1日目〜蛍はやはり夜に見るから綺麗な訳でして、ね。
深夜だと言うのに、赤沙は弥羅和の部屋に向かっていた。
足音を立てずに廊下を進み、そして弥羅和の部屋に入る。
「赤沙、こっちだよ」
どこからか声がする。赤沙はその声に従って中に入り、寝室に入った。
「お姉ちゃん、大丈夫だった?」
「うん。問題は無いよ。頭も、今日の事もね」
「そう。良かった。それでさ、明日の事なんだけど」
「分かってるわ。大丈夫よ、初めてじゃないんだし」
「そう、だよね」
「うん。それじゃあ、髪、切ってあげるね」
そう言うと、弥羅和は鋏で赤沙の髪を短くしていく。
「でもさ、こんな事、してもいいのかな」
赤沙は心配そうにそう聞くが、弥羅和はこう答える。
「大丈夫でしょ。誰にも危害を加えてない訳だし、本当の事は後でばらせば皆納得してくれるよ」
「でも、それでも皆に悪いような」
「いいのよ。私たちのドッキリ大作戦でしょ」
「うん」
「そんな風に落ち込んでると、すぐにばれちゃうわよ」
「うん。そうなんだけど、なんかドッキリ過ぎないかなって」
「問題無い問題無い。楽器を吹くのでもね、音は大き過ぎるって思う位が丁度いいんだから」
「そう、なの」
「そう。意外とね、自分で考える事には妥協が生まれるのよ。それは駄目だから」
「分かった」
「よし、できた。これ位なら、大丈夫でしょ」
「ばれない?」
「うん、ばれない。元気を出してね、赤沙。それじゃあ、私は寝るから」
「はい。お休みなさい、お姉ちゃん」
扉が閉まると、静寂を破るものは蜩だけになった。




