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【第六章完結】ラスボスドラゴンを育てて世界を救います!〜世界の終わりに聞いたのは寂しがり屋の邪竜の声でした  作者: 犬型大
第八章

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氷鱗王1

「すっげえ、気持ち悪い……」


 グルグルしてグニョグニョしてビヨンビヨンして、気づいたらトモナリは雪の上に寝転がっていた。

 何が起きたのか、よく分からない。


 ボーンドラゴンの胸に投げられたことはトモナリも覚えている。


「むにゃむにゃなのだ……」


「ヒカリは……元気そうだな」


 ヒカリも一緒にいる。

 仰向けに寝転がるトモナリの胸の上で丸くなっている。


「ここは何だ?」

 

 雪は触るとひんやりとしているのに冷たすぎて痛くなることもない。


「おお、起きたか」


「うわっ!?」


「ふにゃっ!?」


 ぬっと巨大なものがトモナリを覗き込んだ。

 それが何なのか分からないけれど、とにかくデカくて驚いた。


 驚いて動いてしまったので、ヒカリは胸からずり落ちる。


「まあ待て。そう警戒するな」


 一応腰にルビウスはあった。

 剣に手をかけながら立ち上がって、ようやく相手の姿がちゃんと見えた。


「ドラゴン……か」


「いかにも」


 トモナリのことを覗き込んでいたのはドラゴンだった。

 骨ではなく、ちゃんと肉がありウロコもある雄大な姿をしたドラゴンである。


 色は白っぽい青色をしている。

 氷を薄く切り出したかのようなウロコはキラキラとしていて、水晶のようなツノが頭に生えている。


「我はかつて氷鱗王と呼ばれしドラゴン……ひれ伏すがいいぞ、ニンゲン」


 頭を上げたドラゴンはトモナリのことを見下すような目をしている。


「何とも偉そうな態度なのだ!」


 雪を巻き上げながらヒカリが飛び上がる。

 調子がおかしいように見えていたけれど、復活したようだ。


「ブラックドラゴン……しかしまだ幼体か」


「そういうお前は何なのだ! 氷鱗王なんて気取った名前を名乗るのではないのだ!」


「ふん……私はブルードラゴン。アイスドラゴンのミヒャルだ」


「僕はヒカリなのだ!」


 ヒカリは険しい顔をして胸を張る。

 一体どういう状況なのか分からなくて、トモナリは剣をそっと抜いておく。


「ふふふ……その男、顔が好みだ」


「へっ?」


「なにおぅ!?」


 ミヒャルは前足の爪先でトモナリのことを指した。

 爪先だけでもトモナリより大きい。


「私は寂しかった。一人で……ずっと……封じられて……」


「なっ……」


 トモナリの周りが凍っていき、氷が高く迫り上がっていく。


「氷漬けにしてしまおう。そうすればずっと一緒にいられる」


「くっ……」


 トモナリの足元も凍りついていく。

 剣で氷を叩き割ろうとするけれど、まるで金属のように固くて剣が弾かれてしまう。


「何が目的だ!」


 足から氷が上がってくる。

 トモナリはミヒャルを睨みつける。


「目的……何だろうな。私は死んだ。死んで……骨になった。一人で寂しかった」


「俺を氷漬けにそばに置いたってその寂しさは紛れないだろ」


 人形にするというならともかく、氷漬けにして置いといたって寂しさは紛れない。

 むしろ寂しくなりそうだ。


「トモナリ! ボーッ!」


 ヒカリがトモナリの氷を溶かそうと火のブレスを吐き出す。


「ふっ、無駄だ。お前如きの炎では私の氷には勝てない」


 ヒカリのブレスは氷の表面を溶かす。

 しかしトモナリの足が凍りついていく速度の方が速い。


 このままでは本当に氷漬けになってしまう。


「私と一緒にいてくれる?」


「こんな無理矢理一緒にいるのは嫌だね」


 確かに、ミヒャルは寂しそうな目をしている。

 体は死んで骨になったのに、ボーンドラゴンとして生かされて意思のみが残ってしまった。


 ゲートの奥深くでただただモンスターとして人を待つ。

 何がミヒャルをそうさせたのか知らないが、寂しさを感じるというところは理解できる。


 ただだからと言って大人しく氷漬けになんかされてたまるものかとトモナリは思う。


「あぁ……トモナリ!」


 いつの間にか氷はトモナリの胸元まで上がってきている。


「嫌だろうと何だろうと、もう遅い。一時の戯れでも構わない。胸が張り裂けそうな寂しさをひとときでも紛らわせることができるなら」


「…………」


 氷が胸をすぎ、首を凍らせ、さらに頭も凍り始める。

 息は白く、呼吸するたびに体の中まで凍りそう。


「ルビウス……お前のなら、どうだ?」


 冷たくて、心臓まで氷に凍てつきそう。


「ボーっ! ダメなのだ!」


 トモナリの体が頭の先まで凍りつく。

 ヒカリが必死に溶かそうとするものの、氷はさらに分厚くトモナリを覆い始めていた。


「ふふふ、骨になることもなく、あなたは永遠になったの。これで少しは寂しく……なに?」


 氷が赤く光る。

 ミヒャルは一瞬ヒカリを疑ったけれども、赤い光は氷の中から放たれている。


「くっ……これは!?」


 氷にピシリと大きなヒビが走った。

 そしてヒビから炎が漏れ出す。


「この力……レッドドラゴン!?」


 ヒビが広がり、さらに炎が噴き出す。


「トモナリ! 僕もやるのだ! ボーッ!!」


 トモナリは諦めていない。

 ヒカリも氷に対してブレスを放つ。


「なにっ!?」


 トモナリを覆っていた氷が爆発するように割れた。

 炎が噴き上がり、ミヒャルは驚くように目を見開いて大きくたじろぐ。


『ふむ……小娘がよくも妾のものに手を出してくれるものだ』


「別にルビウスのものになったつもりもないけどな」


 炎の中から姿を現したトモナリは赤い姿をしている。

 ドラゴンズコネクトでルビウスと同化して、最大火力で氷の拘束を破壊してみせたのだ。

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