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【第六章完結】ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした  作者: 犬型大
第八章

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ミズドルイド2

「微妙なところだな。ゲートに出現したものだが、攻略する相手としてアレは指定されなかった。全てのモンスターとなっていたはずなのだがな」


 トモナリの疑問にエンドウが答える。

 モンスターだと言われればそうかもしれないが、ちょっと断定するのにも微妙な存在だと考えている。


 ゲートには攻略条件が設定されている。

 ボスを倒せとか、モンスターを全て倒せとかそんなものだ。


 ツタの木はゲートから採取されたものだが、ゲートの攻略条件としてはモンスターを全て倒せというものだった。

 しかしツタの木を倒すことなくゲートは攻略された。


 つまり全てのモンスターという枠組みに、ツタの木は含まれないということなのだ。

 モンスターではないのか、あるいはモンスターとまで見られていないのか。


 少なくともゲートの攻略においてはツタの木はただの植物扱いだった。

 だから植物なのか、モンスターなのか微妙なのである。


「こうして投げ飛ばされたりされるが、明確に殺意を持って死ぬまで攻撃してくるということもない……まあ、一般人ならあんなふうに投げ飛ばされれば致命的だけど、ある程度以上の覚醒者なら問題にならない」


 エンドウは白衣についた土を手で払う。

 結構痛そうに見えたのだけど、エンドウはケロッとしている。


「毎日水あげて、肥料まで加えてやってるのになかなか懐いてくれないんだ」


「あれ……懐くんですか?」


「知らん。だが丹精込めて育ててるんだ。懐いてくれたっていいだろ」


「にょわーーーー!」


「あっ、ヒカリ!」


 興味本位でフラフラとツタの木に近づいたヒカリがツタの木に捕まった。

 ブンブンと振り回されて、ヒカリは悲鳴を上げる。


「待て待て待て! そのうち投げられるから」


 トモナリは剣を取り出したが、エンドウが止める。

 貴重な植物を切り倒されてはたまらない。


「どわぁーーーー!」


 エンドウの言うようにヒカリが投げ飛ばされた。


「おっとぉ!」


 たまたまトモナリの方に飛んできた。

 トモナリがヒカリのことをキャッチするも、勢いのついたヒカリはなかなか重たくて受け止めた胸に重たい衝撃が駆け抜けた。


「目が回るのだぁ……」


「不用意に近づくからだぞ?」


「ぬぅふ……ごめんなさいなのだ……」


「まあ、あんなふうに襲ってくる植物はほぼいない。今後は気をつけろ」


 エンドウも怒ることなく笑う。


「気をつけててもあんなところに生えてるんだから一回ぐらいはみんな投げ飛ばされてる」


「そうですね。とりあえず首だけ気をつけておけば死ぬようなことはないですからね」


「……覚えておきます」


 やはり覚醒者のギルドと雰囲気はだいぶ違う。

 けれども、トモナリが想像していたような研究者という雰囲気とも違って明るい感じがあった。


「シゲモリさんに挨拶は?」


「あっ、これから伺おうと思ってました」


「早めに行っとけ。そろそろティータイムだ」


「分かりました」


 トモナリはヒカリを抱っこしたままヒロタについていく。


「これから会いにいくのが副所長の茂森雪子シゲモリユキコさん。副所長だけど……実質的にはここのトップみたいなものだよ」


 またちょいちょいと植物や施設の説明を挟みながら、建物の上の階に向かう。

 トモナリはようやく目的の人物に会えると内心で思っていた。


「何かな?」


 とある部屋に着いた。

 ヒロタが入り口横にあるインターホンのようなものを押すとスピーカーから返事があった。


 女性の声。

 かなり歳のいった声に聞こえた。


「研究員のヒロタです。アカデミーの研修生が来ていて、ご挨拶に」


「……ああ、そういえばそんな話があったね。入りなさい」


 部屋の入り口が開く。


「いらっしゃい。ヒロタ、豆の育成はどうだい?」


「順調です。もうちょっと成長すれば豆も採れると思います」


 中に入ると、年配の女性がいた。

 優雅にティーカップを持っていて、優しそうな雰囲気のある人だった。


「困ったことがあったらすぐに相談なさいよ」


「いつもありがとうございます」


「あなたが研修生の……」


「アイゼントモナリです」


「ヒカリなのだ!」


 トモナリは名乗って軽く頭を下げる。


「元気そうな子ね。抱かれてる子も可愛いわね」


 シゲモリはヒカリを見て目を細める。


「私はシゲモリよ。この研究所の副所長を勤めているわ」


「研修、よろしくお願いします」


「真面目そうな子ね。こうしてうちに興味を持ってくれて嬉しいわ」


 シゲモリが優しげな微笑みを浮かべる。


「今度一緒にお茶しましょ」


「ぜひ」


「ふふ、上司とお茶なんて嫌がる子も多いのにあなたはあっさりと返事するのね」


「シゲモリさんと少し話をしてみたくて」


「あら? こんなおばあちゃん口説くなんてダメよ?」


「いや、そんな……」


「冗談よ」


 口に手を当てて笑うシゲモリからは、滲み出るような上品さを感じる。


「短い間だけどよろしくね」


「はい、よろしくお願いします」


 お茶に応じたのはお世辞ではない。

 トモナリは本当にシゲモリに近づきたかった。


 なぜなら、シゲモリこそがトモナリがスカウトしたいと考えているドルイドという職業を持つ覚醒者なのであったからだった。

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