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【第六章完結】ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした  作者: 犬型大
第八章

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意外と楽しい研修1

「アイゼンくーん、こっちもお願い!」


「はーい」


「任せるのだ〜」


 研究所での研修が始まった。

 まずは研究所の仕事に慣れていく。


 研究職でもないトモナリが植物について細かな研究をすることはない。

 やることといえば植物のお世話である。


 植物のお世話といっても色々とやるべきことは多い。

 基本的なこととしては、水やりだ。


 水やりと簡単にいうが、研究所全体で育てている植物はトモナリが覚えきれないほどの種類がある。

 水やりだけでも大変だ。


「あのツタには気をつけて、離れたところからホースで水をあげてくれ」


「分かりました」


 ヒロタと今日担当するのは温室。

 異世界植物でも大きな性質は植物と変わらないものが多い。


 水をあげるのは大事。

 ただあれは多めにとか、あれは少なめにとか細かな調節も必要だった。


 ホースの近くなら直接水をあげるが、少し遠いところはデカいジョウロに水をたっぷり入れてあげにいかねばならない。


「いや〜人がいると楽だね」


 ヒロタはニコニコとしながら水が満杯に入ったジョウロを両手に一つずつ持っている。

 いかにも研究者といった雰囲気で見た目にも非力そうなヒロタだが、れっきとした覚醒者である。


 レベルに対する能力値の伸びが悪くて、同じレベル帯の覚醒者と比べると非力なことに間違いはない。

 ただそれは他の覚醒者と比べての話だ。


 一般的な人に比べると力はある。

 大きなジョウロに水いっぱい入れてもひょいと持つこともできるのだった。


「ふははー! もー捕まらないのだ!」


 トモナリはホースを引っ張ってきて植物に水をやる。

 その中の一つには先日エンドウやヒカリを投げ飛ばしたツタの木もあった。


 ヒカリはわざとツタの木に近寄って、ツタをかわして遊んでいる。

 必要な時にはちゃんとお手伝いしているのでヒロタも怒りはしない。


 実際捕まったら自己責任である。


「……喜んで……る?」


 トモナリが水をかけてやると、ツタの木はツタを激しくウニョウニョさせる。

 まるで喜んでいるようだとトモナリは思った。


「次は……肥料あげようか」


「肥料……」


「ああ、自然に育てるのもいいけど、肥料あげた方が元気になるからね」


「肥料ってどんなものをあげるんですか?」


 トモナリは肥料に興味を持った。

 もしかしたら世界樹にも使えるかもしれないと思ったのだ。


「色々あるよ。普通のものあるし……うち独自に開発したモンスター肥料なんてものもある」


「モンスター肥料ですか?」


「モンスターじみた効果の肥料というわけではないよ? まあ、効果は高いけどね。モンスターの素材から作った肥料ってやつさ」


「へぇ、そんなものあるんですか」


 ちょっと期待できそう。

 トモナリはそんな風に思った。


「研究所でもゲートを一つ確保してるんだ。それがマーマンが出てくるゲートでね」


 マーマン。

 それは二足歩行の人型モンスターで、魚のような特徴を持っている。


 ざっくりといえば魚人みたいなものである。


「マーマンを倒して、色々加工して肥料にしてるんだ」


「マーマンを」


 トモナリは驚く。

 以前ビーチに現れたマーマンを倒してゲートを攻略したことがある。


 あれを肥料にしてしまうのかと驚きがあった。


「他にもコカトリスの排泄物なんかから作ったものもある。こっちはかなり貴重だけど、効果は高いんだ。エンドウ主任なんかは自腹でツタの木にコカトリスの肥料をあげたりしてるよ」


 トモナリが興味を持ってくれて、ヒロタは嬉しそうに説明してくれる。

 エンドウはツタの木を可愛がっていると言っていた。


 それは文字通りに可愛がっているようだ。


「……モンスター肥料って買えるんですか?」


「モンスター肥料をかい? ……うーん、どうだろうね?」


 トモナリの質問にヒロタは悩ましげな顔をする。


「何かに使いたいの?」


「あ、はい。そうなんです」


「物にもよるのかな? モンスター肥料を買いたいなんて、前に企業から打診されたことがあるぐらいだからね。軽くモンスター肥料なんて言ったけど、利用は割と慎重なんだ」


 そもそもモンスター肥料は一般流通している物じゃない。

 買いたいと言ってもネットで注文なんてできない。


 個人で買いたいという意見も、流通に乗らず一般の人が知らないのだからそもそもそんな意見など聞こえないのだ。

 もし聞かれても売るのかどうかヒロタには判断できない。


 しかもちょっとした事情もある。


「既存の植物にもどんな影響を与えるのかわからないからね。今ある植物たちもモンスター肥料をちょっとずつ与えて、何事もないことを確認しているんだ」


 魔力を多く含み、植物の育成にも役立つモンスター肥料だが、植物に何かしらの影響を与える可能性は否定できない。

 そのために実験を行なってから本格的に与えていく。


 トモナリは何に使うのか言っていないので、ヒロタは一般的な植物を想定して答えている。


「申請して、多少の実験して確かめて、それで大丈夫そうならってところかな? 所長が戻ってきたら聞いてみるといいよ。副所長でもいいかもね」


 モンスター肥料を買えるならありがたい。

 シゲモリとお茶する機会があったら聞いてみようとトモナリは思った。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 干したマーマンを粉末にした『魚人粉』を想像して、ちょっと噴きました(笑)
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