とかそんな場所ではなく、建物の中にある部屋の中のようだ。
「……うーん」
他に何か特徴はないかと記憶の中で部屋を観察する。
しかし部屋に大きな特徴なんかもない。




