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DA:-SEIN ~御伽奇譚~ 「魔石」  作者: 藤乃宮 雅之
13/49

~祭りの後に~


 午後7時。神楽壇の脇にかがり火が灯され、幻想的な光景の中で夜の部の奉納舞が始まった。

 画像的にも『映える』ので、TVカメラクルーたちが斜め正面の位置に三脚を据えて、リポーターの女子アナがコメントをしている。

 お客さん達も浴衣姿のカップルが多く目に付き、薄暗がりの境内にスマートフォンの四角い光があちこちで光っていた。

 和楽団の生演奏に乗せて三人の巫女がシンクロする『巫女舞』、頼光の妖艶なメイクでの『蘭陵王』は今年も盛大に盛り上がった。

 午後8時を回り神楽壇のかがり火が消えると、屋台が徐々に撤収して行く。

 お客さんも神社からショッピング・モールの方へと流れが変わって行く。

 


 社務所で着替えを済ませた頼光は、自室のベッドにひっくり返った。

「ふう~。今年も無事に終わった~。」

 大きく息をつきながら、ぐううっと大きく伸びをした。

「あれ、制服ってそこの壁のハンガーラックに掛けてたかな? ま、いいか。」

 部屋の中の配置が若干変わっているような気がしたが、まあ疲れてるからだろうと自分で納得して、充電器に置いてある携帯電話を手に取った。

「あ、結構メールが入ってるな。それに着信・・・禎茂さんからだ。」

 頼光は留守録を再生させた。

『もしもし禎茂です。お昼に頼くんが遭遇した事故のことで話が聞きたいんだ。早速で悪いんだが、明日の10時にそちらにうかがいます。よろしくお願いします。』

「なんだか禎茂さんにしては落ち着きが無いな。まあ、こっちも聞きたいコトがあるし、丁度良いや。」


 頼光はメールのチェックを始めた。

 健明からは、保昌との懇談を承知する旨の内容で、昼休み時間なら教育大学事務局前の玄関ロビーで話が出来るので、合流の日にちを連絡して欲しいと伝えてくれと言う内容だった。

 美幸からは(ねぎら)いの言葉と、今度は一緒にクレープ食べに行こうというお誘い。

 香澄からは陵王の感想と誉め言葉、事故の心配と『また、連絡するね。』の文字が躍っていた。

 そこまで読んだ時に着信を知らせるメロディーが鳴り、ディスプレイに『吉田 香澄』が表示された。

「もしもし。」

『もしもし、ライコウ。もう終わった?』

「すごい良いタイミングだな。隠しカメラでも仕掛けてたのか?」

『えっ、そこまではして・・・いや、大体毎年8時回ったら終わってるからさ、もう着替えて部屋に居るかなって。』

 ちょっと慌てた口調で香澄が答えた。

「良い勘してるな。あの後の女子会は盛り上がったかい?」

『うん。あの二人、すっごくノリが良いんだよ。話しててたのしいっ。』

「香澄は友達作るの上手いからな。西崎高校の新しい友達、僕があとお会い出来てないのはバスケ部のエースだっけ?」

『そうそう。沢井加奈ちゃんて言うの。すっごいハンサム・ガールなんだよ。背も健明ぐらいあるんじゃないかな。』

「わ、それは高いな。185センチぐらいか。そんなの相手に香澄、よく戦ったな。」

『でしょ、もっと褒めて。そうそう、加奈ちゃんクレープの会からの帰り道にね。玄磐教育大のお姉さんとぶつかってその人の荷物を間違って取り込んじゃったんだって。』

「へぇ、TVドラマなシチュエーションだな。そこから恋が芽生えたりするヤツ。」

『荷物の中身、(あらた)めてたら、その人の荷物の中に大きなサファイヤが有ったんだって、写真も送ってくれた。』

「そんなもの持ち歩いてる学生ってすごい・・・まてよ、宝石・・・教育大の学生・・・香澄、悪いけどそのサファイヤの写真、僕の携帯に転送してくれない?」

『どうしたの?』

「禎茂さんが今回追っている事件に妙にファクターがかぶるんだ。明日10時にウチに来るそうなんで、情報として役に立つかも。」

『ああ、ライコウのとこの馴染みの探偵さんよね。それじゃあさ、私も同席して良い?』

「僕は構わないけど、せっかくの休み、ゆっくりしなくて良いのか?」

 頼光はベッドに座り直した。

『私はいいの。それにライコウの健康状態も気になるし。』

「別にケガはしてないよ。」

 額から前髪にかけて、手のひらですっと撫でる。

『でも、この前の教会の件で大分失血してるでしょ? 今回も額切っちゃったみたいだし。貧血の兆候は無い?』

「う・・・ん。そう言われれば、かがり火舞の時、最後の方はちょっとめまいがした。」

『ほら、やっぱり。それに、昼間。あの突っ込んで来た車。目の前で跳ねて木立ちへ突っ込んだって言ってたけど、あれ、ライコウが弾き飛ばしたんでしょ?』

「う・・・見えた?」

 頼光は妙に縮こまって声を潜めた。

『例の高速移動したのは見たわよ。隣に居たんだから。その後のことは衝撃的過ぎてはっきり思い出せないけど。』

「・・・この事は内緒にしててくれよ。この世界の関係筋以外では香澄にしか『この力』のコト教えてないんだ。」

 真剣なトーンで頼光が話す。

『へへ。じゃあ私は「特別」なんだ。』

「ああ、香澄は特別だよ。」

『・・・』

 耳元で響く言葉に心臓が跳ねた。

「香澄?」

『じゃ、じゃあさ。特別な香澄ちゃんは明日の同席を希望しますっ。』

 香澄は元気に「普通」を装った。

「ははは、わかりました。それじゃ、いつものように大鳥居のトコで待ち合わせで良い? 朝9時半。」

『うん。よろしく。』

 一通り香澄との電話が終わってメール画面に戻る。

 そこには「白石麗奈」と表示されていた。

『頼くんおつかれさま。このメールを見てる頃はもう、夜だろうね。初めて頼くんの舞、少し遠くからだけど見させてもらいました。かっこよかったって言うよりはキレイだったが素直な感想かな。火曜日はママと弁護士さんと一緒に財産分与の再編手続きに鴻池市に行くんだ。放課後、会えそう? 会えるなら都合の良い時間教えてね。では、おやすみなさい。』

「麗奈さん・・・」

 頼光は呟いて返信メールをカチカチと打ち込んだ。


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