派閥争い3
「まあ、みんな、そう言わずに」
不満タラタラのメンバーに対して、テルヨシは苦笑いを浮かべている。
止めるほどに何とも思っていないわけではなさそうだけど、だからといって不満を口にしながらの作業では効率も悪かろう。
シバヤマに聞かれたらそれもまた小言の原因にもなる。
「早くリーダーがギルド継いでくださいよ」
「そーですよ。あんなやつクビにしてください!」
「まあ、リーダーがマスターになったら自分で辞めていきそうだけどな」
やっぱりテルヨシの人望は高そうだ。
「見ろよ、あいつらタバコなんか吸いやがって」
第一チームはゲート攻略の準備を第三チームに任せて雑談をしている。
若手の多い第三チームはタバコを吸わないという人も多いが、第一チームはやや年齢がいっていてタバコを吸っている人も多かった。
「何か手を抜くとまた文句言われるからさっさとやっちゃおう」
遅いと遅いで文句を言い、何か不備があればそれでも文句を言う。
文句を言われないためにも素早く準備しなければならない。
「研修のアイゼンもこうして頑張ってんのにな」
今のところトモナリは文句も言わずせっせと働いている。
元々サポートとして立ち回るつもりだったので、そんなに不満もない。
回帰前はこうした役回りも多く、似た感じで仕事をやらされることもあった。
これから戦いが激しくなるとああした真っ先に死んだ。
今のうちに楽しんでおけ、と思うだけだった。
「よし、まだ攻略開始まで時間もあるし、改めてゲートの情報を確認しておこう」
攻略の準備を終えて、第三チームで攻略情報を確認する。
『ダンジョン階数:二階
ダンジョン難易度:C+クラス
最大入場数:100人
入場条件:レベル35以上
攻略条件:二階のボスを倒せ』
「今回ゲートの難易度はC+。レベルとの目安としては60以上くらいが推奨される。アイゼン君には少し厳しいかもしれない。危ないと思ったらすぐに下がるんだ」
「分かりました」
入場条件を満たしているために今回連れて行ってもらえることにはなったものの、難易度だけみるとトモナリが入るのにはふさわしくない。
周りに負担をかけることは本望じゃないので、できる限り大人しくしていようと思う。
「中は洞窟型だ。洞窟内部を照らしてくれる石があるようで明るさに問題はないけど、何があるか分からないから各自であかりをすぐに取り出せるようにしておくように」
内部の簡単な情報もすでにギルドの調査チームが済ませてある。
こうしたところも一貫してギルドでできるのは大きな強みである。
「モンスターの姿は確認されていない。けれど何が出てもいいように警戒は強めよう。+表示ということは一筋縄ではいかないかもしれない」
「おい! そろそろいくぞ!」
「……よし、行こうか。くれぐれも第一チームを後ろから刺さないようにね」
テルヨシが軽い冗談を口にする。
ちょっとだけテルヨシの本音が漏れ出した冗談だったような気が、トモナリにはしていたのだった。




