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1日目〜つぼみはいつ頃から大きくなり始めるのだろうか。

 七時十五分。

 夏見は音楽ホールに向かっていた。

 あの三人が帰ってから暇で暇で仕方が無く、それなら楽器の手入れをしようと思っていた。

 渡り廊下には、なぜだか会議室にあるような長い机が二つ並べてある。

 夏見はそこを通り過ぎ階段を下りようとすると、下から弥羅和が上がってくるのが見えた。

 その足取りはどうも怪しく、この臭いはアルコールのようだった。

「あー、おーふぁよー、なーつみん」

 間延びした声でそう言うと、弥羅和は階段の途中で止まった。

「でーもねー、赤沙って良いにょえー。もうさー、私にゃんてさー、どうじぇもいゐさー、にゃんて」

 また階段を上り始めた弥羅和の足がおぼつかないのを見て、夏見は手を貸そうと階段を下りる。

「お酒なんてどこで飲んだのかな」

 そう口走りながら近くまできた夏見が手を出すと、急に弥羅和が抱きついた。

「うわっ」

 バランスを崩した二人は抱きついたまま階段を転げ落ちる。

 どん、と大きな音を立てて一番下まで落ちた。

「いてて。大丈夫ですか、田奈浜さん」

 そう言って自分を下敷きにしている弥羅和を見た夏見は、そっと弥羅和を床に仰向けにする。

 その姿はまるで寝ているようだった。

「あのー、田奈浜さん?」

 まるで、寝ている・・・?

 違和感を感じた夏見は、急いで肩を叩いて意識の確認をする。

「聞こえますか」

 何回か繰り返したが、返事は無い。

 次に手首で脈の確認をする。

 心拍数は大体72。

「やっぱり、寝ちゃったのか、な」

 とそこで夏見は微妙に立ち上がる。

 すると頭の部分から血が僅かに流れているのが見えた。

「・・・・・・」

 弥羅和が何か言った気がして、夏見は耳を近づける。

「家、わたしを」

 そこで力が無くなったように顔が横に向く。

「家に、わたしを?」

 復唱した夏見は弥羅和を御嬢様抱っこして、とにかく先生の部屋に連れて行った。

 先生の部屋に一旦寝かせ、救急車を呼ぼうとフロントに行った。

「あの、救急車を呼んでくれませんか?」

 宿の人が顔を出す。

「あ、済みません。今、なんだか電話が繋がらないんですよ。近くのホテルも同じみたいで。復旧するのが3日後の午後になるみたいなんですよ。それまでは」

「それなら、こちらから病院に向かう、というのは」

「残念ながら。近くの病院に行くには橋を通らないといけないのですが、その橋が壊れてしまって外部との接触がすぐには出来ない状態なんですよ」

 夏見は実感の湧かないこの事に愕然としながらも、諦めて先生の部屋に戻りそう説明した

「じゃあ、弥羅和ちゃんは」

 付き添っていた冬見が聞く。

「そういえば田奈浜さんさ、最後に『家にわたしを』って言っていたんだ」

「家か。弥羅和ちゃんの妹さんの別荘が近くにあるって聞いたんだ。そこのこと、かな」

「妹さん?」

「そう。知らないの、夏見君なつみん? あの田奈浜赤沙よ」

 夏見は、赤沙の事を知らなかった。

「まあ、とにかく弥羅和ちゃんを別荘に運びましょ。そこに行けば何とかなるでしょ」

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