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【第六章完結】ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした  作者: 犬型大
第八章

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馬鹿者の結末1

「……なんだ?」


「ボーンドラゴンの動きが止まった?」


 第三チームはかなりの苦戦を強いられていた。

 トモナリとヒカリがボーンドラゴンの胸にいる以上、あまり強い攻撃ができなかった。


 ボーンドラゴンが急に激しく暴れ出したり、狙いもないように氷を飛ばして回ったりと防戦を強いられていたのである。

 もしかしたらトモナリとヒカリはもう助からないかもしれない。


 そう判断して攻撃しようとしていた時であった。

 ボーンドラゴンの動きが止まった。


 頭を上げた体勢で突如として動かなくなって、テルヨシたちは何かの攻撃の前兆かと身構える。


「……こ、これは!?」


 何も起きないまま数秒。

 ボーンドラゴンの体がバラバラになった。


 まるで倒されてしまったようにボーンドラゴンの骨が地面に落ちる。


「何が起きたんだ?」


 テルヨシたちは顔を見合わせる。


『ゲートが攻略されました!

 間も無くゲートの崩壊が始まります!

 残り1:30』


「ゲートが攻略された……ボーンドラゴンが倒された……ということか?」


 みんなの目の前にウィンドウが現れる。

 それはゲートの攻略と崩壊までのタイムリミットを表すものだった。


「いてて……なんだよ」


「ぬおーなのだ!」


「アイゼン君! ヒカリ君!」


 モゾっと骨が動いて、下からトモナリとヒカリが出てきた。

 パッと意識が戻ったと思ったら地面に落ちて、上から骨が降ってきた。


 硬い骨が思い切り頭に当たって、トモナリは涙目になっている。


「君が倒したのかい?」


「……倒した?」


 テルヨシがトモナリに駆け寄る。

 一瞬なんの話か分からなくてトモナリは周りのことを見る。


 バラバラになった骨とウィンドウ。

 ひとまずボーンドラゴンが倒されているということは理解できた。


 そしてふと手に違和感を感じた。


「あれ? こんなのいつの間に……」


 気づいたら何かを握っていた。

 手を開いてみると水滴の形をした宝石のようなものがある。


 見つめているとミヒャルのことを思い出すような、綺麗な宝石だ。


「何が起きたにしてもゲートは攻略された。お疲れ様」


 話は後で聞いてもいい。

 テルヨシは笑顔を浮かべてトモナリに手を差し出す。


「ありがとうございます」


 とりあえず宝石はインベントリに入れて、トモナリはテルヨシの手を取って立ち上がる。


「さて……問題は……」


 テルヨシは崩れた入り口を見る。

 崩れた岩をどけることは問題ない。


 魔法で吹き飛ばしてしまえばいい。

 その後が問題なのである。


 問題とはもちろん、アキラを始めとした第一チームの存在になる。

 ここまで第一チームは助けに来るような気配もない。


 途中でボス討伐に参加することすらなく、完全に沈黙を貫いている。

 このままではただ責任問題になるだけなのに、何もしないのはおかしいとテルヨシも感じていた。


「一悶着あるかもしれない……なんだ!?」


 アキラがこのまま引き下がるとは思えない。

 もしかしたら戦闘になる可能性がある。


 重たい予想だが、備えねばならないと覚悟を決める。

 その瞬間、入り口が爆発した。


「全員戦う準備だ! 相手が第一チームでも……油断……するな……母さん?」


 入り口を塞いでいた岩が吹き飛ぶ。

 中の音が聞こえなくなって第一チームが入ってきたのだと盾を構えるテルヨシが見たのは、怒りの表情を浮かべているクレアの姿であった。


「テルヨシ!」


「どうして……」


 クレアは駆け寄ってきてテルヨシのことを抱きしめる。


「ああ、無事でよかった!」


「何があったんですか?」


 テルヨシは予想もしていなかった展開に驚いている。

 チラリとクレアの後ろを見ると多くの人の姿ある。


 そしてアキラたち第一チームは拘束されて、地面に座らされていた。


「優秀な研修生のおかげよ」


 ーーーーー


 何かが起こる可能性がある。

 これはトモナリが常に念頭に置いていたことだ。


 誰かが何かを仕掛けてくるならゲートの中。

 事件が表沙汰になりにくく、事故に偽装して全てを誤魔化してしまいやすい。


 ただゲートの中というのはどうしても助けを呼ぶことも難しい。

 何かが起きてから外に助けを求めても、ゲートの位置なんかによっては助けになる人のところまでたどり着くことすら容易ではないのだ。


 ただトモナリには策があった。

 危機を素早く、必要な人に伝えるために考えていた方法がある。


「部屋に赤いドラゴンが飛び込んできた時は驚いたわ……ヒカリちゃんが赤くなったのかしらってね」


 ギルドマスターの部屋で、トモナリはクレアの正面に座っていた。

 目の前に置かれた紅茶から湯気と良い香りが立ち上る。


 クレアの隣にはテルヨシも座っている。


「緊急。第三チームが危険」


 クレアはテーブルに置いてあった紙を手に取る。

 乱雑に破り取ったような紙には短い言葉が書いてあった。


「危ないと思った瞬間に咄嗟に動いたんです」


 トモナリは紅茶を一口すする。

 ヒカリはトモナリの隣でお菓子をバクバクと食べている。


 最初から備えていた。

 トモナリはルビウスとエドを召喚して部屋に待機させていた。


 何かがあればルビウスとエドを通じてクレアに危機を伝えようと準備していたのである。

 破り取ったような紙は焦ってやった感を演出するためだ。


 ただ普段は離れていても意思疎通が取れるけれど、ゲートの中に入ってしまうと通じなくなってしまう。

 そのために二体とも出しておいて、危険が迫れば片方の召喚を解除して動いてもらった。


 だからドラゴンズコネクトも簡単には使えないなんて事情があった。

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