派閥争い2
「かなり動きがいいね。レベルの割に能力値が高そうだね」
「ええ、運がいいことに」
「スキルも……」
「おい、テルヨシ! お前のとこで片付けやっとけ!」
テルヨシは割と褒めてくれる。
人の良いところを見つけるのが上手い人である。
そんなテルヨシにキツく当たるのは柴山将吾という人だ。
テルヨシはまだ若くて高レベルチーム全体のリーダーではない。
高レベルチームも第一から第三までの三つのチームがあって、テルヨシはそのうちの第三チームを受け持っている。
現在第一チームがメインであり、シバヤマは第一チームのリーダー兼高レベル部全体の部長でもあった。
「分かりました」
「チッ! ほんと気が利かねーな。そこのガキもウロウロしやがって!」
シバヤマとテルヨシ、ここに対立がある。
正確にいえばシバヤマがテルヨシのことを敵対視しているのだ。
第三チームは若い人も多くて、勢いがある。
ギルドマスターのクレアの息子であって、リーダーシップもあり、若手たちの人望も高い。
テルヨシの職業は魔法騎士。
やや希少といえる職業で、魔力や体力がよく伸びる。
前に立って魔法で戦いながらも味方を守る難しい立ち回りを求められる。
テルヨシは勇猛でしっかり前に出て戦うので、仲間の信頼が厚い。
シバヤマからすると、自分の立場を脅かす存在が現れたというわけだ。
もしかしたらシバヤマはギルドマスターの座を狙っているのかもしれない。
さらには、回帰前に分裂を起こした犯人な可能性もある。
「悪いね、手伝ってもらって」
「今は俺もチームの一員ですから」
今回もテルヨシがチームに休憩を言い渡して解散させた後に、わざわざ仕事を押し付ける嫌らしいやり方をしている。
テルヨシはチームを呼び戻すこともなく自分で片付けをやろうとしていたので、トモナリとヒカリも手伝う。
「第一チームは実力が高い人も多いんだけど……ちょっと昔気質な人も多くてね」
テルヨシは困ったように笑う。
対立しているというよりもシバヤマが一方的に敵視しているという方が正しそうだ。
「特にシバヤマさんはギルド創設時からいるから母さんも手を焼いてるらしい。レベルは高いし実力もある。昔からいる人でシバヤマさんと近い人もいるから」
幅をきかせる古参とはまた面倒だなとトモナリは思った。
おそらくクレアが歳をとって戦わなくなると、自分が権力を持っていると勘違いし始めたのだろう。
「母さんが君のことを目にかけているから……同じく敵対視されちゃったみたいだね。気を悪くしないでほしい。昔はもっと良い人だったんだけど……」
「大丈夫ですよ」
回帰前では散々罵られることもあった。
あれぐらいのことでへこたれるわけがない。
むしろ必死にフォローするテルヨシの方が可哀想になってくる。
レベルとしてギリギリのトモナリが近くにいて負担が増えてしまうことにも一定の理解はあるので、シバヤマにもそんなに怒るような気はない。
「君にはぜひウチにも来てもらいたいんだけど……嫌なところを見せちゃったね。これなら低レベルチームの方が良かったかもね。妹も君に会いたがってたからね」
テルヨシには妹がいる。
妹の方はあまりレベルを上げないようにして低レベルチームの方にいるのだ。
低レベルチームの雰囲気は高レベルチームよりもいい。
なぜなら人の入れ替わりが絶対に発生するからだ。
いくらレベルを抑えようとゲートを攻略し、モンスターと戦えばレベルは上がる。
シバヤマのようにずっと居座るなんてことは難しいのである。
だから風通しも良くて、研修として良い面だけ見たいなら低レベルチームの方が相応しかった。
「ちゃんとした実情見れてよかったと思いますよ」
「手伝うのだ」
高いところに箱を置くのにヒカリが押し込んでくれる。
多分低レベルチームにいたら、こんな状況だったと知ることはなかった。
知ってどうするのだというところはあるものの、知っていれば何かできることもあるかもしれない。
「精神的にも強いね。まあ、第一チームと一緒ということもそんなに多くないから、絡まれることも少ないと思うけど。もし何かあったら僕に言って」
「お気遣いありがとうございます」
実力、経歴共にあるのは分かるが、いささか驕りがあるように見えることは否めない。
シバヤマのことはあまり好きになれそうにないなとトモナリは思った。
ちなみに第二チームはどちらの立場でもなくのらりくらりと上手くやっている。
ただどちらか優勢になるようなら強い方につくようなタイプであるので、こちらもまた信頼するには難しい感じのようであった。
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「おい、第三! 早く準備しろ!」
一緒に攻略することはない。
そんなことを言っていたが、そんなことが起きてしまった。
都市郊外に発生したゲートを攻略するために、天照ギルドが出動することになった。
調査の結果ゲートの中も広そうで、第一チームと第三チームが共同で攻略することになったのだ。
「チッ、俺たちは第一チームの召使いじゃないっての」
「自分たちのサポートチームもいるのにな」
シバヤマが偉そうに指示を出して、第三チームの覚醒者たちが不満を漏らす。
やはり第三チーム内でもシバヤマに対する不満は高いらしい。




