ボーンダンジョン1
「ゾワゾワ〜とするのだ」
ゲートの中に入る。
高ランクのゲートになるほど、中の魔力が濃くなる。
まるで水のよう。
低ランクのゲートは浅いプールに潜った時の水圧のように、あまり魔力というものを感じない。
だがランクが上がっていくに連れて、深い水の中に潜っていくように水圧みたいな魔力の圧を強く感じ始める。
踏み込んではいけない深さに踏み込んでいくような。
そして来るなと言われているような魔力の圧は本能を刺激する。
恐怖ではないが、何かの危険を覚えさせるようなヒリヒリとした感覚に襲われる。
「あんだけ偉そうにしてたのに先に入るのは俺たちだもんな……」
またしても不満。
ドローンなんかを駆使してゲートに入る時の安全は確保しているが、何が起こるか分からないのがゲートである。
人が入った瞬間にモンスターに攻撃されることだってあり得ないとは言いれない。
そのために一番に入ることはリスクがある役割なのだ。
偉そうに準備しろと言っていた第一チームだが、ゲートに先に入ったのはトモナリたち第三チーム。
つまり最初に入るリスクを背負えというのだ。
小さなことだが、もはやそれでも不満が漏れる。
「ふん、空気の悪いところだな」
第三チームに続いて第一チームが入ってくる。
洞窟となっているゲートの中はややジメジメとして、空気の流れもない感じがしていた。
シバヤマは不愉快そうに顔をしかめている。
「さっさと終わらせよう。俺たち第一チームは第三チームとは別々に行動する」
「分かりました」
「……二時間後に一度合流しよう」
第三チームは第一チームの下部チームではない。
一方的な指示出しに第三チームの面々は少し嫌な顔をする。
しかしテルヨシは笑顔で対応している。
「いくぞ!」
シバヤマは第一チームを連れてゲートの奥に進んでいく。
「なんだあの態度!」
「まあまあ、態度はともかくあいつらと動くにはならなかったから」
憤る仲間をテルヨシはなだめる。
確かに上から目線の態度は鼻につく。
けれどもこのまま一緒にいたところで苛立ちが募るだけなので、向こうから別行動を言い渡してくれたことはむしろありがたかった。
「確かに……そうだな」
「僕もあいつ嫌いなのだ!」
きっと一緒に行けば顎で使われることになっただろう。
そう考えたら別行動をすんなり受け入れたのはよかったのかもしれない。
ヒカリも尊大な態度のシバヤマのことが嫌いになりつつあった。
トモナリも研修だから気にしないけれど、実際人としては嫌いな方である。
「俺たちは逆側に向かおう」
ゲートがある空間からはいくつか道が伸びている。
第三チームは第一チームとは逆側の方向に向かう。
「結構明るいな」
洞窟型のダンジョンだと真っ暗で明かりが必須なことも少なくない。
ただ今回のダンジョンは天井から光を放つ水晶のようなものが一定間隔で突き出ている。
そのために外からの光がなくとも十分に明るい。
これは魔光石と呼ばれる異世界の鉱石で、魔力を使って光を放つ。
魔力を使うのでエコだと注目されていたりする。
ゲートの攻略が終わって、ゲートの消滅まで時間があったらギルドで回収することもあるだろう。
洞窟の中も思っていたよりも広い。
戦えるほどの横幅もある。
「モンスターだ!」
「戦闘隊形!」
「あれは……動物型のスケルトン?」
洞窟を進んでいくとモンスターが現れた。
みんなの後ろからトモナリも相手のことを覗き込む。
相手はスケルトンだった。
しかし通常のスケルトンは人の骨っぽいのに対して、現れたモンスターの方は人ではなく四足歩行のケモノの骨のように見えた。
結構大きめで、トラなどの大型の猛獣のケモノの骨だろう。
骨なのでうなりはしないが、頭を下げて警戒するような体勢をしている。
そんなケモノスケルトンが三体。
第三チームは素早く戦う体制を整える。
タンク役や体力の高い覚醒者が前に出て、魔法使いは下がる。
間に攻撃力の高い覚醒者が待機して、攻撃の隙をうかがう。
トモナリはヒカリともに魔法使いラインまで下がっている。
「くるぞ!」
トラスケルトンが大きな盾を持った覚醒者に飛びかかる。
「ふんっ!」
大きな盾を持った覚醒者はトラスケルトンを盾で受け止める。
腰を低く下げて、しっかりと踏ん張ってトラスケルトンの勢いを完全に止めた。
「放て!」
大きな盾を持った覚醒者はトラスケルトンの体勢を崩すように盾を振って地面に叩きつけた。
その隙をついて魔法使いたちが魔法を放った。
最初の戦闘なのでやや様子を見たような威力の魔法がトラスケルトンに当たる。
脇腹の骨などが魔法の直撃で吹き飛んでいく。
普通のスケルトンと同じく、あまり防御力的には高くないようである。
「おっと! そうはさせないぞ!」
テルヨシは魔法騎士という職業であり、主にタンク役として前に出ている。
魔法も使えるので後ろにいることもあるが、リーダーとして背中でみんなを牽引しているのだ。
他の二体のトラスケルトンもぼーっとしているわけじゃなく、突っ込んできていた。
中型の盾でトラスケルトンの攻撃を受け流し、武器としてるメイスに炎をまとわせて殴りつける。




