ニュードラゴン2
「前の格好の方が似合ってたぞ」
「そ、そお? じゃあ……」
ミヒャルが指をぱちんと鳴らすと服が変わる。
やや緩めの青いドレスのような服装は、セクシー衣装よりよほど似合っている。
「それじゃあ友達になろうか?」
ミヒャルについてはヒカリも認めてくれるだろう。
このままトモナリにだけ声が聞こえているより、みんなの輪の中に入った方がミヒャルにとっても良いはずだ。
「…………えと」
「どうかしたのか?」
契約には何か特別なものが必要なわけではない。
互いの合意があればそれが契約になる。
しかしトモナリが契約の意思を示しても契約が成らない。
ミヒャルが拒否しているという感じでもない。
なんというか、ちょっと照れたようにモジモジとしている。
「あの……」
「なんだ? 何かあるのか?」
「友達になるのはいいんだけど……」
「おう」
「ギュッてしてくれたら……嬉しいな」
ミヒャルは頬を赤らめている。
これが本当にあんなに暴れていたドラゴンなのか、と疑いたくなってしまいたくなる。
ミヒャルは期待したようにチラチラとトモナリのことを見ている。
「ん、いいぞ」
これがルビウスやエドならためらうところだけど、ミヒャルならいいだろう。
小さくて可愛らしい妹みたいな感じ。
「本当!?」
「本当だよ」
これで契約できるのなら軽いものだ。
トモナリが軽く手を広げてやると、ミヒャルは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「人間って……あったかいね」
ちょっとのためらいを見せて、ミヒャルはトモナリの胸に飛び込んだ。
ヒカリがやるようにトモナリの胸に顔をぐりぐりと押し付ける。
見るとミヒャルの耳は真っ赤になっていた。
ミヒャルはトモナリの温かさを感じているが、逆にトモナリはミヒャルがひんやりとしているなと思っていた。
こんな姿見られたらヒカリが怒りそうだなとも思って、少し笑ってしまう。
「時々でいいから……こうしてギュッてしてくれる?」
抱きついたままミヒャルがトモナリのことを見上げる。
「ヒカリの許可は得てくれよ?」
浮気なのだ!
そんなふうに怒りそうなので、ヒカリの許可を得てならハグしてもいい。
「分かった。じゃあ……友達」
トモナリとミヒャルからそれぞれ光が漏れ出す。
二人の光が絡み合って一つになり、なんとなくだけど繋がったという感覚が胸を温かくする。
「ふへへ……いつかこんなことがあるかもしれないってお父さんが言ってたけど……嬉しいね」
ミヒャルはへにゃりと笑顔を浮かべる。
こうしてトモナリはまたしても一人寂しくしていたドラゴンを陥落させたのだった。
ーーーーー
「友達!」
「友達なのだ!」
「ふむ……小娘が仲間になったか」
「賑やかで良いですね」
「……こうしてみるとたくさんいるな」
ミヒャルも含めて全員召喚してみた。
ミニ竜状態なので大きくはないのだけど、それでも四体もいれば視界が賑やかだ。
カラーも色とりどりで、青が加わってより鮮やかになった。
ヒカリとミヒャルは手を取り合ってクルクルと回転している。
どうやら二人はそれなりに気が合うようだ。
どちらも寂しがり屋で人肌恋しいドラゴンなので、似たようなところがある。
「おっと、きたかな?」
部屋のチャイムが鳴った。
「ヒカリ、手伝ってくれ」
「分かったのだ!」
トモナリとヒカリが玄関の方に向かう。
「まあ、新入りだからよろしく頼むぞ」
「はい! おばさ……」
「お姉さん」
ミヒャルが禁断の一言を口にしかけて、ルビウスが怖い顔をした。
「お姉さん、もしくはお姉様と呼びなさい」
「…………はい、お姉様」
「よろしい」
「私のことは好きに呼ぶといい」
「はい、おじ様!」
ヒカリ以外のルビウスとエドもミヒャルとは上手くやっていけそう。
「みんな、飯だぞ。今日はミヒャルの歓迎パーティーだ」
来客は注文していた料理であった。
ヒカリも含めてドラゴンたちの傾向としてお肉が好き。
なので両手の皿には大量のお肉が乗っている。
ついでに甘いものとしてケーキもホールで頼んだ。
「わああっ!」
ステーキを見てミヒャルは目を輝かせる。
「お兄ちゃん大好き!」
「お兄ちゃん?」
「なにゃ!?」
ミヒャルがトモナリに抱きつく。
お兄ちゃんという呼び方にトモナリとヒカリも驚く。
「何してるのだ!」
「すりすり」
「こらー!」
トモナリに抱きつくミヒャルにヒカリが怒る。
「……どうやらしばらく騒がしくなりそうだな」
ヒカリがミヒャルを引き剥がす。
ミヒャルが加わって賑やかさが増した。
後でミヒャルの能力も確かめなきゃなと思いながらトモナリたちは肉を食べ、ケーキでミヒャルが仲間になったことをお祝いしたのだった。




