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魔女たちは祝宴し続ける  作者: ロックプロジェクト
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ハロウィン

 本来ならハロウィン休暇の幕開けに胸躍るはずだったが、不審な変死者を出した魔女村は、まさしく通夜の静けさに包まれていた。

 風よりも速い情報網‘‘WITCH’’の掲示板(4ちゃんねる)は、悲惨な末期を遂げた調査員の‘‘ナンバー5’’が、実はピート・ハックマンという立派な名前を持つ大学教授なる人物であり、ピコリーナ先生による最終的な検視の結果、全身の血液を抜かれていたことがわかったと伝えた。


 こういう時は、人恋しくなる。家に引きこもっていても昨夜の恐ろしい死に顔が目に浮かんで気が滅入るばかりで、ママの‘‘魔女サプリ’’を早めに出荷するという口実で直産ハウス‘‘まじょっち’’を訪れることにした。出かける気配を察して離れないイノの首輪にリードを付ける。ブラッキーは家族にも小人たちにも愛想がいいのだが、極度の小心のせいで知らない人を怖がるので庭から外には出ないのだ。

 家々の軒先にも道端にも、目と口をくり抜かれたハロウィンかぼちゃが所狭しと飾られて足の踏み場もない。

 薬草魔女のエリアでは、伝統的なかぼちゃやかぼちゃ亜種がナチュラルに装飾され町並みを彩る。日が落ちればその中に立てたキャンドルが灯り、無数のかぼちゃに照らされる幻想的な光景を観賞することができる。天文魔女エリアは同じかぼちゃでもとにかく光り輝き煌めいてギラギラしているし、治癒魔女エリアではかぼちゃを食い荒らす森のいたずら動物たちをいちいち避けて大回りする羽目になる。いきおい食べ残しかぼちゃのおもしろいデコレーションとなる。

 でも、自画自賛ながら基本的な魔女村ハロウィンなら薬草が一番だと思う。チキン風味のかぼちゃ亜種を鼻で発見したイノを制御するのに少し手間取る。

「食べてもいいけど生ではだめだよ」

 執着しない質のイノはすぐに気持ちを切り替えて付いてくるので、ダブルコートの首元を優しく撫でる。なんとも言えずしっとりとして柔らかい被毛のふかふかの弾力。可愛いイノの体温。いつもいつも全幅の信頼を寄せてくれる金色に近いまん丸の瞳。もしこの子たちに何かあれば、と考えるだけで胸が潰れそうになる。

 もうこの村は、心安らかな森の中の巣(ホーム)ではなくなっている。死の変事に見舞われる呪われた閉鎖空間(みっしつ)だ。

【公表】はまだ先のこと。わ(・)た(・)し(・)た(・)ち(・)に(・)は(・)、(・)逃(・)げ(・)る(・)場(・)所(・)が(・)な(・)い(・)。自然の要害に囲い込まれ、他国とのまともな交流もなく、世界の文明地域に自由に通じる移動手段さえ持たない。ペガサス便では一斉避難に足りず、箒では空路が分からない。だって、魔女村の正確な位置を誰も知らないのだ。どう行けば最寄りのはずの隣の王国へ辿り着けるのかも。ポリスはやって来るというが、いざという時には大規模な救援を依頼することはできるのかどうか。外の森に出られたとしても、立ち往生すれば全滅だ。

 中世の昔、最初(はじまり)の四聖女たちは、どうやってここへ落ち合ったのだろう。偶然なのか、トゥーラが寄せ集めたのか---。善人面で聖域として仕込んでおいて巧みに誘い込んだとでも---?

 ---あるいは、そうかもしれない。異能に長けた者たちを狂った魔手から守るための森の城塞ではなく、結果的には、代々の子孫までをも閉じ込める堅牢(けんろう)な監禁房(おり)となしたと言えなくもないのだ。

 どこまでが意図なのだろう。わたしたちの故郷は、何が真実なのかと疑問に思う。

 だから、行き先に目をやると、たくさん並んだかぼちゃに励まされたような気がした。こんな時だからこそ、皆一つ一つに気持ちを込めて準備したはずだ。魔女の村に今年も変わらず祖霊の加護が与えられますように、と。

 

 ハロウィンは魔を祓(はら)い、先祖の霊を供養する行事だ。魔女村ではお菓子をもらいに巡回しないし、仮装もしない。わたしたち自身が悪しきものを追い払う張本人だからだ。

 禁忌の黒魔術を除いて、わたしたち魔女が世に行うのは、自然のエネルギーを高めて還元する良き魔法だし、そういう霊性の人には魔物は憑きにくい。村を埋め尽くすハロウィンかぼちゃは、ひとえに供養の献灯だ。里帰りする祖先のために道を照らすといわれている。あるいは、再会した鬼籍の家族とともに囲む食卓のメインデッシュである、とも。なにも主に据えなくてもいいのにと思うし、食事なのに飴(あめ)味やポップコーン味のかぼちゃに当たるかも、と子供の頃は楽しく想像していたものだ。

 亡くなったおばあちゃんも帰ってくるかしら、と考えながら多彩なハロウィンかぼちゃを見渡しても、昨夜の事件のせいで人通りは疎(まば)らだ。村は厳戒態勢に入ったようだった。またたびかぼちゃに群がる知り合い猫たちにくんくん挨拶していくイノのペースに合わせて歩く。夜中には収まっていた風がまた強くなってきているので、被毛豊かな狼犬が鼻からしっぽにかけてまっすぐなびいている。

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