お茶会1
「いきなり呼び出してごめんなさいね」
「いえ、本当に誘っていただけるなんて光栄です」
「ゲートの方に行ってしまうと聞いてね。今しかないと思ったから」
トモナリはシゲモリに呼ばれていた。
目的はお茶会だ。
外に出てゲートの中で植物を採取したりする覚醒者チームが研究所に戻ってきた。
ただ、噂の所長とやらは次のゲートにそのまま向かって調査を始めているらしく、会うことはできなかった。
トモナリは次のゲートに向かう覚醒者チームに同行することとなっている。
だから出てしまう前にと声をかけてくれたのだ。
「このお茶はここで育てている植物から煮出したものよ」
シゲモリはトモナリの前にお茶の入ったカップを置く。
ここで育てているというからには異世界の植物から作ったのだろう。
ただカップを覗き込んでみると色は紅茶っぽい。
香りは少し甘め。
かなり普通に紅茶の雰囲気がある。
普通のものよりもフルーツティー感はあるものの、異世界の植物から作ったとはとても思えない。
「そっちも既製品もあるけど、異世界の植物から作ったものもあるわよ」
山盛りのお菓子が、お茶請けとして置いてある。
用意しておくと言っていたけど、本当にたくさん用意したものである。
「食べていいのだ?」
ヒカリはキラキラとした目でお菓子を見ている。
肉も好きだけど、甘いものも大好きである。
「もちろんよ」
シゲモリは優しく微笑む。
『私も食べたい!』
「あー……すいません」
トモナリの頭の中で声が響く。
「何かしら?」
「もう一体出してもいいですか?」
頭の中で聞こえてきたのはミヒャルの声だった。
トモナリは苦笑いを浮かべてしまう。
「ええ……どうぞ」
もう一体、という言葉の意味をシゲモリはよく分かっていない。
しかし怪しいことはしないだろうと許可を出す。
「おいで、ほれ」
「やったー!」
「あら」
トモナリはミヒャルを召喚する。
呼び出された青いミニドラゴンはパタパタと翼を羽ばたかせ、嬉しそうに両手を突き上げて現れた。
シゲモリはミヒャルを見て目を丸くしている。
「もう一杯用意してあげないとね」
「おいしーい!」
「あっ、ずるいのだ!」
ミヒャルは早速お菓子を頬張る。
ヒカリも負けじとお菓子に手を伸ばす。
青と黒のドラゴンを見て、ニコニコとしながらシゲモリはミヒャルの分のお茶を用意する。
「うちはどう?」
シゲモリがお茶を用意して、二匹のドラゴンで賑やかなお茶会が始まった。
「とても良いところですね」
トモナリは紅茶を一口すする。
お砂糖も用意してあるが、まだ何も入れていない。
だが紅茶はほんのりと甘味がある。
かなり飲みやすい紅茶だとトモナリは思った。
「卒業後の進路としては?」
「そうですね……あるかもしれません」
やらねばならないことがある以上研究所を卒業後に選ぶことはない。
けれども来ませんとも言えない。
心情としては無しと言えるほど悪い場所ではなく、人生が違えば選ぶ道もあったと思える。
「ふふ、いいのよ。誤魔化さなくても。あなたほどの人がここを選ぶことはないと私も分かっているわよ」
トモナリのやや歯切れの悪い返事にシゲモリは目を細めて笑った。
期待をしないわけではないが、有望な若者が選ぶにしては研究所は渋すぎる。
むしろちゃんと世の中のために活躍してくれた方がいい、とすら考えている。
「ヒロタもあなたのこと褒めていたわよ。真面目で誠実、作業も丁寧でなんでも積極的にやってくれるってね」
「ありがとうございます」
そんなふうに手放しで褒められると照れてしまう。
「そして……肥料が欲しいとも聞いたわよ。モンスター肥料がね」
「……そうなんです」
別に悪いことをしたわけでもないし、シゲモリが怖い顔をしているわけでもない。
ただ言おうとしていた話題を先に出されて少しドキッとする。
どうやらヒロタが先に伝えて置いてくれたらしい。
「どうしてそれが欲しいのかしら? よければ理由を聞かせてもらえるかしら? 理由によっては分けてあげてもいいわよ」
「本当ですか?」
これはチャンスだとトモナリは思った。
肥料をお願いすることもそうであるし、そこから世界樹の話を繋げて、シゲモリに世界樹をお願いしたいことも説明できるかもしれない。
話を聞いた感じではシゲモリも元研究組で、植物に対して興味が強いらしい。
世界樹という希少植物に対して興味を持ってくれる可能性は高いはずである。
「実はある植物を育てたいんです」
「それは……普通の肥料じゃダメなのかしら?」
当然の疑問である。
仮に異世界の植物であっても、最初はこちらの世界で作られて肥料を使っていたし、今でも使っているものは多い。
わざわざモンスター肥料を用意して使わねばならないというものの方が少ない。
「これを」
トモナリはインベントリから世界樹のタネを取り出した。
「これは……何かしら?」
世界樹のタネは一見するとデカいだけのただのタネである。
植物の知識が豊富なシゲモリでも見ただけで世界樹のタネだとは判別することができない。
「これは世界樹のタネです」
「世界樹……! あの伝説の?」
シゲモリがこれまでで一番驚いた顔をした。
年末のご挨拶
今年も一年私の小説を読んでくださりありがとうございます。
なんだかんだとこの作品も伸びて、賞を取り、調子に乗ってこうして続けてまいりました。
なんとなく100万字見えてきたかなというところですがまだ物語は終わりそうにありません。
のんびりと続きを書いていくつもりなので、これからもお付き合いくだされば嬉しいです。
よかったらここらで評価でもしてやるかという人がいたら嬉しいですね。
本年も大変お世話になりました。
新作なんかも半分ほどまで公開されていい感じなってきましたし、その他の作品も読んでいただけると嬉しいです。
良いお年をお過ごしください。
犬型大




