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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第一章 タイムスリップ
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城のいろんな人たち

「へぇ。これ、文字からしてユウガさんが書いた本だね。未来ではこんな事書いてるんだ」

「!?」


 座っているボクの肩から覗きこむようにして来た白銀の少年。ここに来る前に立体映像で出たセルスと呼ばれていた少年だ。


「最後に忘れるって部分がある事から、僕達がお母さん達を忘れるような魔法でも受けたのかな?」

「それは――」


 口が急に閉ざされる。また制約と言う物なのだろう。

 セルスはそれに気がついていたようで、「いいよ。言わなくても」と言ってにこりと笑った。


「僕は電光セルス。一応姫様の息子なんだけど、これでも生まれてから一年経っていなくてね」

「え!?」


 一年経っていないと言われて驚くほかなかった。どう見ても小学生ぐらいだろうと思われる年齢に見えるのだ。

 右の瞳はいくつかの輪が形成されているのが見えた。こうして瞳を見る所、ヘルの時の癖となってしまったのかもしれない。


「大丈夫だよ。僕は時空魔法で時を速められてね。知識もあるし、特に困ってるわけじゃないから」


 時空魔法。それはその人の姿さえも成長を早める事ができるのかと考えた。もしかしたら、その逆もできるのかもしれない。


「あの、その右目は……?」


 質問するとセルスは聞かれる事がまるでわかっていたかのようにさらりと言ってのける。


「千里眼って言う魔眼を開発してね」


 魔眼を開発?

 ボクの知識では魔眼と言うのは先天性で、後天性になる事はまずは無いはずではなかったか?


「決めた範囲を見れたり、今こうして目が見えない代わりになったりね」

「目が見えない代わり?」

「うん。千里眼はね。使えば使うほど目が見えなくなってくるんだ。左目ももう見えないけど、今は左目を使わなくても良いからね」


 失明していると言う事が目が見えていないと言う事。なのにこうして見えているように話す事ができるのはセルスの言葉通りなら千里眼と言う力のおかげなのだろう。


「あの、魔眼と言うのはそう簡単に作れるものなのですか?」

「ん? 気になる? それだったら後で三階の研究室に来てよ。一番奥の部屋だから分かりやすいよ。待ってるね。行くよ、セレクト」


 セルスはそれだけ言うと教えてくれずに食堂の出口へと向かって歩いて行ってしまった。そして、そのセルスの後を追う一人のとんがり帽子をかぶった少女がこちらへ振り向くと、笑顔で手を振ってから食堂から出て行った。


 そう言えば、ユミが一度も会話に入ってこなかったかと思いきや、彼女は右前に居るキリや柾雪などと話していた。マナやソウナは隣に居る女の人と話している。

 一人は巫女服を着ていて、もう一人は明らかにボク達よりも幼いだろう男の子と話していた。背中に何やら良くわからない丸い円盤のような武器を背負っているが。


 こうして辺りを見てみると、男性と女性の比率がほぼ均一だ。目測年齢を見てみれば平均二十ぐらいではないだろうか。ボクより年下の子は数人いそうで、同年代も数人いそうだ。大人の人もちゃんと居るにはいるが数えて十五人ほどだろうか。

 正直言って、若くは無いだろうか?


「リクちゃん、食べてる?」

「はい、たくさん食べてますよ。でもちょっとお腹一杯になってきちゃいました。食器はどこに片付けますか?」

「そこに置いておいて良いよ。後でこっちで片付けるからね」


 ユミにそう言われ、ボクは礼を言っておく。


「ンじゃあ、俺達も御馳走さんしますか。お前らまだ食べるか?」

「あ、ウチはもういいよ~」

「そうね。私も満腹だわ。ちょっと食べすぎたかしら?」


 他三人も同じように言う。御馳走様は個々でしてると言うので、ボク達四人は御馳走様する。


「部屋はマーフェス姉妹が案内するからね」


 ユミがそう言うとマナの隣に居た巫女服を着ている二人が立ち上がる。


「サラ・マーフェスと申します」

「さ、サヤ・マーフェスと申します!」


 二人とも容姿が似ており、見分けるのにはその前髪の分け方と服の色だろうか。

 サラは前髪を右にヘアピンで分けており、赤い巫女服を着ている。一方、怯えてそうなサヤは前髪を左にヘアピンに分けており、青い巫女服を着ていた。


「じゃあ、お願いね?」

「「わかりました」」


 ボク達その二人に連れられて、食堂を出た。


「みなさん、電光王国にはもう慣れましたか?」

「は、はい」

「ってかこんな自由国で慣れるなといわれる方が無理だよな。自然体だし」

「ちょっとキリ。ごめんね~? サラさん」


 どうやらマナが先ほどまで話していたのはサラのようだ。サヤはサラの後ろを歩くだけで、少しびくびくしているように見える。


「ふふふ。確かにここの人達と関わっていれば自然体にいつの間にかなっていますね。謝らなくても良いですよマナさん」


 ふんわりと微笑んで魔法陣の上に全員が乗った事を確認していた。


「それでは参ります。転移・四階」


 魔法陣を発動させて、それからまた歩きだした。


「そう言えば転移陣の魔力ってどうしているんですか?」

「さぁ? その辺りは全てエクト様とセルス様が操作しておられますので、わたくしからは何とも……。あ、こちらになります」


 そう言って立ち止まる。左手に見える扉は白い無垢の色となっており、他の扉と比べてとても綺麗になっていた。


「こちらになります。……ほら、サヤ」

「ひゃぃ! あ! こ、こほん。お、お部屋の物はいかよう……だったっけ? ……にでもお使いくださいませです!」


 一瞬小声になったサヤの慌てた様子にきょとんとしていると、サラがふんわりとまた笑顔になっていた。

 ゴスッと小さく響く音と、誰かの小さな悲鳴が聞こえたような気がするが、どこから聞こえたのだろうか?

 二人は一礼してから魔法陣の方、では無く反対側の方へ進んで行って、奥の廊下を曲がって行った。


 ボク達はそれを眺めながら部屋の中へと入って行った。


「まさかここまでフリーダムだとはな。カナが此処に居ても何の不思議も感じねぇぐらいだぜ」

「ホントにね~。でも、優しそうな人達だったよね~」


 部屋の内部はベッドが四つ、クローゼットが二つに大きな机が一つ真ん中に置かれてあった。

 形は扇形の部屋だが、弧の部分がそこまで曲がっている訳ではない。外側は全て窓になっていて外側が見えるが魔力がこもっていて壊れる事は無いだろうと考える。

 キリは暗い街並みを見てから、窓の外側にあるカーテンを歩きながら閉めた。

 それにしても外側から部屋らしい部屋は見えなかったのだが、もしかして外側からだと壁にしか見えないと言う所だろうか。


「ねぇ。思うのだけど、どうしてキリさんがこの場所に居るのかしら?」

「は?」

「だって客観的に見たら男・女・女・女の構造よ?」


 ボクの涙腺が熱くなったのはきっと嘘ではないだろう。

 しかも今のボクは指輪を外しているから男なのだ。男なんです……。


「別にテメェらなんかに興味ねぇよ」

「確かに自分ではそうでしょうね。でも私から見たら……」


 ソウナはそこまで言うとボクへと視線を向けてきた。

 その視線の意味にボクは全くと言っていいほど分からず、首を傾げることしかできなかった。


「ンな事より、これからどうすんだよ。今の現状は大体わかっただろ?」

「そうだね~。いろいろと説明残ってるけど、過去に来て、『英雄姫』に会って、カナさんが神様だったって知って……」

「無視ね。まぁいいわ。何をやらせたいのかしらね、カナさんは。姫様に頼めば、いくらでも戻る事ができそうなのだけど……」


 本当にそれでいいのか、と此処に居る全員が思っていた。


「そう言えば、カナが言っていた言葉も気になるな。俺たちは弱い。まだエンディングを見るべきじゃない」


 母さんがそう言っていたならば、ボク達の力を底上げしろと言っていると思われる。


「でも、此処でどうしろと~?」


 具体的内容が分からない。

 ユミに頼めば強くしてくれるだろうか。


「どうしたもんか……」


 キリが深く考え始めると、コンコンッと控えめにドアがノックされた。


「はい」


 ドア近くに居たソウナが率先してその扉を開ける。

 するとそのドアの先には背中に一本の棒をさした赤髪の柾雪が立っていた。


「悪いなこんな遅くに。風呂が十階にあるんで入りたかったら魔法陣で転送してくれ。服もそのままだとあれだろ? クローゼットに入ってる服を勝手に貰ってくれ。……男湯と女湯あるんで間違えるなよ?」


 そう言って柾雪は去って行こうとした時。


「おい待て」

「何だ?」


 キリがその去ろうとする柾雪を止めた。

 何を言う気だろうと、待って居る前に、ボク達が止めればよかったと、聞いてから後悔した。






「決闘、してもらえねぇか? 瞬殺されるかも知れねぇけどよ」






「「「…………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええ!?」」」





 さすがにこんな時まで言うとはこれっぽっちも思っていなかったボク達は盛大に驚いた。


「バカ!? あんたバカなの!?」

「キリさん。あなたの出会えてよかったわ」

「ちょっと待ってください!? 何でソウナさん今のを遺言として受け取っているんですか!?」

「おぅ、どうだよ。風呂前に動きたくてな」


 ボク達の声がまるで届いていないとでも言うようにキリは挑戦的な態度で柾雪に決闘(ケンカ)をしかけていた。


 その柾雪はと言うと……。



「地下一階に転送して来い。試してやる。俺は弱者と戦う気なんて毛頭ないからな」



 そう言い残して扉を閉めた。


「俺が弱者だってか。クハハッ。確かに、ここじゃあそう言われても仕方がねぇか……」

「ちょっとキリ! あんたどういうつもりよ!?」


 マナがキリに向かって怒鳴る。

 しかし特に気にした風も無いキリは拳の具合を確かめてから座っていたベッドから立ちあがった。


「こうでもしねぇと、俺は強くなれねぇ気がすんだよ。テメェらだってあいつらに勝ちたくねぇのか? 世界を潰されんだぞ?」

「「「!!」」」


 不意をつかれたように驚く。

 キリの言う通り、確かに強くならないと今戻ってたとしてもヘレスティアに勝てない。

 キリはそれだけ言うとクローゼットから適当なインナーとズボンを取り出して部屋から出て行った。

 後に残されたボク達は互いに顔を見合わせる。


「……みなさん、行きませんか?」

「そうね。キリさんだけ強くなるなんて許せないわ」

「それに、キリに言わされたままじゃね~」


 三人とも利害が一致。ボク達もクローゼットから適当なインナーとズボン――ソウナはネグリジェで、マナはワンピースだった――を持って、キリの後を追った。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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