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冥途(メイド)作成、そんな効果が?

 兄弟二人が眠ったところで2ママンに事情聴収だ。


 マンション玄関の階段に座り込んで、缶コーヒーで乾杯。

 宅配便が配達人であるリッチの眼前に、ぽふん、と出現して微妙な気分だが、それはそれだ。

 2号曰く、



「前世の息子たちが眠っているのが見えますでしょう。ご主人様の感覚では奇異に、母親である私にもっとベッタリして~と、お思いなのでしょうが……」



 確かにそうだった。

 兄弟は弟の方がお兄ちゃんにべったりしがみつき、だっこしてもらって寝ている。

 それが日常なのだろう。

 母親ママンと対面出来て嬉しがっている様子は見せたのだが……


 ここでリッチから助け舟だ。



「弟君の態度は、私のご主人様>>>>越えられない壁>>>>エターナル様と同じなのですよ」


「確かにそうねッ!」



 余計な茶々を入れるエターナル。

 おめーは自分が下げられてて気にしないのか。

 いや。

 へんに上下関係を気にしないさばけたところは、こいつのいいところなんだが……


 つまりはこういうことだ。



「弟君にとって母親ママンというのは、物語の神様のようなもので、身近な保護者ママンでありヒーローなのはお兄ちゃん、それは神と再会しても変わらん、と」



 2号が、その通リです。その後に、さすがご主人様、なんて熱い瞳を向けるがそういうのは無しだ。生き返ると俺への好感度がカンストする設定は断固拒否する所存なので。

 2号が補足する。



「付け加えるならば、母親が身を賭して弟を産んだという物語は、兄に弟を世話させるにあたって強制させた物語エピソード記憶なのです。奴隷コミュニティーにおいて周囲の者たちが幼い赤子を見捨てることはありませんが、かといって世話するのは面倒。そこで幼い血縁者に『死んだ母親を神ポジ』に持ち上げて話して聞かせ、躾ける。その物語を動機に幼い赤子の世話をさせる、これは効率の良い教育でもあります」



 実際、奴隷コミュニティーの教育はそうらしかった。

 逆に言えばそれだけでもある。

 もちろん学校もなければ読み書きも出来ない、そんな中でコミュニティーを形成する、プチ宗教といったところだった。

 この世界に神はいない。

 実在するエターナルという女神の存在は知られているが、それは荒ぶる神としてであって救いをもたらす一般的な神ポジにあたるのは、善行によって転生し、いずれ救いの神に至る、ただの人間ということらしかった。

 たとえば死んだ母親ママンのように。



「ある意味、ご主人様の出身地である、日本風の宗教観です」



 2号が問い、



「信仰というか、救いを求める辛い心をフィクションで解消するというか、神様の物語を自分で作っていいんだ、という考え方。また、ただの人間が神を演じていいのだという、考えでもあります」



 リッチが答えた。

 眷属となったことでマスターである俺の知識が二人には流れ込んでいる。

 結果、俺には考えもつかないような難しいことを二人は言い出すのだった。

 前世、日本人ということで知識はある俺だが、地頭はよほど二人の異世界人の方が優秀らしい。

 その地頭の良さが俺から知識を吸収することで覚醒したのだった。



「これ、甘ぁ、ふわわあ、おいしいぃィイイ!」



 ↑

 神様でもこのようにポンコツなやつもいる。

 地頭の良さは学歴や受けた教育に限らないという、これは証拠だろう。

 2号が結論を告げる。



「それはつまり、教育(=ご主人様から現代知識の供給)を受けていない兄弟たちの限界も示しています。日本人の孤児なら、よみがえった母親に愛情を感じるのでしょうが、教育のないこの子らは、会うだけで気が済んでしまう。感情が持続せず気がそがれる……現代人ではない、動物よりの感性をしているのです」



 母親が蘇ったのに、あっさり兄弟二人で寝付いてしまったのは、そういうことらしかった。



「ですので、ご主人様の内政チート達成には下準備として教育を施す段取りが必要でしょう」


「うむむ」



 例えばだが、明治維新の日本が西洋の高度な技術を取り入れられたのも、当時として極めて高い、日本国民の識字率があり、元々の素養が当時のご先祖にあったから。

 今の辺境の民にはその素養がない、そういうことなのである。

 まずは、江戸時代の寺子屋のように、教育という下地を作らなければ、



「ユージがいくらそれっぽいことを言っても右から左というわけねッ!」



 茶々を入れるのはいつもポンコツ女神だ。

 気にせず話をすすめる。

 リッチ

 ↓

「むろん、ご主人様が神としてすべてを取り仕切ることも可能ですが」


「それはちょっとなあ」


「私としては、兄弟たちをアンデットにして知識を供給してあげて欲しいくらいなのですが」

 ↑

 2号


「それもなあ」



 俺から現代知識を譲り受け覚醒した2号としては、兄弟たちは子供<<<<越えられない壁<<<<ペット?

 といった感じらしい。

 また前世の自分もあくまで前世……生き返った、う~ん?<<<<転生キタコレ!

 くらいの感覚らしい。

 風俗もだいぶ違う。



「前世の奴隷暮らしでは、普通に騎士様の求められるまま、性奴隷となっておりました。特に違和感もなくそういうものかと思っておりました」



 なので兄弟の父親もいない、というか誰かわからんらしい。

 辺境の民たちは、大人になると男女隔離されて生活するが、普通に騎士たちの性欲処理をしていたらしい。性犯罪レイプという感覚もなく、そういうものだと。むしろ美人な奴隷は性行為の見返りに美味しいものやプレゼントを貰えて自慢の種くらいの感覚。

 そうして生まれた子供はコミュニティー全体で育てる。


 男衆とオバチャンたちは農業。

 元々豊かなこの地では食料も豊富。

 それで何とかなる土地柄なんである。

 現代人風な感性となった今では、2号はちょっとそれはという感覚になってしまったようだが。



「生まれ変わった体は新品ですよ♡」


「だから、そういうのはナシだ」



 となると相手が俺に限られるというのも無理ないのか。

 確かに重い身の上話でドン引きさせられるよりは、前世のそれはそれ、と割り切ってくれる姿勢は気楽ではある。

 だが、それこそ、それはそれだ。

 俺の貞操を守るためにも早急に教育制度を拡充、住民のレベルUPを図る必要がありそうだった。

 何となく考えがまとまってきた。

 方針を決める前に情報のダブルチェックだ。


 俺は、スパイに送ったアンデット兵と念話で通信するのだった。

 この領は第0層として俺のダンジョンの範囲内。射程圏だ。



『伯爵邸および領都には、一般領民ドレイと異なり教育を受けた者もおります。が。基本的には女性は娼婦階級と考えてよいかと』


『なるほどわかった』



 辺境に赴任する騎士は数年で交代。

 家族連れということはほとんどなく、がっぽり稼いで本国に帰る。

 領内は他国と紛争中で基本は軍人(および従軍した娼婦?)のみ、という設定らしい。


 実際の紛争は数十年起きていないので、あくまで設定らしかったが。



『辺境伯は奴隷では飽き足りず、一般市民の女性や、使えるメイドにも……』


「まあ、そうなんだろうなあ」



 重いなあ。

 嫌なんだけどなあ、そういうの。

 そういうR18展開はフィクションなら好物だが現実リアルでやられるのはちょっとなあ。



『やめてくださいお代官様』×『よいではないか』×『あ~れ~(棒読み)』


「おまえこそ、やめれww」



 通信には理由もある。

 アンデット兵の記憶のON、OFF機能だ。

 何故って、生前に犯罪まみれだった悪人の記憶なんか覗きたくないし、そんな部下を持つなんてイヤだからな。

 そもそもリッチを拉致監禁、性奴隷にしようとしていた連中と話したくなんかない。

 じゃあ、俺と話していたのは誰か?

 それなんだが……



「あ~れ~……どうですか? 声音上手でしたか、惚れ直しましたかご主人様♡」



 むろん、リッチだった。

 リッチが必要な記憶だけ吸出し、確認しているのだ。

 リッチ本人が犯罪者と喋るのもモヤっとする……なのでリッチの素体の中にいた男性……の意識を通信用に利用している。



「ふむ。この素体の、ケン……くんですか、彼は優秀ですね、使えそうです」


「冗談はやめろ」



 この土地は『剣の王国』の始祖『ブレイド』とともに戦った『槍の英雄』の領地だったという。

 素体に混じっているならケン君ではなく、ランス君だろう?

 始祖ブレイドが、コネコネした素体に混ざっているとか寝覚めが悪い。

 というかそれでは辺境ではなく、王国そのものが俺のダンジョンに編入されてしまうではないか?

 まあ、いい。

 ランス君だかケン君のおかげで男のアンデットは意識を蘇らせずに使役できるのは確定のようだし、道具は使えれば成分など気にしなくていいのだから。

 だが、さすがにブレード=剣はまずい、仮に、ランスにしておこう。


 現実逃避をしている俺にランス(=リッチ?)から通信が。



『親分、辺境伯が動き出しやしたぜ』


「冗談はやめろ」


「テヘペロ♡」



 怒ってはいない。

 リッチの声音が迫真過ぎてビビったのだ。おっさんが女声出されても、うむむ、なのでそれはそれで微妙なのだが。

 まったく男の部下なんて持つもんじゃないな。



「おおおっ、今度は冷た、そして甘ぁ!」


「このジュース、ですか、素晴らしいですね。エターナル様」



 さっそく2ママン正妻エターナルに取り入っている。

 恋心せいよくが満たされないんだからやけ食いですよ、なんて念話を飛ばしてくる。

 やれやれ。

 部下を持ってたいへんなのは男に限らないようだった。


 マンションの明かりの下、兄弟二人は(俺の苦労も知らず)シアワセそうに眠っていた……


 次回、戦闘開始。


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