5日目〜梅雨のじめじめした空気を吹き飛ばすかのように。
合宿最終日。
充分な練習ができたとは思えない日々だったが、気分転換にはなったのだろう。
全てが終わりに近づこうとしている。
「おはよ、弥羅和」
「あ、おはよう、智恵子」
二人は無事、元の鞘に収まったようだった。
今は、トランペットとトロンボーンパートが朝食の準備をしている。
「ひゃ〜。疲れたわー」
「先輩、煩いです」
「いいじゃな〜い。ハッピーエンドで」
「まだ、コンクールがありますよ」
春見は、冬見にそう言われてもどこか嬉しそうだ。
「大丈夫よ。県大会まであと三週間弱あるんだしねー」
「十七日です」
「うん。そうよ。三週間、弱」
「二週間強、の間違いでは?」
「いいじゃな〜い、そんな事。一々気にしてたらきりが無いわ〜よ。それよりもっさっ、智恵子ちゃん、元気になったみたいやよね。ここーの所、陰鬱だったもんにゃー」
「まあ、そうですね」
「アンチョビ」
「先輩、意味不明です」
「いいじゃな〜い、別に分からなくてもー。それがじんせえーいー」
「はー」
溜息をついた冬見。
冬見にとって、いや全生徒にとって、春見はよく分からない存在だ。
これでも文化祭実行委員長をやっているし、合唱部にも時々顔を出すらしい。そんなにのんびりしているくせに、旧帝大クラスの大学は、模試での合格率が六十パーセント越えを維持している。
そうであるから、勿論成績は学年トップ。いや、県でも一位だろう。
「はい、それじゃあ今日は合宿最終日。皆、頑張って行こー。それでは、いただきます」
部長、加奈の言葉で、最後の朝食が始まった。
次の昼食が食べ終わると、次にここに来るのは来年である。




