猛烈スカウト2
「まあ言ったでしょう? あなたさえよければうちは世界樹に関わることに前向きよ」
「前向きどころか、ぜひうちに任せてくれ!」
草に拘束されながらもキザキの興奮は抑えられない。
「だから少し静かになさい。そんなではアイゼン君に引かれてしまいますよ」
「そんなことを言ったって……この興奮を抑えられるものか! 世界樹という樹木の存在は以前より確かなものであるだろうと言われていた。だが実際に見たものはいない!」
椅子が壊れそうなほどにキザキは体を揺らす。
若干の恐怖すら感じる。
「様々なゲートから世界樹を加工して作られた装備品が出てくるけれど、どれも一級品だ。世界観が共通していないゲートでも世界樹という存在は出てくるし、謎が多かった」
「私財叩いて世界樹の杖買ったら詐欺だったこともあるものね」
シゲモリは呆れた顔をする。
世界樹のことを調べたくて、キザキは世界樹を使って作られた杖を買ったことがある。
しかしそれは偽物でキザキはひどく落ち込んだ、なんてことがあった。
「世界樹の加工品どころか、本物の世界樹を調べられる! しかも成長過程まで見守ることができるんだぞ! これは世界的にも貴重なことだ!」
世界樹装備は品質が良く、非常に高価なものが多い。
たとえ研究のためだとしても簡単に買えるものではなかった。
生の世界樹を見られるだけでなく、自分の手で成長に関与することができる。
キザキの興奮のボルテージは上がり続けていた。
「シゲモリ、お前だって同じ気持ちだろう!」
「その通りよ。だからこそアイゼン君に選んでもらおうと冷静になろうとしているんじゃない」
今キザキたちは選ばれる立場にある。
いくら受け入れるといってもトモナリが選んでくれなきゃどうしようもない。
キザキのように圧をかけて振られないようにとシゲモリは冷静を装っていた。
本当ならキザキと同じようにトモナリに迫りたいぐらいなのだ。
「もし仮にあなたのせいでアイゼン君に断られたら私、ここを辞めてアイゼン君に個人的に雇ってもらうから」
シゲモリの目が笑っていない。
自分の興奮を抑えてトモナリに気に入られるようにしろと目が訴えかけている。
「………………自慢じゃないがうちは植物、特に異世界の植物に関してトップクラスの研究機関だ。世界樹についても、任せてもらえるなら全力を尽くそう」
シゲモリの圧に押されて、キザキも少し冷静になる。
「分かりました。じゃあひとまずキザキさんたちに世界樹を任せてみようと思います」
「おおっ! 本当か!」
少なくともキザキたちは植物に対して真摯的だ。
世界樹のタネを任せてほしいというのも利益になるからとかそんな打算ではなく、世界樹のことを知りたいという知的な好奇心が強い。
信頼して任せても大丈夫だろうと任せられる相手だと思った。
「ただいますぐ世界樹もどこかに植えるというわけじゃありません」
「何?」
「必要なものがたくさんあります」
世界樹はほっといても大きくなる。
だが手をかけて、大切にしてやることでより大きく立派なものとなってくれるだろう。
それに世界樹を植えることによって何が起こるのかということも知っている。
ここはまたヒカリたちの力に頼ることにする。
ヒカリたちドラゴンには異世界の知識があって、世界樹を育てるために必要なものの知識もいくらかあったということにして、キザキたちに今後の計画を伝えた。
「ふむ……なるほどな……」
「簡単じゃなさそうな。でも、それだけしてもやる価値はあるはずよ」
「こちらでも準備を進めておこう。アイゼン君、君は君で準備をお願いするよ」
「ええ、ではよろしくお願いします」
トモナリは草の拘束から解かれたキザキと握手を交わす。
世界樹の育成について強い味方を得られた。
色々と用意するものは多いが、立派な世界樹育成計画は大きく前進したのだった。




