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【第六章完結】ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした  作者: 犬型大
第八章

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ミズドルイド1

 オウルグループでは魔物の素材をメインに研究している。

 他にもゲートからはこの世界には見られない金属が採れたり、魔石のように魔力を保有している魔晶石という天然鉱石もある。


 ゲートの中の新たな素材に対して世界は注目しているが、その中でも植物に目をつけた人もいた。

 金属のように硬い木、意思を持って動く葉っぱ、高い薬効を持つ花などゲートの中にある異世界の植物も色々だ。


 他にも木の実や果物など食べられそうなものがなっている植物もあったりして、食料問題の解決にも植物研究は期待を寄せられている。

 ただやはり成果が出にくく、研究も難しい。


 魔物素材の研究をしている企業なんかに比べて植物研究を行っている場所は少ないのだ。

 そんな中でもゲート内の植物を研究しているのが、木崎植物研究所である。


 元々小さな研究所だったのだが、ブレイクを起こしたゲートの植物系モンスターの攻略法を見つけたことで一躍有名になり、今では世界でも異世界植物研究のトップとなっていた。


「君がアイゼン君か。僕は廣田賢ヒロタケン。君の研修中直属の上司として担当させてもらうよ」


 木崎植物研究所は大きな町から一時間ほど行ったところにある。

 植物を研究するために広い土地が必要なので、町から離れていることはしょうがない。


 挨拶に伺うとヒロタという研究者っぽい覚醒者がトモナリの対応に当たってくれた。

 割と若めで、人が良さそう。


「所長は今……植物の採取のために出張していてね。君の研修中には戻ってくる予定だからそれから挨拶したらいいと思うよ」


「分かりました」


「まずは研究所を案内しよう。普通のギルドとは違うからね。どちらかといえば……魔物の研究なんかもやっている企業に近いかもしれないね」


 歩きながらヒロタがいろいろと説明してくれる。

 他に研修生はいないようで、トモナリだけがゆったりと研究所を体験できる。


「ほぇ〜」


「それはカナダにゲートで採れた植物だね。近くに火を吐き出すモンスターがいたんだけど、それでも燃えない植物なんだ。すりつぶして飲むと一時的に耐火性を得られるんだよ。ただし、しばらくトイレで生活することになる」


 ガラスの向こうに燃える火のような形をした植物が植えてある。

 ヒロタは嬉しそうに一つ一つ植物についても説明してくれていた。


 知識を披露するのも楽しいみたいだ。

 やはり研究所だけ建物の中の雰囲気もギルドっぽさが薄い。


 白衣の人が行き交っていて、色々な植物が植えてある。

 ゲートの中の植物を相手にするので、白衣の人も多くが覚醒者だったりするのだけどあまり戦い向きっぽい雰囲気の人も少ない。


 ただ万が一に備えたり、植物採取のために戦闘要員の覚醒者もいる。

 仮にトモナリが研究所に勤めることになったら、戦闘要員の方に回されることだろう。


 戦う場面としては多くない。

 ゲートが出現しても出動するようなこともない。


 その分給料としては抑えめになってしまうが、定時で帰れるようなのんびりとした覚醒者活動ができることは魅了的だ。


「ここが温室。一見すると普通の植物にも見えるものは多いけど、何か分からないうちは下手に触らない方が賢明だ」


「うわああああっ! べぶしっ!」


「あれは植物ですか?」


「いや、あれは人間だね」


「大丈夫なのだ?」


 急に人が飛んできた。

 トモナリは何かトラブルかと身構えたけれど、ヒロタは平然としている。


「あでで……すまないね。怪我はないかい?」


 なかなか危険な落下の仕方をしたように見えたのだけど、飛んできた男は腰をさすりながら立ち上がった。

 割とゴツい顔をした白衣の中年はグッと腰を伸ばす。


「遠藤主任……研修生の前ですよ」


 ヒロタは呆れた顔をする。

 反応を見るに、こうしたことも珍しいことではなさそうだ。


「おおっ! 君がウチを研修先に選んだ物好きか! 私は主任研究員の遠藤隆幸エンドウタカユキだ。よろしくな」


「よろしくお願いします」


 エンドウが手を差し出してきたので、トモナリも応じて握手する。


「よろしくなのだ!」


「ドラゴン君だね。噂には聞いているよ。君の血を少しもらえないかい?」


「嫌なのだ」


「そうか……残念だが無理にはできないもんな」


 エンドウはヒカリとも握手する。

 ヒカリを見る目はかなり好奇心を帯びているが、悪意のようなものは感じない。


「あの、なんで飛んできたんですか?」


 サラッと挨拶したものの、劇的な登場をしたことは忘れられない。

 どうして飛んできたのか気になって仕方ない。


「ん、ああ……ちょっと植物の世話をしていてな」


 エンドウが後ろを振り向く。

 少し離れたところにツタが絡み合った木のような植物が生えている。


「あいつはツタを動かして周りを攻撃してしまう。少し油断してしまってな」


 エンドウは苦笑いを浮かべて肩をすくめる。


「……あれはモンスターじゃないんですか?」


 ツタの木はツタをウニョウニョと動かしている。

 どう見たって動いているし、ただの植物には見えない。


 どうやらエンドウはツタの木によって投げ飛ばされたようだった。

 というか、動いているならモンスターなのではないかとトモナリは思った。

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