1日目〜ということで四話目
夕食を食べ終わった後の空白の時間。
現在時刻は六時五十分。コンクール合奏の開始は八時。
その空いた時間をどう過ごそうか、と苑崎夏見は考えていた。
お風呂に入る、いや入れない。
楽器を吹く、いや面倒臭い。
寝る、いや眠くない。
八方塞がりで悩んでいる所に、来客があった。
「せんぱーい、入って良いですかー」
英心の声のようだ。夏見と同じホルンパートの一年で、コンクールには出ないいわゆるBチームだ。
「おう、良いぞ、入っても」
「失礼しまーす」
その声と共に入ってきたのは三人。英心、西星杪、涼風玲だった。全員Bチームメンバー。
「んで、何の用だ?」
三人は顔を見合わせ、一度頷く。
心が話す。
「先輩に、占ってもらいたいんですよ。この合宿の事を」
「何で?」
「いや、あの、先輩に言われまして」
「佐々木、萌子か?」
杪の体がビクッと反応する。
「西星、まさか冬見にこんな事を言われてきてないよな。萌ちゃんが心配してるから見てきて、って」
「せ、せやなあ」
口ごもりながら関西風に訛った声で言う。
夏見は思う。なぜ隠す必要があるのかと。だがまあ、いいだろうと考え直す。
「分かった。占うよ」
「本当ですか。有難うございます」
鞄から紙製のトランプを取り出した夏見は、その中からジョーカーを抜き出してからジャパニーズヒンズーシャッフルで混ぜ始める。
何度か混ぜた所で、カードを二重の円になるように並べていき、中央に一枚のカードを置いて残ったカードは脇に置いた。
そして中央のカードをめくる。
『スペードのクイーン』
しかも、リバースになっていた。
夏見は嫌な感じがした。
理由の一つはこの結果であるが、もう一つある。
それは佐々木萌子の事だった。噂では、彼女には予知能力があると言われている。あくまで言われているだけであって、あの新聞部の部長ですらその真偽を知らないという。
だが、あの新聞部部長が知らないというその事実で、逆にその能力が本当に存在していると思ってしまうのが☆☆高校の生徒。
夏見もそう考えているうちの一人である。
であるのだが、彼は超能力や魔法といったオカルト系には一切興味が無いのだ。反対に、奇術や占いは好きなのである。
彼の持論は、理由無き事無きに等し、だ。理由が無い事には興味がないらしい。
「先輩、どうしたの?」
心が話し掛け、夏見ははっとしたように顔を上げた。
「結論から言おう」
杪が唾を飲み込む。
「何かが、起きる」
夏見は、じっと三人の顔を窺った。
特に表情の変化が無いという事が分かったに過ぎなかったが、それは玲の冷静な一言で終わった。
「“何かが”起きるのは当たり前の事ですよ。ねえ、苑崎先輩」




