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ヒスティマ Ⅴ  作者: 長谷川 レン
第一章 タイムスリップ
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地下一階戦闘訓練施設

視点がリクからキリに変わります


「クハハッ。やっぱりお前らも負けず嫌いだな」

「当たり前でしょう? じゃなかったらここにはいないわ」


 ボク達は転移陣で地下一階に移動すると、先に行っていたキリと合流していた。どうやら地下一階の転移陣の目の前で待っていたらしい。


「ンじゃあ行くか」


 キリが親指で指す方向は、一人、半透明のガラスのような部屋になっている前に佇む少女を指していた。

 その少女は目を瞑り待っている、と言うよりも待機しており、亜麻色の前髪を綺麗にピンでとめてある。ピンクのワンピースのスカートはふわりと広がっており、腰にはラッピングするようにリボンが巻かれていた。

 ボク達はその少女へと歩いて近づく。距離が一メートルぐらいになった時にようやくその少女はその瞳を開いた。


「時刻、21時35分着。お待ちしておりました。キリ様、リク様、マナ様、ソウナ様。私はイヴ・アンゲルスと申します」


 茶色の瞳がボク達をとらえ、頭を下げながら自己紹介をするので、こちらも軽く会釈をしておく。


「御確認いたします。此度の件は、雪美様との一対一の決闘方式(デュエル)でよろしいですね?」

「雪美さん、ですか?」


 どこかで聞いた名前かと思ったら、城に来る前にユミが料理を頼んだ人ではなかっただろうか。

 そう考えると、ちょっと料理を教えてもらえないだろうかと思ったりもしたが、後にしようと考えた。


「否定、との事ですか?」

「いや、あってるだろ。柾雪が頼んだんじゃねぇか?」


 そう言えば、自分は戦わないような事を言っていた気がする。弱者と戦う気は無いとか……。

 それでもこうしてボク達のために人を手配してくれるとは思ってもみなかった。

 そうすると、キリの回答を聞いて彼女、イヴは首を傾げていた。


「? 雪美様との御決闘で御座いますよね?」

「ん、あぁ、わりぃ。そう言うことだ」

「…………」


 キリが言うと、イヴは目を虚ろにして数秒だけその状態で居た。

 虚ろになっていためが戻り、視点をしっかりとボク達に向けてくる。


「承諾いたしました。では初めに覚悟が出来た方から一人ずつお入りください」


 イヴはそう言うと、隣にある立体的な長方形の大理石へと近づいてイスに座り、握った手を前に出して開いた。

 すると魔力が流れこんでまるで近未来のような電子画面が複数展開し、その内の一つのキーボードの画面を叩き始めた。


「ンじゃあ、俺から行ってくる」

「簡単に負けないでよね~」

「キリさん、頑張ってください!」

「おう」


 キリが一歩前に出ると、今までイヴが立っていた後ろの半透明な壁が開いた。躊躇なくその先へと入って行くと、その半透明の壁は閉まって、どこに扉があるのか全くと言っていいほど分からなくなった。


「マイクテスト。声が聞こえていますか?」


 いつの間にかイヴがマイクのような物を取り出していて、それに向かって話していた。


『つかなんだここ? さっきまで半透明だったのにまったく外見えねぇぞ?』


 声が完全にシャットアウトされているのか、キリの声がイヴの前にある装置からマイクのような物を通して聞こえていた。

 キョロキョロとしているキリ。本当に何も見えていないようで、ボクが手を振ってみてもキリは気がつかずに手を振る事は無かった。


「聞こえているようですね。戦闘訓練用施設で御座います。壁は見えておりますか?」

『あぁ。この白いのだよな』

「今から決闘(デュエル)を行う場所は雪美様の提案で平原となっております。壁は無く、岩なども設置してありますので、自由に使ってもらってもかまいません。では切り替えます」


 イヴが言うと、その電子画面のキーボードのエンターを押した。

 すると、ボク達外から見ても分かる様に、その中の様子がなんにも無い部屋から自然あふれる平原へと変化していた。


「これ、フィールド魔法の応用……?」


 マナがその様子に驚きながらも一体どんな魔法なのかを考えていた。

 すると、その言葉がイヴに入ったのか、彼女はこちらへと向いて説明をしてくれた。


「肯定です。これはフィールド魔法を装置に覚えさせ、この部屋に展開できるようにしたのです。普通は発動した者が有利になるような効果が発動されますが、これは装置に覚えさせて再現しているだけですのでありません。決闘(デュエル)に優劣はつけないのです」

『マジかよ……。壁が消えちまった』


 キリはそう呟くも、先ほどとは一歩も動いていないから後ろにしっかりと壁はあるはずだ。見えていない。それとも気が付く事が出来ないと言ったところだろうか?


「それでは、ルールを説明します。右腕を見てください」

『右腕?』


 イヴに言われた通り、キリは右腕を見てみる。するとその場所には電子的なゲージが現れていた。


『なんだ、これ?』

「そのゲージが無くなると敗北となります。所謂ゲームで言うHP(ヒットポイント)となりますね。相手のそのゲージをゼロにすれば勝ちです」

『ハッ。そらぁ簡単な説明だな』

「ですが、今回は私の独断で、キリ様にはゲージの本数が五重となっております。頑張って相手のゲージをゼロにしてください。雪美をボコボコにしてもかまいません」


 一人なのに五人分の体力があるというのは一体どういうことなのだろう。


 ……あれ? さっき決闘に優劣はつけないとかどうとか……。それに最後、あきらかに私情の様なものが……。


「リク様。所詮はフィールド魔法で御座います。有利にすることもまた可能と言う事です」


 今まで無表情だったイヴが口元だけを笑わせて説明してくれた。

 ボクは声には出していない。そう言いたかったが怖くて聞けなかった。



 ★



「しっかし、外から見たときに思ったが、バカ広ぇじゃねぇか」


 そうは言うのも無理は無い。

 外から見た限り戦闘訓練用施設の広さは実に一㎢。

 そしてフィールド魔法が展開されると無限になるのだ。それは壁に発動されている魔法で、壁にぶつかると思ったらその対極線にある壁から出てくると言った寸法だ。

 だが、それは中に入っている人には気が付く事が出来ないので普通の平原が無限に広がっているとしか感じない。ただし後ろに放った魔法が相手の後ろから襲うと言う事は無い。後ろにはなったらもちろん敵はそちらには絶対に居ないので外から見ると壁にぶつかった瞬間無効化され、中に居る人達にとってはどこか遠くへ行ってしまったと感じる。

 つまり、この部屋にはフィールド魔法の他に、絶対認知阻害魔法も使われている。


「にしても相手がいねぇじゃねぇか?」

「それはすまない。少々準備に手間取ってな」


 居ない物と思っていたのに、急に返事されたので俺はなるべく平然を装って後ろを振り向いた。

 青い髪は額当てのような物で上から押さえつけられており、ソウナと同じぐらいの胸と肩を守る軽装鎧を着た勝気な女性が槍をその手に持って立っていた。


「食堂で見てねぇ顔だな」

「そうか? ずっと食堂に居たのだが」

『それでは、お互いの決めた合図で決闘(デュエル)を開始してください』


 最後にイヴのマイクからの声が聞こえ、俺は魔力を解放して自分の手を握った。


「我が名はキリ。〝雷舞の豪将〟。狼の如く這い回れ」


 俺は四肢に雷を纏わせる。今まで何度となく使って来た言葉だったが、今日ほど静かに発動させた事は無かった。


「解放? 普段は魔力を納めているのか?」

「ワリィか? 正直、教えに来てもらってる様なもんだからな、なんかあったら言ってくれ」

「そうだな。普段から魔力を納めていると、いつまでたっても魔力は成長する事は出来んぞ?」

「何?」


 雪美がその槍を構える。槍は青い水晶のように透き通っていて、殴ったら壊れてしまうのではないかと感じるほどだ。だが、その実感じる魔力のケタが違う事をはっきりと感じる。


「魔力は確かに納める事が出来る。だがそれは敵を(あざむ)くための力に過ぎない。潜入捜査には良いが、魔力は常に解放しておけ。自然と魔力最大値が上がってく。筋肉と同じような物だな」

「だが、それだと魔力が回復しねぇだろ」

「本当に?」


 雪美にそう言われ、俺は少し考えてしまった。

 実はずっと魔力を解放している人を知っている。と言うかこの部屋の外に居る。

 今はなぜか自分の魔力、魔法を扱えないリクの事だ。あいつが魔力を納めた時など見ていない。


 キリがそう考えると同時、外ではマナとソウナもリクの事を見ていた。


「なるほど、未来人は全員魔力を納めて暮らしてるのか。それだと強くなる事はまず無いな。では、そろそろ始めようではないか。実力は分かっている。どこからでも来い」

「それじゃあ遠慮なく。〈雷迅〉!!」


 四肢に纏わせていた雷を全身に纏い、更に今出せる最大スピードの稲妻の〈雷迅〉を発動した。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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