ボーンダンジョン4
「経験は積めるか……」
ただ利益としては少なそう。
そんな言葉がテルヨシの真意として隠れている。
ここまでメインで回収できそうなものはスケルトンたちの魔石だけだった。
通常のモンスターが出てくるダンジョンなら、モンスターの素材なども換金の対象になる。
ただスケルトンだけだとあまり素材価値は見込めない。
戦闘の経験、レベルアップの場としてはいいのかもしれないけれど、ギルドとして攻略するうまみは少ないなとテルヨシは思っていた。
やはり攻略する以上は金銭的なところも考えねばならない。
「じっくり攻略していくというよりはさっさと終わらせてしまった方がいいな」
利益になりそうなモンスターがいるならゲート中を回って倒していく。
そうじゃない場合は単純にゲート攻略を優先して、早く終わらせた方がチームの負担も少ない。
その後も何種類か猛獣に近いタイプのスケルトンが出てきて、完全に骨系統のモンスターが出てくるダンジョンなことが確定した。
「これは……ワニなのだ?」
「うーん、それっぽいな」
最初は同じ種類のスケルトンが何体か出てくる感じだったが、奥に進むにつれて幾つかの種類のスケルトンが混じるようになってきた。
人型のスケルトンは今のところ出ていない。
物珍しいスケルトンの博覧会のようだと誰かが言ったりしていた。
ただ今のところ攻略そのものは難しくない。
人型のスケルトンの場合、強い個体や魔法を使う個体もいたりする。
デスナイトやリッチなどが出てきた時には死を覚悟して戦う必要があるだろう。
だがケモノタイプのスケルトンが強くなったとしても魔法を使うとは思えない。
進んできた感じでは強くなるというより色々な種類のスケルトンが出てきて、戦うのが大変になっていく感じのゲートのようだ。
『ボスが倒されました。二階への扉が開かれます!』
「おっ?」
みんなの前に急に表示が現れた。
トモナリたちは移動中で、戦ってはいない。
なのにボスが倒されたということは第一チームの方がやったのだろう。
「先を越されてしまったな」
また文句でも言われそうだとテルヨシは軽くため息をつく。
競争しているつもりはないけれど、遅いと小言ぐらいは言われるだろう。
「第一チームだ」
そのまま進んでいくと広い部屋に出た。
そこには第一チームがいた。
待っていてくれたなんてことはなく、少し休憩中だったようである。
「……シバヤマチーム長は?」
第一チームの様子を見て、何人か少ないとテルヨシは気づいた。
「親父なら帰ったよ」
「帰った?」
「こんなゲート、自分が出るまでもないってさ」
テルヨシの疑問に答えたのは柴山彰。
シバヤマの息子である。
こいつもシバヤマに負けず嫌なやつであった。
「俺たちだけでも十分。お前たちも帰ってもいいぞ」
どうやらシバヤマはゲートのモンスターの具合から自分がいなくても大丈夫だと判断して、ゲートを出てしまったようだった。
後を任されたのが息子のアキラであった。
第一チームに遅れて到着したことを馬鹿にするような目をしている。
父親が父親なら息子は息子だ。
「俺たちは先に行く。ついてきてもいいが……邪魔するなよ?」
ゲート攻略してこいと言わないだけシバヤマよりもいいかもしれない。
ただ第一チームはまたしても雰囲気だけ悪くして二階に行ってしまった。
「……僕たちも少し休憩してから後を追おうか」
人望という面ではアキラはテルヨシの足元にも及ばない。
もしかしたら同年代のアキラとテルヨシを比較してシバヤマはテルヨシのことを敵対視しているのかもしれない。
そんなことをトモナリは思ったのだった。




